シャネルの手仕事の物語が間人で紡ぐ、文化とアートの循環
2025年に開催された、日本のアーティストや職人と、le19M に集うフランスの職人やアトリエが協働した展覧会『la Galerie du 19M Tokyo』から受け取った、人の手と対話から紡がれるクリエイションの感動は記憶に新しい。そして2026年、シャネルが多面的にサポートする新たな創造と学びの拠点『間人プレイス』が、京丹後の街・間人(たいざ)に誕生した。
職人技とアートが巡る新拠点『間人プレイス』
『間人プレイス』は、『la Galerie du 19M Tokyo』内の企画展『Beyond Our Horizons』にエディトリアルコミッティー メンバーのひとりとして参加した徳田佳世さんが主宰するNPO法人TOMORROWが、2020年に創設した集落プロジェクト『あしたの畑』の一環。徳田さんが地中美術館、豊島美術館の創設に携わるなかで想いを馳せるようになった、自然や日本の文化に根付いたアートの在り方、地球と人と食とアートの未来についての想いにシャネルが共鳴、支援へとつながった。10月12日より『REFLECTION』にて、アートギャラリー『SEI TAIZA』とともに一般公開されている。
『間人プレイス』は、職人やアーティストの創作と対話の場。長年放置され塩害で傷んだ家屋を修繕、クリエイションと学びの空間として生まれ変わった。この地に伝わる防腐効果のある焼杉を生かした街の景色として馴染む外観でありながらも、6000枚ものへぎ板を貼り付けた循環棟が職人のこだわりを象徴する。プロジェクトに携わった木桶職人の中川周士氏は「木の繊維に沿って薄く割っていくため、繊維に傷がつかず水を弾いてくれる」と語り、暮らしに根付いたアートを実感。循環棟の内側には木製のシャワールーム、作品制作の過程で出た木屑を再利用したバイオトイレが設置され、「ゼロ・ウェイスト」への真摯な取り組みが伺える。建物内部には『l Galerie du 19M』の資材を再利用した板戸に漫画家 五十嵐大介が新たに描き下ろした同地に伝わる乙姫と天女伝説を着想とした絵画のほか、数寄屋建築の「藤森工務店」が手がける網代張りの天井、織物工房『デザイン橡』とプリーツの『アトリエ ロニオン』のコラボレーションによる壁など、『Beyond Our Horizons』の作品や資材が空間に合わせたアレンジで再利用されている。
日本文化を継承していくための作品が並ぶギャラリー『SEI TAIZA』
間人プレイスのほど近くにあるアートギャラリー『SEI TAIZA』にも、『Beyond Our Horizons』のアート作品や資材が寄与された。唐紙職人の喜戸浩、版木彫刻の金沢健幸、屏風や軸装を手がける藤田幸生と、シャネルのメゾンダールである花細工のアトリエ「ルマリエ」による「花衝立」、アトリエ「パロマ」と漫画家 五十嵐大介の「佐世保姫」、「しし踊り」、「竜田姫」、高室畳工業所と「ルサージュ」によるツイードに縁取られた畳などが展示。カウンターテーブルに使用された木材も『la Galerie <du 19M』の資材を再利用して作られたもの。中央に鎮座するのは中川周士の『舟と櫓』。かつて大陸との交流が盛んに行われていた歴史に紐付きながらも、中川氏には別の強い想いがある。「アメリカには和船作りを学べる学校があります。和船に魅せられたアメリカ人が創設したのですが、日本の若い世代が和船を作りたいとなったらアメリカに行くんですね。日本の文化でありながら、日本には継承される土台がない状態です。文化は残るのが当たり前ではない。『la Galerie du 19M』を通じてシャネルの手仕事、職人を守る取り組みを知り、この間人での活動を支援していただけることは、日本の文化をつないでいくための素晴らしいきっかけであり、手本になってくれることを願っています」。
自然とアートの共存する『あしたの畑』
竹野神社の参道近くに建てられた『宮ティーハウス』『Filed of Stars』も、『あしたの畑』プロジェクトの見どころ。『宮ティーハウス』は、ドイツの建築家アンナ・ヘリンガー、陶磁器作家のマーティン・ラオホ、左官職人の中川仁隆によるコラボレーション作品。将来的に土にかえるように、その場の土を掘り起こして素材とし、一層ずつを33層、約2年の歳月を経て完成した。屋根もレオナルド・ダ・ヴィンチが考案したレシプロカル構造により釘は一本も使用されていない。『Filed of Stars』は木工職人の中川周士をはじめ、TOMORROWのプロジェクトマネージャーの橋詰隼弥とインターンの若松晃平、サイプレス・フェルナンデス=ダウンズらの若い世代のクリエーターとのコラボレーションにより完成。焼杉に包まれたドーム状の作品には無数の細かい穴が開き、内側に入ると放射状に美しい光が差し込む。鮮やかな緑と空の青から構成される間人の景色に突如現れるアートスポット。その景色に馴染みながらも浮き立つ存在感に、自然とアートの共存を体感できる。
間人からはじまる、地球、人々、文化を紡ぐ新章。忘れてはならない感動と気づきが得られるはず。
あしたの畑 2026 REFLECTION|秋季公開
会期/2026年10月12日(月・祝)~11月8日(日)
10:00-17:00 最終入場 15:30
会場/間人:間人スタジオ・SEI TAIZA・間人プレイス、宮:宮のあしたの畑(Field of Stars・宮ティーハウス)
鑑賞料/大人:3,500円、学生:2,500円(学生証を提示)
※鑑賞は事前予約制のガイドツアー形式(間人スタジオに集合)
※別途プライベートツアーもあり
※但し、宮の作品は常時自由鑑賞、無料
PHOTO/CHANEL 取材・文/櫻井裕美