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Interview

インタビュー

2022.12.22 UP

TBS退社・堀井美香アナの“第二章”「わが家は今それぞれの居場所で自由に生きています」

’22年3月末に28年勤めたTBSを退社し、現在はフリーアナウンサーとして活動する堀井美香さん。Podcast番組「ジェーン・スーと堀井美香の『OVER THE SUN』」の飾らないトークで人気を集めています。番組でもよく話題にする2人の子どもは25歳と22歳になり、「母は卒業した」と語る堀井さん。「常にままならなかった」という子育てや、フリーになった経緯、さらに今後について伺いました。

※掲載中の情報は2022年11月号掲載時のものです。

手放したことで見えてきた景色、教えてください

堀井美香さんの
卒「母」、卒「会社員」

「いい人生を与えたい」 に
隠されていた、親の欲。今ならわかる!

ドレス¥126,500 ベアスカート¥63,800(ともにハルノブムラタ/THE WALL SHOWROOM)ネックレス¥462,000(ブチェラッティ)ブーツ¥213,400(ファビアナフィリッピ/アオイ)

 ─ Profile ─ 堀井美香さん

1995年TBS入社。50歳を迎えた今年、フリーアナウンサーに。現在も多数の番組ナレーション、Podcast「ジェーン・スーと堀井美香の『OVER THE SUN』」などのレギュラーをもつ。自著に『音読教室』(カンゼン)。12月2日にルーテル市ヶ谷教会で三浦綾子の作品を読む朗読会を開催。

細かい口出しをやめたら
子どもも自分もラクになった

NaVY編集部(以下、── ) TBS退社は大きく報道され、驚いた人も多かったと思います。会社員を辞めるにあたって、お子さんたちにも相談はされたのでしょうか?

堀井美香(以下、堀井) 2人ともすでに自分の人生を歩んでいるので、いまさら母親の人生について心配も興味もないようでした(笑)。長女は今、社会人3年目。就職で家を出て以来、かなり忙しいようで、やりとりはもっぱらLINEです。私のことを本当によく見ていて、良くないところは注意してくれます。
長男は大学生。一緒に出かけるようなことはもうありませんが、はやりに詳しいのでいろんなことを教えてくれます。特にエンタメ系の知識が豊富ですね。

── 25歳で長女を出産。キャリアのほとんどが育児との両立だったと思います。特に大変だったのはいつごろでしたか?

堀井 子どもが小さいころは夫が仕事の都合でほとんど家にいなかったので、今でいう「ワンオペ」状態。郊外に住んでいたこともあり、小学校低学年くらいまでは時間のやりくりが大変でした。でも子育てが楽しくて、精神的につらくなることはほとんどありませんでした。
そんな私も、数年前は家のことを一人で抱え込み、時に行き詰まることもありました。夫に「家庭だけに目が向かないように、しばらく一人で過ごしてみたら?」と勧められて、3週間弱カプセルホテル暮らしをしたこともあります。

── お子さんと思春期に衝突するようなことはあったのでしょうか。

堀井 長女が中学生のときに反抗期がありました。子どもには礼儀をしっかり身につけてほしいと思っていたので、「お弁当をつくったのにありがとうを言わないなんて!」と、黙って出かけようとする長女を呼び止めては注意。かなり激しい衝突もありました。今思えば、外ではちゃんとあいさつもできていたでしょうし、長女も思春期でなんとなくイライラしていただけだったんですよね。親子関係が変化したのは、彼女が高校に進学したあたり。長女は自分の意志で留学を決め、1年間海外で生活しました。戻ってきてからは、ぐっと大人になったと感じました。

── 長男との関係はいかがでしたか。

堀井 長男は反抗期と呼べるようなものはほとんどありませんでした。でも私がつい進路に口出ししてしまったことで、窮屈な思いをさせたこともあったかもしれません。長男が高校生になるまで、私は一日中ずっと子どもたちのことを考えてしまうような母親だったんです。仕事に行っていても「今何をしているかな」「困っていないかな」とか。でも、この時期に手が離れたというか、私から手を離しました。それまではドアの閉め方から靴の脱ぎ方、洗濯物の出し方まで、それは細かく口出ししていました。でも、あまりにも毎日うるさく言うから、一切子どもの耳には入っていないようで……。ちょうど仕事が忙しくなって子どもといられる時間が減ったこともあり、細々としたことまで管理するのを諦めました。

── 口出しをやめたら、自分自身の気持ちも変化しましたか?

堀井 子どもも私もラクになりました。出産前は、自分が努力すれば全て自分に返ってくるという実感がありました。でも子どもに関しては違うと、このときに気づいたんです。いくら私ががんばってもそれに比例して子どもの人生がうまくいくわけではないし、時に反比例することもあります。「子どもを良い方向に導きたい」と考えながら、そこには自分の欲が入りすぎていました。

子が成長し、それぞれのステージへ。
今が家族のいちばんいい形

── なぜ子育てには「欲」が入りすぎてしまうのでしょうか。

堀井 子育て中って情報が多すぎるんです。ママ友から子どもの教育にはあれもいい、これもいいと聞かされると、どうしても影響されてしまう。
幸せにしたいと思うのは間違いではありません。でもその幸せは、私のものさしで測ったものでしかなかった。「この大学のほうが選択肢が増えるんじゃないか」とか「この高校のほうが楽しい青春が送れるかもよ?」と勧めたこともありましたが、それはただの私の思う「幸せ」でしかなかったんです。
結局、2人とも親が勧める学校を選んでくれたのは小、中学校まで。どちらも今は私が思い描いていた進路とは全く別な方向へ進みました。でもそれで本当に良かった。わが家は今、それぞれの居場所で家族全員が自由に生きています。今が家族のいちばんいい形だと思っています。

── 親が思う幸せと、子が思う幸せは違うかもしれない。そう気づいてもなかなか軌道修正できず、悩んでいる親も多いと思います。

堀井 子育ての真っ最中は難しいですよね。でも小言を少し減らすだけで、子どもや自分のストレスが軽減するかもしれません。私もいまだに実家の母親に食事の仕方をあれこれ言われて、それがうるさくて仕方ない(笑)。親ってそういうものなんでしょうね。子育て中は自分のことを考える時間もないと思います。それでも10年後、たとえば40代、50代になったときの自分のプラスのイメージをするだけでも、未来が楽しみになってくる気がします。子どもと一緒にいるときには着られないような素敵な洋服を買う。たくさん旅行する。ボランティア活動する。今行動できなくても、想像しているだけで心が豊かになるのではないでしょうか。

子育てが終わった今だから
どんなことにでも挑戦できる気がします

仕事がなくなるのは覚悟の上。
「安定」を手放して次の道へ

── 退社する前の3年間は、アナウンサー業務と並行して管理職も経験されています。管理職として苦労したことや悩んだことはありますか?

堀井 それが、管理職に対してまったくジレンマがなかったんです。このまま会社員としてアップデートしていこうと思っていたので。後輩たちを面談して鼓舞したりスケジュール管理をしたりと、やることはたくさんありましたが、チームで一緒に成長していくことを楽しんでいました。
採用にも約6年間かかわり、後半にはチーフも担当。40代は会社員としてとにかく充実した時期だったと言えます。ただ同時に、「全てやりきってしまった」とも感じていました。

── 退職の決め手はどんなことだったのでしょうか?

堀井 きっかけはいくつもありますが、1年間担当したラジオ番組に大きく背中を押してもらいました。多拠点生活や早期退職、起業など、多様な生き方をする人をゲストに招く番組で、毎回「こんな人生があるのか」と刺激を受けました。いろんなことをやりすぎている状態から、全部手放して一度ゼロになるのもいいかもしれない。そう思えたんです。

── キャリアを大きく転換することに、恐れや迷いはありませんでしたか?

堀井 フリーランスは収入が安定しないし、いつ仕事がなくなるかわかりません。それはもちろん覚悟の上でした。でもこうして、自分が好きな「読む」という仕事にかかわれるのは幸せなこと。今はナレーション以外にラジオや執筆、司会業などいろいろな仕事をやらせてもらっています。「もっと有名になりたい」というような野望もないですし、昔に比べて体力や気力も落ちている自覚はあります。でも子育てが終わって何にもとらわれていない今だからこそ、なんでもできるような気がしています。これまではキャリアを10年単位で考えて動いてきましたが、ここからの10年は導かれる方向に進んでいけたら。ずっとやり続けたその先に、どんな自分が待っているのだろうとワクワクする気持ちでいっぱいです。

撮影/木村 敦 ヘア・メーク/森 ユキオ〈ROI〉 スタイリング/朝倉 豊 取材・文/樋口可奈子 編集/羽城麻子

VERY NaVY11月号『フリーアナウンサー・堀井美香さんの卒「母」、卒「会社員」』より。詳しくは2022年10/6発売VERY NaVY11月号に掲載しています。*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。

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