VERY NAVY

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Interview

インタビュー

2023.10.25 UP

カルティエ ジャパン社長・宮地 純さんの“キャリア作り”『自分に素直であることが、心地のいい居場所につながる』

これからのキャリアの在り方を改めて考えるタイミングでもあるNaVY世代。正しさへのプレッシャーが強い日本で“自分らしく”働くことって、実は意外と難しい。発売中の『VERY NaVY』11月号では、計画より“好奇心”で自らを導いてきたカルティエ ジャパン プレジデント&CEOの宮地 純さんにインタビュー。彼女の強くしなやかな言葉が、様々なしがらみから一歩を踏み出せずにいる女性たちの背中をそっと押してくれるはずです。

カルティエ ジャパン プレジデント&CEO
宮地 純さんに聞いた

“正しさ”への
プレッシャーが強い日本で
自分らしく働くには

宮地 純さん ─ Profile ─

みやち じゅん カルティエ ジャパン プレジデント&CEO。京都大学卒業後、外資系証券会社を経て、INSEAD(欧州経営大学院)でMBAを取得。2017年にリシュモン ジャパン入社、2020年現職に就任。7歳の双子と5歳の子どもの母親でもあります。

── 2020年、カルティエ ジャパン プレジデント&CEOに就任された宮地さん。日本人女性初ということで注目を集めましたが、改めて当時の心境をお聞かせください。

 カルティエは長年、クリエイティブとマネージメントの両面で女性が中心的な活躍を担ってきました。現在カルティエ ジャパンでは管理職以上のポジションの約半数が女性。グローバルカンパニーとして性別にとらわれない公平な文化が根付いています。ですから、CEO就任も私個人としては女性であることより、グローバルなコミュニティのなかで日本人として何をどう発信していくか。そちらのプレッシャーの方が大きかったように思います。

── 就任当時、宮地さんのお子さんは3歳と1歳。しかも3歳は双子! 子育てとの両立への不安はありませんでしたか?

 人生のターニングポイントが自分のベストなタイミングで訪れることは少ないように感じます。私は行動する前に「ああしよう、こうしよう」とはあまり考えず、計画よりも好奇心を大切にするタイプ。やりたい気持ちがあればHOWは後からついてくる、と。振り返ると「我ながらよく頑張った」とは思います(笑)。

計画より好奇心で行動。
自己実現の一部として
キャリアがある

── キャリアにおいても特に計画やイメージを持たず、今に至るのでしょうか?

 幼い頃からずっと、目の前の興味や周囲からの影響に導かれて動いてきたような気がします。大学時代にモノづくりに憧れ、そのためには数字を学ぶ必要があることを知り、外資系銀行に就職。経営を学ぶためにフランスの大学院に留学した際に、ラグジュアリーブランドのビジネスと出会いました。知りたい、学びたいという気持ちがまず先で、それを深めるために学問があり、実践する場として仕事がある。自己実現の一部としてキャリアがあると考えてきました。

── 自己実現としてのキャリア、という考え方、素敵ですね。キャリアについては“安定”を考えてしまい、好奇心と向き合えていないNaVY世代も多いように思います。

 日本は学歴や職歴を問われる機会が多いので、その影響もあるのでしょうか。私は2歳から17歳まで日本と西欧を行き来する生活をしていましたが、多様な環境にいると出身や学校といった共有するベクトルがなかったりするので、コミュニケーションの早い段階で“何が好きで、何が得意か”というパーソナリティに着目できる。ビジネスにおいても、経歴よりパフォーマンスやアイデアを尊重します。個人的に、ラベリングによって見えにくくなるものがある気がしています。

── 宮地さんのラベリングに頼らない価値観を後押しするものは何でしょうか?

 哲学を学んだことが大きいかも知れません。インターナショナル バカロレア試験のある高校に通っていた際に、“Theory of Knowledge”という日本の哲学にあたる学問が必修科目でした。答えのない事象に対して自らの価値観を問われる学問から養われたのは、自分なりの判断軸を持つこと。周囲の意見も参考にしつつ、最終的には自らの意思で物事を決め、納得する。何が正しいではなく、どう思うか。その判断軸はリーダーシップ、人生をナビゲートしていくうえでとても重要な要素となり、私の基礎を育んでくれたと感じています。

学び、成長、ディスカバリー。
子どもの姿から確認する
人生の健やかさの原点

── 以前「正しくあること、間違えてはいけないというプレッシャーが、日本では大きいような気がする」とおっしゃっていました。そのプレッシャーに負けないために大切にしていること、社員の方に伝えていることはありますか?

 クリエイティビティ、イノベーションを生み出す土壌を作っていきたいと考えるなかで、チャレンジの手前で足踏みしないよう“心の声をオープンにできる”環境は大切だと思っています。その環境づくりは、マネージメントの仕事。カルティエでは社員に限らず、社会、若者たちとの交流から様々な意見や景色に触れる機会を設けています。先日、仕事に関係なく各部署で自由に過ごすスタッフデーを実施しました。私は短時間ですが、乳児院のボランティアに参加しました。また、社員の家族も参加できるワークショップを実施するなど、社員それぞれのストーリーを間近で感じることでCEOとしてさらに身が引き締まる想いに。やはり頭で考えるのではなく、体感して心に湧いた想いのなかに“本当に大切にするべきもの”の答えがあると思っています。

── 自己実現としてのキャリア、心の声をオープンにする。いろいろなしがらみから一歩を踏み出せずにいる女性たちに勇気をくれる言葉だと感じました。

 子どもたちを育てながら確認するのは、学び、成長、ディスカバリーという人生の健やかさの原点です。その発端となるのが自分の好きなものや好奇心。「Stay Childlike Not Childish」、もっと自分に素直であることが、心地のいい居場所につながる。とある脳科学者の言説で、一般的に女性の脳というのはより多くの脳内パーツで物事を捉え、直線的ではなく包括的な考え方になるそうです。そういう意味では、自分以外のことを考えすぎて迷ってしまう女性が多いのかも知れません。それは弱みではなく、他者との協調、傾聴によってひとつ以上の答えを見出す強みでもある。2025年大阪・関西万博においてカルティエが出展する“ウーマンズ パビリオン”は女性が輝く、幸せになることを理屈抜きで感じてもらえる体験を提供したいと思っています。自分を信じ、周りを信じて行動する。多くの女性たちがそのきっかけを摑む場となることを強く望みます。

柔らかなブラウスに、フォルムの美しいタイトスカート。シンプルながらも意思を感じさせるスタイリングに、宮地さんの知性が薫ります。上品で華やかなカルティエのジュエリー&ウォッチのコーディネートはさすが。ピアスとネックレス「クラッシュ ドゥ カルティエ」、時計「タンク アメリカン」、ブレスレット「ジュスト アン クル」。

私たちの今に寄り添うインタビューが続々
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撮影/須藤敬一 ヘア・メーク/只友謙也〈Linx〉取材・文/櫻井裕美 編集/羽城麻子

VERY NaVY11月号『カルティエ ジャパン プレジデント&CEO 宮地 純さんに聞いた〝正しさ〟へのプレッシャーが強い日本で自分らしく働くには』より。詳しくは2023年10/6発売VERY NaVY11月号に掲載しています。*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。

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