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細川珠生さん「『世界は多様でみんな自分の好きな人生を選んでいる』と息子が気づくまで」

VERY NAVYで1年間連載をしていた「NEWSなエデュケーション」でお馴染みの政治ジャーナリスト・細川珠生さん。2019年中学3年生の夏より、ご子息がアメリカの高校へ進学しています。多種多様な人種が集まる高校生活の中で、日本や世界を俯瞰で見られる目を育みながら、逞しく成長されている息子さんのお話をうかがいました。

 


「〝自分が日本人であることを教えること〟がいちばんの留学準備だと思います」

「政治や宗教の話が普通にできる」
「点数で人生が決まらない」
息子の気づきに、成長を実感

私自身、学生時代に留学を経験していたので、息子が生まれた頃から、いつか海外を経験させたいと思っていましたが、幼い頃の息子は、海外のテロやニュースを見て、外国は怖いところだという先入観を持っていたようです。その恐怖感を払拭するため、小学生になると家族でアメリカを旅行し“海外は楽しい”という体験を積み重ねました。そんな息子が、中学2年生の夏休み、アメリカでのサマーキャンプから帰国すると「アメリカの高校に行きたい」と。私としては、大学進学の視野を広げるために高校在学中に1年留学してみるのはどうかと考えており、選択肢として考えていなかったわけではありませんが、正直戸惑いました。ですが、せっかく思い立った息子の気持ちが何より大切だと思ったので、早速、サマーキャンプでお世話になったコーディネーターの方にご相談しました。サマーキャンプを通じて息子の性格や適性を把握していただいていたので、志望校のリストアップなどを依頼し、その年の11月には学校へ見学に。トフルの試験すら一度も受けていない状態のなか、翌月にはアプライの手続きという目まぐるしいペースで留学準備がスタートしました。

 

世界の多様性を学んで
もらうことが留学の目的

私の考える留学の意義は、語学を学ぶことではなく、世界には多様な人種がいて多様な価値観があることを学び、その中の1つに日本がある、と知ること。英語のスキルアップであれば国内でも充分にできると思っていたので、学校のレベルよりも息子に合った自由度が高くリベラルな校風の共学をリクエストしました。見学に行った4つの学校の中から、教科ごとに校舎が分かれ、人権や文化の多様性などを学ぶソーシャルジャスティスの授業が必修で、ボストンの中心部からも利便性のよい場所に位置していた学校を選びました。留学を考える時、学校に足を運ぶことはお金も手間もかかりますが、長期間にわたり親と離れて暮らす子どもの学びの場所は、親として一度は見に行くことが重要だと思っています。なるべくストレスを抱えずに最後まで頑張ってもらえる環境選びこそ、親が最初にしてあげられる留学の第一歩ではないかと思います。その後、膨大な書類手続きを無事に済ませ、わずか9カ月後の’19年6月に渡米しました。

 

多様性のある価値観は
自由度の高い授業選択にも

いよいよ始まった寮生活は、ホームシックにかかるどころか、親のいない楽しさを満喫している様子。学校にもすんなり馴染み、勉強に課外活動に精力的に活動していました。留学中、親として心がけているのは、毎朝CNNとボストンのローカルニュースをチェックして状況を把握し、週に1度ビデオトークをすること。うちは親子の会話が多いほうで時には1時間以上になることもあります。LINEなどでもやりとりしますが、やはり顔を見て様子を知ることは重要だと思っています。そんな息子との会話で印象的だったのは、友人同士、現在の社会情勢や差別問題、将来の展望に関することを普通に話しているということです。日本ではそんな堅い話をすることは、ほとんど皆無。海外の同世代は将来に向けて明確な意思を持っていることを目の当たりにしたのでしょう。また、息子は「点数で人生が決まらないのがいい」とも語っていました。日本はまだまだ“点数社会”です。頑張って勉強していい大学に進学して有名企業に就職するといった固定観念が根強い日本とは異なり、アメリカの学校では人の評価を気にせず自分がやりたいことを見つけ、邁進している印象を受けたようです。息子の学校では、300以上ある授業から、先生と相談して自分だけの時間割を組み立てるため、自分は何が好きで何をしたいのか、否が応でも考えるようになったと言います。その表れでしょうか、特技であるピアノを活かしてアメリカ最古の名門音楽院の試験をパスし、興味のある宇宙科学の道を目指しながら、毎週土曜にレッスンに通うなど、将来に対する目標を自分自身でしっかりと持つようになったことも大きな変化でした。

 

自主隔離やビザ問題……
本当に苦しかったコロナ禍での留学
でも、世の中不可能なことは
少ないと思いました(笑)

 

明日どうなるかわからない
大混乱のコロナ禍留学

昨年3月、アメリカで国家非常事態宣言が発令。学校も寮を閉鎖し、リモート授業に切り替わりました。息子も、最低限の勉強道具だけ持って、あとは段ボールにつめた状態で寮を後にし、一時帰国しました。そこから年度終わりの6月まで、13時間の時差の中でのリモート授業。一体、この先、息子の生活はどうなるのか、日米双方の状況が改善しない限り、元の生活には戻れない厳しい現実に、親として何ができるのか、そればかり考えていました。結局私は7月に、息子と共に渡米することを決め、いざ出発となった矢先、突如トランプ大統領(当時)が留学ビザを制限するという報せが。急ぎ学校に書類を作成してもらうなど、あちこち手を尽くして、緊張の中、何とか渡米することができましたが、本当に苦しいことの連続でした。日本に残った夫もさぞ心配だったと思います。渡米後は、キッチン付きのホテルで8月末まで、学校再開の連絡を待ちながら、レギュラーのラジオ収録をLINE電話で行ったほか、リモート会議に執筆12本をなんとかこなした自分を振り返ると“人ってできないことはない!”と思えたくらい(笑)、本当に大変な経験でした。息子はもちろん、多くの留学生がコロナ禍によって大変な影響があった一年だったと思います。

 

日本における留学の未来が
もっと明るくなるように

留学がお金のかかる教育ということは事実ですが、それでも留学での苦労は親子を成長させると感じています。将来お子さんを留学させたいと考えているお母様たちに伝えたいのは、勉強以外に何か特技を作ってあげてほしい、ということです。海外ではアートをとても重視するので、息子が小さい頃から習っていたピアノはアプライの際にも評価されましたし、学校生活に馴染むツールにもなりました。また、細川忠興と明智光秀の娘・たまの長男・忠隆の直系の子孫であることもあり、息子自身、日本の歴史をしっかり勉強してきたこともとても役立ちました。留学先では宗教やルーツについて聞かれることが多いので、幼い頃からの教育や、親を通じて見せる世界が実はすべて有機的につながっていることも実感しました。“青年のグローバル化推進”の取り組みなどにより日本における奨学金制度等、以前よりも高まりつつありますが、日本への帰国が条件となっているケースが多いなど課題もあります。政治ジャーナリストという立場から更なる国の援助を促進しながら、もっと自由に海外を経験できる子どもたちを増やしていきたいと思っています。

 

 

息子の「好き」を尊重することで
今があると思っています

 

(左)2020年2月、ダンスのクラスの友人と。息子は音楽系の授業を多くとっています。(右)小学校の休暇を利用しての海外旅行。宇宙に興味がある息子とエンデバーを見に行きました。

 

Profile

細川 珠生

政政治ジャーナリスト。聖心女子大学英文科卒業。政治全般や地方自治、教育に関する知見を活かし各方面で活躍。三井住友建設株式会社社外取締役、星槎大学非常勤講師。明智光秀の末裔。著書に『私の先祖 明智光秀』(宝島社)など多数。「政策キーマンに聞く『オンライン・グローバル未来塾』」主宰。
https:// blog.excite.co.jp/tamaohosokawa

撮影/葛川栄蔵 ヘア・メーク/久保フユミ〈ROI〉 取材・文/鍋嶋まどか 編集/羽城麻子

 

VERY NAVY 4月号『「我が家の留学体験記」Special 細川珠生さんインタビュー』から 
詳しくは2021年3/5発売VERY NAVY 4月号に掲載しています。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。

 

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