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2021.12.28 UP

2月2日の夜、泣きながら「ごめんなさい」と謝る娘。 今だから話せる中学受験体験記

VERY NAVYの連載『悩めるママのための、受験進路相談室』でもお馴染みの教育ジャーナリスト・おおたとしまささんが、新刊『なぜ中学受験するのか?』を発売しました。受験奮闘中の親の背中を押してくれるとともに、中学受験に興味のある人への入門書にもなる、中学受験本の決定版と言える一冊です。

その発売を記念して、2021年中学受験を終えた3人のママとおおたさんによる座談会を開催。第2回は、受験本番中の数日間についてお話しいただきました。第1志望に合格できるのは3割とも言われる厳しい中学受験。わずか数日間のそれぞれの物語はドラマ以上にドラマチックで、まさに「親子の大冒険」の集大成と言えるものでした。

▶【第一回座談会】の記事はこちら

<プロフィール>

Sさん:息子が小2からSAPIX、小3から算数塾にも通塾。「算数男子は中学受験に強い」を体現し、都内難関男子校(第2志望)に進学。

 

Hさん:息子が小3〜小4まで早稲田アカデミー、その後半年間のブランクを経て別の大手塾に通うも小6の夏に小規模塾へ転塾。大らかな校風で人気の都内男子進学校(第1志望)に進学。

 

Iさん:娘が小3からSAPIX。アクティブ・ラーニング型の学びを重視する、都内難関女子校(第1志望)に進学。

――コロナを乗り越えてやっと迎えた受験本番のお話をうかがえますか。

 

Iさん(以下I):子どもの受験は本当に何があるかわからないなと痛感しました。娘は第1志望に2回目入試で受かっていて、1回目は不合格だったんです。塾の先生からは「1回目は多分大丈夫ですけど、倍率が上がる2回目はちょっと怪しいので、1回目で受かってください」と言われていて。試験が終わって本人は割と手応えがありそうだったのですが、2日に不合格がわかって、さらに2日に受けた併願校の不合格も2日の夜にわかって。その時に娘がワーッと泣きながら「ごめんなさい、ごめんなさい」って謝ったんです。兄と弟に挟まれて割と手のかからないタイプだった娘があんなふうに泣くのを初めて見て、なんてことをしてしまったんだろう、私はとんでもないことをしてしまったかもしれないとものすごくショックで。塾からも「申し訳ありません」と謝られて。本人も2回目入試は難しいとわかっていたので、「もう受けたくない、(合格をもらっていた)1日の午後校に行く」と言ったんです。

 

でも、塾の先生はすごいと思ったのが、結果を報告した電話で娘が10分ほど話した後に「やっぱり受ける」って、散々泣いて吹っ切れた様子で。私は無理かもしれないと思いつつ、本人が納得すればいいとも思っていて、信じる気持ち半分、もうやるしかないという気持ち半分だったので、合格発表を見た時は本当に信じられなくて。いろんな人にパソコンで確認してもらいました。模試の結果も参考にはなるけど80%はあくまで80%だし、子どもはちょっとしたことで躓くんだなと実感しました。一生忘れない数日間ですね。

 

おおたとしまささん(以下敬称略):娘さんもその日のことは一生忘れないですよね。1回目の入試でも本当にボーダーだったんでしょうね。

 

I:でも、後から問題を見たら、大問1の(1)から間違ってたんです。だから、気持ちの弱さがあったのかなって。

 

Sさん(以下S):うちも1日午前の第1志望が不合格で、いけるかなと思っていた午後の算数選抜もその日の夜に不合格だとわかって。その結果を2日の朝に息子が知ってしまって、メンタルが落ちた状態で2日の併願校を受けに行きました。試験中に前日の第1志望の結果がわかって、試験が終わった息子に伝えたら大泣きして。うちも塾の先生と電話でお話ししたんです。それまではどんな人が担任かもわからないし、クラスもしょっちゅう変わるし、SAPIXってドライだなと思ったこともあったけど、電話で「君の人生の踏ん張りどころだから」みたいなことを言ってくださって。それで気持ちを切り替えて、3日の第2志望に合格できたのかなと思います。2月の1日2日は親子ともにすごく沈んでいて、中学受験ってこんなにうまくいかないものなんだ、こんなに心身ともに辛いんだって打ちのめされましたね。

 

おおた:2月の数日間だけで2時間くらい話せますよね。なかなか進学先が決まらなくてギリギリまでずれ込んだ親御さんは、一生で一番辛い1週間だったと言いますから。

 

――塾の先生は勉強を教える以上の存在意義があると、おおたさんは常々おっしゃっていますが、親子のメンタルケアの意味が本当に大きいんだなって。

 

おおた:その状況に置かれた時にどうなるかを毎年見てるから、どういう声がけをすればいいかよくわかってますよね。

 

Hさん(以下H):うちは1日午前の第1志望は不合格でしたが、その後は順調だったので精神的に楽ではありました。1日の午後校は上位クラスで合格もいただいて、私はそこに進学してもいいと思っていたので。2日以降は試験が終わった足で塾に行って、まだやってない過去問とかを見ていただいて。4日の第1志望の2回目入試も落ち着いて挑めたかなって。

 

おおた:1日で不合格だった時はどんなお気持ちでした?

 

H:「もう次、次!」という感じでしたね。下に幼稚園の子がいるので、家族のムードを察しておちゃらけてくれたりして。息子も1日は午前と午後受けてすごく疲れていたので、1日の合否を知ることなく寝ましたし、翌朝に午後校に受かったよと言っても、「あぁ、そうなんだ」みたいな。とても平常心でしたね。

 

 

おおた:1日の結果を知って、旦那さんの反応は?

 

H:「やっぱり難しいんだね」ってあっさりと。基本、動揺しない人なので。でも、珍しく息子が好きなご飯を作って待っていてくれました。

 

――不合格だった時の子どもへの声がけはどんなふうに?

 

H:元々、第1志望に関しては偏差値が足りてなかったので「まぁ、そんなこともあるよね。明日また頑張ろう!」って。とは言え、結果がわかった瞬間は「あぁ〜」っていう気持ちをさすがに隠した記憶はあります。

 

S:もちろん責めたり泣いたりしないようにとは思いましたけど、ある程度顔には出ちゃってたかもしれません。でも、口から出まかせでも何でも、前向きな言葉をかけました。

 

H:一番ショックなのは本人ですからね。

 

――入試が全て終わって、進学先が決まった後のお子さんの様子はどうでしたか?

 

S:ずっと第1志望を目指して頑張ってきたんですけど、意外とあっさり、3日間くらいで切り替わりましたね。あまり活発なタイプじゃない息子が、受験直後から卒業するまで毎日友達とあちこち遊びに行ってたので、やっぱり遊びたいのを我慢してた部分もあったんだなって。

 

H:息子は最後まで学校に行っていたので、お休みしたのは入試の4日間だけで、5日から学校に行ってその週末にはスポーツの習い事にも復活しました。スッキリ!という感じですよね。

 

I:うちも娘は終わってすぐに切り替わって、2週間くらい学校を休んでいたので早く学校に行きたいって。塾のテキストもすぐ捨てていいよって言われて、親のほうがちょっと寂しくなりました。私のほうがずっと疲れていて、ドッと疲れが出たのかな。あの2日間で起きた気持ちの上がり下がりはこれまで経験したことがなかったので。

 

――親のほうが疲れて体調を崩したりという話はよく聞きますよね。

 

S:私は直属の上司がすごく配慮してくれて1月は仕事をセーブしてもらっていて。その分が2月、3月に一気に来て、終わった瞬間に仕事が辛すぎて、こんなに辛いなら1月もっと頑張っておけばよかった!って思いました。体調云々よりそっちが辛かったですね(笑)。

 

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Profile

おおたとしまさ

教育ジャーナリスト。1973年東京都生まれ。東京外国語大学中退、上智大学英語学科卒。リクルートから独立後、育児・教育分野で活躍。執筆・講演活動を行う。
著書は『中学受験生に伝えたい 勉強よりも大切な100の言葉』(小学館)など60冊以上。
http://toshimasaota.jp/


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取材・文/宇野安紀子 編集/羽城麻子

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