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第1志望でもそうでなくても。 中1ママたちが語る「いい受験」のコツ

VERY NAVYの連載『悩めるママのための、受験進路相談室』でもお馴染みの教育ジャーナリスト・おおたとしまささんが、新刊『なぜ中学受験するのか?』を発売しました。受験奮闘中の親の背中を押してくれるとともに、中学受験に興味のある人への入門書にもなる、中学受験本の決定版と言える一冊です。

その発売を記念して、2021年中学受験を終えた3人のママとおおたさんによる座談会を開催。最終回のテーマは、合格という結果以外に得たものとは?家庭それぞれの答えがありました。また、最後に「いい中学受験だった」と笑えるための、現役ママたちへのアドバイスもいただきました。

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<プロフィール>

Sさん:息子が小2からSAPIX、小3から算数塾にも通塾。「算数男子は中学受験に強い」を体現し、都内難関男子校(第2志望)に進学。

 

Hさん:息子が小3〜小4まで早稲田アカデミー、その後半年間のブランクを経て別の大手塾に通うも小6の夏に小規模塾へ転塾。大らかな校風で人気の都内男子進学校(第1志望)に進学。

 

Iさん:娘が小3からSAPIX。アクティブ・ラーニング型の学びを重視する、都内難関女子校(第1志望)に進学。

――最後に、みなさんが中学受験をして得たものって何でしょうか?

 

Iさん(以下I):合格だけで終われたらそれはそれで素晴らしいけど、まだ親が見守れるうちに突き落とされる経験をするのは大事だったと思うし、努力が実らないこともある、世の辛さをあの年齢で知れたのは意味があったなと。最終的には合格をいただいたので、何とかなるという自信も得られたと思うし。親はひたすら忍耐力ですよね。結局、最後は見守るしかできないんですよね。

 

おおたとしまささん(以下敬称略):失敗体験ってすごく重要で、動物も独り立ちする前に一通りの危険に親が付き添って、あえて失敗させるんですって。しかも、大人が同じ失敗をしたら責めるのに、子どもが失敗しても責めないで寛容でいる。親がフォローできるうちに失敗体験をするのはすごく理にかなっているなと思います。

 

Sさん(以下S):思考力が深まったかなと思います。その力は中高大でも活きていくだろうし、あの年齢でガッツリ勉強するのはいい経験だったなと。親としては、やる時はやる子だという信頼感を持てました。この先どうなるかわからないけど、まずかったら最後は自分でやるだろうから任せておいて大丈夫と見守れるようになったかな。

 

Hさん(以下H):もともと自己肯定感は高い子だったのですが、やればできるっていうのはすごくいい経験で、さらに自信になったかなと。私も受験中は口うるさく言ったこともあったけど、こういう学校に入れたからには見守ろうって決めています。

 

おおた:Hさん、以前誌面連載で取材させていただいた時は色々と悩みがありましたよね。別人のように達観してるんですけど、こんな方でしたっけ……?(笑)

 

H:(笑)。6年生の夏以降、イライラしなくなったんですよね。それは塾のおかげでもありますし。それまではもうちょっと夢見がちだったり欲も出ていたけど、そういうことじゃないんだと原点に立ち返った感じ。それこそ、なぜ中学受験するのか?という話で、自分も一貫校でよかったからそういう経験をしてほしいんだって思い出しました。

 

 

――この記事は受験直前の公開になるのですが、今まさに奮闘中の保護者のみなさんにメッセージをいただけたら。

 

I:6年生の親御さんはリフレッシュの時間もとってほしいです。親が穏やかなほうが絶対にうまくいくから。友達とランチしたり趣味を楽しんだり、子どもと離れる時間を持ってください。5年生以下の方に伝えたいのは、今思うと4、5年生の時からテストの点数でキリキリせずに、もっと大らかに構えてあげればよかったなって。渦中にいると難しいんですけどね。家族でお出かけしていろんなものを見るのが大事かなって。歴史も知識を持ってから触れると何倍も楽しめるし、そういう時間を親子で持てたら素敵だなと思います。

 

S:最後はその子に相応しい学校に決まると聞きますが、本当にそうだなって終わってみて思います。もうここまできたら子どもや塾を信じて、きっと相応しい場所に導いてくれるはず。テクニック的なことを言えば、息子は算数だけ少し先取りしていたことが自信になったので、本人に無理のない範囲で得意科目を作ると5、6年生以降が楽かなって。

 

おおた:4、5年生のうちから弱点補強するくらいだったら、得意なところを伸ばしたほうが長い目で見て得ですよね。

 

H:直前はよく寝かせること、親がイライラしないこと。息子は家では一切勉強しなくて全部塾で済ませてきて、家は寛ぐ場所と決めていたので、小言は言わずに済んだのが平和だった理由かな。夏に転塾して気持ちが切り替わったのがわかったので、私も穏やかでいられて。息子と自分の心の平穏だけを祈りつつ、塾と子どもを信じましょう。あとは人と比べないこと。これは本当に声を大にして言いたい!4年生くらいだと迂闊に、誰々ちゃんはこのくらいとか言うけど、そんなことしても何の意味もないですから。

 

I:あと、私たちの世代は中学受験をした人も多いと思いますが、自分の時のほうが楽だったなって。精神的なこともそうですし、たまに教えてと娘が持ってきたものが、こんな難しいことやってないという問題ばかりで。本当に厳しい世界で闘ってるし、健気だなぁって。

 

おおた:実際にやらなきゃいけない量がこの数年間で3〜5割増しになっていると、塾の先生から聞きました。要はあらゆるパターンを詰め込んでるんですよね。基本的なことを教えて、あとは自分で応用して解けるよねという勉強じゃなくて、応用問題そのものを一通り解かせる形になってるから負担が大きくなってる。過当競争なんです。最難関に行くなら仕方ないけど、そうじゃない子たちは付き合わなくていいんじゃないの?って。その競争に乗っからずに自分のペースで勉強して、これが実力なんだと思って入ればどこへ行っても大丈夫というのが僕の主張。

 

H:あと「◯◯じゃなきゃ意味がない」と親が思ってしまうと、本当にしんどいですよね。

 

I:上を見たら本当にキリがないから。

 

おおた:過当競争は現実で、それを抑えられるのは親だけ。これがあなたなんだねと認めてあげるだけで子どもは嬉しいんです。理想論に聞こえる人もいるだろうけど、教育虐待とかも散々取材してきてそれも含めて現実だから。

 

――“親の課金ゲーム”なんて表現されたりもしますが、おおたさんの言うように「親の受験では断じてない」んですね。『なぜ中学受験するのか?』には、いい中学受験をするためのエッセンスが全て詰まっているので、中学受験に関わる全ての人に読んでいただきたいですね。

 

おおた:これから中学受験に参入する人や現役の人だけじゃなく、終わった人にも「親子の大冒険」のふり返りとして、読んでほしいですね。

Profile

おおたとしまさ

教育ジャーナリスト。1973年東京都生まれ。東京外国語大学中退、上智大学英語学科卒。リクルートから独立後、育児・教育分野で活躍。執筆・講演活動を行う。
著書は『中学受験生に伝えたい 勉強よりも大切な100の言葉』(小学館)など60冊以上。
http://toshimasaota.jp/


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取材・文/宇野安紀子 編集/羽城麻子

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