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2021.12.29 UP

中1ママが子どもの進学先で感じた「中学受験その後のリアル」

VERY NAVYの連載『悩めるママのための、受験進路相談室』でもお馴染みの教育ジャーナリスト・おおたとしまささんが、新刊『なぜ中学受験するのか?』を発売しました。受験奮闘中の親の背中を押してくれるとともに、中学受験に興味のある人への入門書にもなる、中学受験本の決定版と言える一冊です。

その発売を記念して、2021年中学受験を終えた3人のママとおおたさんによる座談会を開催。第3回は、志望校の選び方と入学後の学校生活について。生徒の雰囲気や通塾率、男女別学の魅力など、通ってみて初めてわかる裏話を語っていただきました。

▶【第1回座談会】の記事はこちら
▶【第2回座談会】の記事はこちら

<プロフィール>

Sさん:息子が小2からSAPIX、小3から算数塾にも通塾。「算数男子は中学受験に強い」を体現し、都内難関男子校(第2志望)に進学。

 

Hさん:息子が小3〜小4まで早稲田アカデミー、その後半年間のブランクを経て別の大手塾に通うも小6の夏に小規模塾へ転塾。大らかな校風で人気の都内男子進学校(第1志望)に進学。

 

Iさん:娘が小3からSAPIX。アクティブ・ラーニング型の学びを重視する、都内難関女子校(第1志望)に進学。

――志望校はどうやって絞っていったのでしょうか?

 

Hさん(以下H):今の進学先は4年の時に私が見学に行ったんですが、いい学校だけど届かないだろうなぁと思っていて、初めは別の学校を第1志望にしていたんです。でも、息子がモヤモヤしてる雰囲気はずっと感じていて。6年の秋にいくつか説明会が取れた中に進学先もあって、息子も見ることができて。いい加減そろそろ第1志望を決めなきゃという12月に「どこがいいの?」と聞いたら、今の学校を挙げたんです。その時点で偏差値は足りてないので「行きたいなら頑張らなきゃね」って。

 

――息子さんは何かを感じたんですね。

 

H:中学でもスポーツをやりたかったので、設備や部活の強さである程度は絞っていましたけど、そこから先はもう雰囲気でしょうね。カリキュラムがどうこうとかは私もよく把握してなくて。

 

――『なぜ中学受験するのか?』にもあった「大切なのはシラバスよりハビトゥス」ということですよね。

 

Sさん(以下S):私は女子校育ちなので共学に憧れがあったのですが、息子は男子とつるみたがるタイプで男子校がいいと。第1志望も男子校でした。実は今の進学先は説明会に行ったことがなかったんです。でも、模試の会場になったことがあって「今日の学校すごく好きだった」と話していて。本当にインスピレーションでしかないんですけど、共学も新興校も幅広く見た中で伝統校が合ってるかなって。入学して驚いたのが、部活も教科連絡も全てメールで、宿題の提出もPC。入学後に一括購入しました。ずっと画面を見ているので「ちゃんと勉強してるのかな?」って(笑)。

 

H:うちは完全にアナログ。一応Teamsだけ繋げるようにと言われましたが、オンライン授業は一切ないですね。

 

――入学してからわかることって色々ありますよね。

 

Iさん(以下I):そういう意味で予想通りだったのは、「入試問題は学校からのラブレター」というおおたさんの言葉を入学後も実感していて。こういう子が欲しいというメッセージが込められていますよね。国語は全部記述なのですが、授業でもとにかく読ませるし書かせるんです。夏休みの宿題では、原稿用紙10〜12枚で先生に向けて自己紹介するエッセイがあって、何をどこから書き始めればいいかわからなくて、結構苦労していました。課題図書も多くて、内容も割と重めのものばかり。娘のようにそれなりに本を読む子でもきついんじゃないかなと。けど、そういうことを中1の時間があるうちにやってもらえるのはいい洗礼になったと思います。

 

H:うちは一発勝負みたいに入っちゃったところがあるので、周りはコツコツ努力できる子たちが集まっているなぁと。大らかな校風は予想通りで、息子がなかなかびっくりするような点数をとっても「大丈夫です、今は部活に専念させてあげてください。男の子は後伸びしますから」って。あと、息子曰く、入学してみると校長の話が意外と真面目だそうです(笑)。息子はいくつか学校見学に行った中で、校長先生の話が面白いからと決めたのに、入学してみたらそこまで笑いをとってこないって!

 

おおたとしまささん(以下敬称略):そうなんだ!僕もお付き合いのある先生ですけど、僕らの間ではいつも笑いをとりにいきますけどね(笑)。

 

H:本当にゆる〜い雰囲気なので、校長の話くらいは締めなければと思ってるのでしょうか(笑)。「男の子はそのうち成長しますから」と常々言ってくれるし、多少やらかしても「はい、はい」と面白がってくれるので、中弛み万歳!みたいな感じ。成績の順位も出ないですし。そのうち自立するだろうと淡い期待をさせてくれる学校に入れて、本人は幸せだろうなと思いますね。

 

S:うちは順位がしっかり出るのですが、御三家落ちの子も多い中で、息子の成績を見るとここが合ってたなって。本当に優秀なお子さんが多くて、正直ここ以上に入らなくてよかったと思いました。あと、勉強以外にも秀でている子が多くて、こういう環境で切磋琢磨できるのは素晴らしいなと感じています。中学のうちは塾に行かせないでほしい、学校でちゃんとやっていれば十分な力がつきますと言われているので、今のところ通塾率は低いかな。

 

 

――どこに合格するかよりも、入ってからどう過ごすかが重要ですもんね。

 

H:それで言うと、息子の周りだけの話ですが、うちは第1志望で来た子が少ないのかも。だから余裕かと思ったら全然違ったってみんな言ってるみたい。とはいえ、普通に真面目にやっていれば大丈夫だとは思うんですけど、それができないんですよね。まぁ、6年間かけて頑張ってくれたら。

 

I:その点、女子は最低限ちゃんとやるかも。娘は一度落ちているという恐怖心があって、自分より頭の良い子がいるという気持ちがあるから尚更かな。女の子って友達のノートを見てすごく綺麗に書いてるから自分も頑張らなきゃと思ったり、インスタグラマーの子が勉強してる姿をタイムラプスしてるのを真似してやってみようとか。可愛く楽しく勉強したいって、何でもモチベーションにできるんですよね。

 

S・H:……そんなのうちの男子には響かない‼ (笑)

 

おおた:性別で個人の特性を決めつけるのはもちろんナンセンスですが、僕もいろんな学校や子どもたちを取材している中で、別学は集団として見たときの性差による特性を活かして上手に伸ばしてくれる印象がありますね。

 

I:娘の学校は比較的穏やかな雰囲気なんですけど、この前の保護者会で「今はいい子ちゃんに思える子たちが絶対に面倒くさくなってきます。でも、面倒くさくなっていいんですよ。私たちは慣れてますから、ウェルカムです」とおっしゃっていて。女の子は取り繕いがちなところがあるから、この教室ではそんなことしなくていいんだよ、本音で言いたいことを言っていいんだよって子どもたちにも伝えてくれてるみたいです。

 

おおた:Iさんの学校は本音を言えるように様々な仕組みができていて、3日に1回席替えをして友人関係を築いたり、教室の中では何を言っても認められるんだと教えることに中1の時間を使いますよね。すごくいい取り組みだと思うし、あのプログラムは共学だと機能しづらいんじゃないかなぁ。

 

I:娘は、親に心配をかけまいと頑張っちゃうところがあって。受験中もあまり弱音も吐かずに淡々と頑張っていましたし、本音を言うのが苦手なタイプかなと思って、そこがちょっと心配で、面倒見が良さそうな学校を探しました。この先、壁にぶつかることもあると思うので、そういう時に学校側からも働きかけしてくださるといいなと……。

 

おおた:ぜんぶお母さんがケアしなくても、中学生になれば友達や学校に癒されることもあるだろうし、淡々と頑張れちゃうことがこの子の取り柄なんだなと捉えたらいいと思います。もし、家で辛そうにしているなら「最近、疲れてない?」とか一声かけてあげて、親として「ちゃんとあなたのことを見ているよ」というのが伝われば、頑張れちゃう子なんだろうし。そうやって、自分の感情を抑えちゃうところがある子が、2月2日に親も驚くほどの感情の吐露をできたことが一つの成長だったと思うから。中学受験でもなければなかなか経験しなかったことかもしれないですよね。

 

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Profile

おおたとしまさ

教育ジャーナリスト。1973年東京都生まれ。東京外国語大学中退、上智大学英語学科卒。リクルートから独立後、育児・教育分野で活躍。執筆・講演活動を行う。
著書は『中学受験生に伝えたい 勉強よりも大切な100の言葉』(小学館)など60冊以上。
http://toshimasaota.jp/


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取材・文/宇野安紀子 編集/羽城麻子

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