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堀井美香さん「30代は子育て、40代は仕事の10年と決めていた」

Podcast番組「ジェーン・スーと堀井美香の『OVER THE SUN』」が大好評、『OVER THE SUN 公式互助会本』も発売になり話題のフリーアナウンサー・堀井美香さん。入社2年目の24歳で結婚し、翌年に長女を出産。その3年後には長男を出産するなど、仕事と育児を両立させてきました。実家遠方&夫多忙のワンオペ育児の中で意識していたのは「キャリアを10年単位で考えること」。30代、40代にそれぞれ意識していたこと、そして50代からの夢について伺いました。

 

30代は子育て、40代は仕事の10年と決めていた

VERY編集部(以下、——) この10年はナレーションやラジオ番組など、精力的にお仕事をされている印象を受けました。ちょうど40歳になられた頃ですが、働き方を変える転機はあったのでしょうか?

 

堀井美香(以下、堀井) もともと、「40歳からは仕事をがんばる」と決めていたんです。25歳と28歳で出産しましたが、夫は仕事の都合でほぼ家にいることがなく、双方の実家ともに遠くてワンオペ状態。だから、しばらくは子育てに集中する時期と決めました。

 

——30代の10年はキャリアを優先しない、ということですね。

 

堀井 30代は子育ての10年になるけれど、その代わり子どもたちが大きくなった40代からは仕事の10年にしようと思ったんです。会社側に理解があって土日や夜は子どもと一緒にいられるようなスケジュールにしてくれたことも大きかったですね。それでも手が足りない部分は、ママ友やファミサポさんが助けてくれました。

 

——次々に後輩が入ってくる中で、子育て中心の生活に焦りを感じるようなことはなかったのでしょうか?

 

堀井 申し訳なさはあっても、焦りはほとんど感じませんでした。これには20代のうちにキャリアの方向性を定めたことが大きかったかもしれません。
アナウンサーは専門性があると言われるものの、やはり会社員です。いつか他部署に異動することもあるかもしれない。ずっとアナウンサーを続けられるように、その専門性をより極めようと早いうちから考えていました。インタビューや報道など、さまざまな技術が問われる中で、私が一番好きだったのがナレーション。母は勉強についてほとんど口出ししませんでしたが、なぜか「音読だけはしなさい」と言われ続けてきました。そのおかげでアナウンサーになれたと言っても過言ではありません。自分なりにナレーションを勉強し続けて、21年には音読に関する本(「音読教室 現役アナウンサーが教える教科書を読んで言葉を楽しむテクニック」も出版したほど。アナウンサーとしてナレーションに力を入れていこう、そして一生続けていこうと、キャリア前半で決意していました。

 

今、自分が置かれている状況下で目一杯仕事することはできないけれど、種まきをしていつか会社に恩返ししたい。そこで30代は「下地づくり」として、仕事以外で勉強する機会をたくさん設けるようにしました。ナレーション技術を高めるため、プロの俳優の先生に自腹でレッスンをお願いしたことも。家が郊外で通勤に時間がかかったので、行き帰りの電車でいろいろな方の朗読カセットを聞くということもやっていました。

 

——40代に入って「仕事の10年」を迎えた後は、生活はどのように変化していったのでしょうか。

 

堀井 いままで断っていた深夜や年末年始の仕事も積極的に引き受けるようになりました。時間の制限なく働けることがうれしくて、5分間のナレーションのために、わざわざ休日に出社することも全く億劫ではなかったですね。ちょうど子どもたちも大きくなって一緒にいられる時間も減ってきた時期。私が忙しくなって口うるさく言わなくなったことで、子どもたちもラクになったようです(笑)。

 

——子育て中は明日の予定を考える気力さえ湧かないこともありますが、堀井さんのように10年単位で考えるやり方なら、気負わず前向きになれるような気がしました。

 

堀井 10年で区切ることで自分でも目標設定がしやすく、キャリアをつくっていくイメージができました。特に私は好きなこと、やっていて気持ちいいことが早い時期に見つかったから、そのあともブレずに進めた気がします。

 

「大河のナレーション」が独立後の目標の一つ!

——22年3月、50歳になった年にTBSを退社されています。「50代からはフリーランス」と最初から決めていたのでしょうか?

 

堀井 正直なところ、「50歳になったら辞めよう」とは全く考えていませんでした。40代半ばからは採用や新人研修を担当し、さらに退社前の3年間は管理職も経験。依頼されて要求に応える立場から指導する立場になり、会社員として大きく成長したのがこの10年。会社に対して何の不満もなく、むしろ、「50代は会社員としてもっと飛躍していく10年」だと思っていたんです。

 

ただ同時に、会社員生活においてやりたいことは全てやりきってしまったという満足感もありました。そんな中、20年の秋から始まったPodcast番組が好評でインタビューの依頼が増えるようになったり、担当するラジオ番組のゲストの多様な生き方に刺激を受けたりと、さまざまな要因によって独立を決意しました。子どもたちも成長しましたし、ありがたいことに親もまだ元気。状況にも恵まれていたからこそ、実現できたような気がします。

 

——ラジオやPodcast番組で「いつか喫茶店を開きたい」「大河ドラマのナレーションをやってみたい」という話をされていたのが印象に残っています。

 

堀井 そうそう、コーヒーが好きだったのでいつか自分のお店が持てたらと思って、スクールに通って焙煎や店の経営のやり方を学んだこともあります! 大河のナレーションはたしかに独立後の新たな目標の一つではあります。今の事務所にどんな仕事がやりたいかと聞かれたので「大河のナレーションをやりたい」と正直に答えたのですが、反応は薄かったですね(笑)。同じ事務所に大河ドラマ常連の佐藤二朗さんもいらっしゃるので、図々しく、「いつかやりたい」とこれからも言い続けると思います(笑)。

 

——仕事における夢や目標を心に刻んだり口にしたりすることで、何かご自身の中に変化は生まれましたか?

 

堀井 私は自分でやりたいと決めたら一人で動いてしまうタイプ。すぐやる、とりあえず進めてみることで、道が開けた経験があります。もちろん、失敗も成功もあれば、頓挫したことも。それでも経験することで、さまざまなことを学べていると感じます。

 

——子育てとキャリアの両立がスタートしたばかりで、悩んでいる読者にメッセージをお願いします。

 

堀井 苦しければ人の手を借りる、誰かが困っていたら手を差し伸べる。それって当たり前のことですよね。私もそんな風にして助け合いながら生きていきたいです。みんなで幸せになりましょう!

 

ドレス¥126,500 ベアスカート¥63,800(ともにハルノブムラタ/THE WALL SHOWROOM)ネックレス¥462,000(ブチェラッティ)ブーツ¥213,400(ファビアナフィリッピ/アオイ)

 

◉堀井美香さんProfile

1995年TBS入社。50歳を迎えた今年、フリーアナウンサーに。現在も多数の番組ナレーション、Podcast「ジェーン・スーと堀井美香の『OVER THE SUN』」などのレギュラーをもつ。自著に『音読教室』(カンゼン)。12月2日にルーテル市ヶ谷教会で三浦綾子の作品を読む朗読会を開催。

撮影/木村 敦 ヘア・メーク/森 ユキオ〈ROI〉 スタイリング/朝倉 豊 取材・文/樋口可奈子 編集/羽城麻子

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