VERY NAVY

一般的に、言語の壁を越えたコミュニケーションが取りやすいと言われる、10歳前後の年齢。今回は、子どもの順応性、柔軟性のあるとされる11歳に特化した、CISVのビレッジキャンプという1カ月のプログラムに参加して国際交流した広い意味での留学体験のお話です。

言葉の壁に臆さない11歳で体験した
1カ月の異文化コミュニケーションが
その後の息子の自信と基盤に
なりました

行くまで

　きっかけは私の友人がCISVに参加した話を聞いたこと。CISVとは、夏や冬の長期休暇を使って、11歳から参加できる海外プログラムを実施している公益社団法人のことです。息子が2歳の頃、CISVに所属し子どもたちを引率するリーダーをしていた友人の話を聞く度に、11歳になったら絶対参加させたい！と思っていました。10歳になったタイミングで11歳のビレッジプログラムに応募。その際、語学力は必要とされず面接と行動観察のような試験を受けました。団体行動の中でどう過ごすかが判断の基準のようです。幸いにも息子は応募をパス！ 行き先は10〜12カ国からランダムに決められるのですが、息子の場合は翌年の夏にドイツへ1カ月行くことが決まりました。どの場合も11歳の男女各2名と引率するリーダーを加えた5人チームで出発し、世界13カ国の支部の子どもたちが集まります。行き先の希望はこちらからリクエストはできず、本人の適性などで判断されるのでしょうか、決められた国へ行くこともCISVの特徴のひとつ。この「ビレッジ」プログラムは11歳という年齢に特化しているのも特徴で、情緒的に安定し、順応性が高く、言葉の壁を乗り越えて異文化交流のコミュニケーションが柔軟にできる年齢期だという説明を受けました。出発までの1年間は月に1度の研修に親子で参加し、現地で行う歌やゲームの練習や、現地で披露する母国の料理やお土産の準備をチームで行います。息子の時は、ちらし寿司を披露することになりました。親もかなりコミットして準備するので、単に参加費を払って、子どもに海外体験をさせる通常の短期留学より負担はありましたが、親子で1年かけて過ごした準備期間のおかげで、1カ月ともにするチームメンバーと信頼関係を構築することができた点もCISVの良さだと思います。

行ってから

　1年間かけて準備をし、出発を楽しみにしていた息子ですが、直前で1カ月離れて暮らすことが怖くなったのか、泣き叫んで行くことを嫌がる瞬間も。「行けば絶対にいい経験になるけど、無理に行かせる必要があるのか」と身が引き裂かれる思いでしたが、リーダーが2時間かけて説得してくれたおかげで無事出発できました。現地でのプログラム中は親子の連絡は一切できず、途中報告もないことがルール。唯一、現地で息子の目が炎症を起こした際は、普段どう対処しているかとリーダーから連絡がありました。帰国後、息子から聞いた話では、キャンプ中のプログラムはとても緻密で、架空の通貨をどう使うか疑似体験するゲームや、舞台の上で目隠しをされ信頼関係を育むゲームなど、多様なアクティビティが用意されていたようです。また期間中はホームステイ体験もあり、別の子のホストから送られてきた写真に息子が写っていることで無事を確認するなど、親同士で情報交換をしていました。様子が見えない点で不安はありましたが、帰国の際、清々しい表情の息子の顔を見た瞬間、行かせて良かった！と実感。通っている小学校以外にもコミュニティがあること、世界はもっと広いということを体感してもらい気持ちで送り出しましたが、様々な国からの同年齢の子どもたちと過ごすことで、それぞれ言語は違っても英語が共通であることを子どもながら実感したり、異文化の中で過ごしたことで、人見知りが治り物怖じしなくなるなど、著しい成長を感じました。現在高校生の息子は、留学を視野に入れながら準備中。今の息子があるのは11歳の時の原体験があったからこそ、と実感しています。

撮影／相澤琢磨　取材・文／鍋嶋まどか　編集／羽城麻子

VERY NaVY6月号『実例・我が家の留学体験記』より。詳しくは2023年5/6発売VERY NaVY6月号に掲載しています。＊取材内容は、留学当時の情報になります。