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元体操日本代表・田中理恵さん「子どもとの生活を通じて、私にはなかった子ども時代を楽しんでいます」

自分の力で生きていく、子どもたちの将来を見据えたうえで大切にしたい「マインドの育て方」。できる、乗り越えられる、と信じることのできる力が自信や夢の実現につながっていく。体操一家で培った田中理恵さんの前向きなメンタルは健やかな育児にもつながっているようです。

*『VERY NaVY』2026年6月号「子育て第2シーズンどうですか?」より。

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兄や弟の頑張る姿を見ながら芽生えた
きょうだいで尊敬し合う関係性

娘が体操選手を目指さない理由は「ママに負けるから」

8歳の娘と2歳の息子、ふたりとも体操クラブに通っています。娘は体育の授業で跳び箱や鉄棒が楽しくなるための習い事として、息子はまだお遊び感覚ですが、体を動かす楽しみを実感している様子。娘は体操選手になるつもりはなく、早々に宣言された理由は「ママに負けるから」。私には教わることもしたくないという、負けず嫌いっぷり。上達する近道を教えたい歯痒さはありつつも、彼女のプライドは大切にしてあげたい。だから一切教えず、自分流でひたすら練習する様子を見守り「できた!」となったら思い切り褒めてあげるようにしています。上達するうえで、自信は大事です。選手を目指さなくても体操に夢中の娘が、先日練習中に骨折。完治までには半年ぐらいかかるみたいです。相当落ち込んでいる様子の娘に「痛いよね」と共感しつつ、怪我には慣れている私。「骨だからくっつけば治るよ」「リハビリすればまた体操できるようになるよ」と、経験を踏まえた励ましの言葉をかけたのですが、アスリート的だったのか娘には刺さらず。夫の動揺ぶりからも、自分がいたのはやはり特殊な環境だったと実感。家族を通して普通の感覚を学習している感じです。

 

ちなみに、子どもたちが体操を習っているのは、兄と弟との三きょうだいで立ち上げた体操クラブ。小さな頃からきょうだい喧嘩はしたことがなく、ずっと仲良しです。お互いに体操で怒られながらも努力している姿を見てきましたし、兄がミスを出さずにメダルをとって帰ってくる姿、弟のきめの細かい美しい体操と今も現役選手として活躍する諦めない姿勢を、元体操選手としても個人としても尊敬。だから喧嘩にならないのだと思います。娘と息子も喧嘩はしても、お互いのいいところをリスペクトし合える関係性を育んでくれたら嬉しいです。

育児を通して楽しむ私にはなかった子ども時代

子育ては、すべてが新鮮。子どもとの生活を通じて、私にはなかった子ども時代を楽しんでいる感覚です。私が体操を始めたのは、小学校1年生。学校が終わると校門の近くにスタンバイしていた親の車に3きょうだいで乗り込み、体育館へ行って夜10時まで練習し、家に帰って宿題をして、お風呂に入って寝るという毎日。学校帰りに寄り道をしたこともなく、週1回のお休みもメンテナンスが主だったので、友達と遊びに行ったりすることもありませんでした。おやつもバナナ、納豆、ご飯、しらすとか(笑)。なので、今は子どもと一緒にクッキーを食べることにしあわせを感じたり、家族でUFOキャッチャーをしたときは「ママが一番楽しんでる?」と言われたり。体操中心の生活は、それ以外の世界を知る機会がなかったせいか我慢していたわけではなく「今日も体操ができる!」と、常に前向きでした。親に体操のことで反抗したのは、たぶん一度だけ。父は指導者として私たちの練習に携わり、母は送迎などのサポートをして応援してくれていました。

 

練習が終わると車の中でお弁当を食べながら帰るのですが、母が運転する車に乗ると「どんな練習したの」「なんで泣いていたの?」と、体操についてあれこれ質問が飛んできて。私たちきょうだいは体操のことは一旦体育館に置き、帰り道はそれ以外の会話をしたかったんです。いくら体操が好きでもオンとオフを切り替えないと、疲れてしまうと、子どもながらに強く感じていました。ある日「お母さんの車に乗りたくない」と3人でボイコット。両親はすぐに受け入れてくれましたが、今思うと母はショックだっただろうなって。毎日お弁当を作って、私たちの生活がうまく回るように準備を整えてくれて……。母がやってくれていたことを思い出すと私には無理!親にならないとちゃんと感謝できないことってありますね。

地元・和歌山への恩返しとして始めた「田中3きょうだい体操教室」。イベントには子どもたちを連れて帰省することもよくあります。祖父母にも会えるのでふたりともいつも楽しみにしています。

子育てが思い通りにいかなくても、
私の人生!と割り切れるのは体操のおかげ

「人生は自分との戦い」実家は格言の張り紙だらけ

ご飯を食べるのを頑張る、勉強を頑張る、寝るのも頑張る。「何でも100%で頑張ることができないと、好きなことを続けられない」と、子どもには伝えています。あとは、準備の大切さ。例えばテストがあったら、その前にきちんと予習するのが準備。テスト当日に不安になるようなら、それは準備が足りなかったということ。体操選手時代は、とにかく準備。「あれだけ練習したのだから」と自信を持って本番に臨むことが重要で、結果はあとからついてくると信じて励んでいました。そのうえで結果が出せなかったら「もう1回、次こそ!」と、その繰り返しができるまでやり切る気持ちにつながったと思っています。小学校3年生の娘はやってみたいことがひとつではなく、ダンスや歌にも「ママより上手でしょ?」と一生懸命取り組んでいます。負けず嫌いは私譲りなのかもしれないですね。

 

インタビューでいつも返答に詰まってしまうのが「これまでの子育てで大変だったこと」。息子を妊娠中につわりが酷かった、お腹が大きくて娘と一緒に公園を走り回れなかった、これだと答えとしては弱いみたいです(笑)。でも、本当にそれぐらいしか思い浮かばず。「あの平均台通しの苦労を思えば」と、体操選手時代と比べているからかもしれません。和歌山の実家には「人生は自分との戦い」と、我が家の格言があらゆるところに貼られていました。耳から目からその言葉が自分に浸透して、気がつけば何が起きてもすぐに「これが人生なんだ、私にはできる!」という思考回路に。体操競技の試合は4種目あって、最初の平均台で落下してしまっても、あと3種目をやり切らないといけません。「いや自分は落ちてない、最高の演技をした」と、自分と対話をしながらメンタルを切り替えることが必要でした。ヘトヘトに疲れているのに子どもたちがなかなかいうことを聞いてくれない夜も、さっきまでキレイだった息子が全身ベタベタで近づいてきても、「これが私の人生」と割り切れるのは、子育てにおいてしあわせかもしれません。

Profile

田中理恵さん

たなかりえ。1987年、和歌山県生まれ。2010年ロッテルダム世界体操選手権で日本人女子初の『ロンジン・エレガンス賞』を受賞。2012年に兄の和仁、弟の佑典とともにロンドン五輪に出場。全日本やNHK杯などの大会で女子総合優勝などの実績を残し、2013年に引退後は3きょうだいで体操クラブをスタート。YouTube『田中理恵 Refit』やテレビ、イベントなど多岐にわたり活躍。2児の母。

ジャケット¥165,000トップス¥118,800(ともにアンビラン)パンツ¥41,800(ベイジ,/オンワード樫山 お客様相談室)ピアス¥1,177,000ペンダント¥907,500リング¥489,500バングル¥4,895,000(すべてティファニー/ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インク)サンダル/スタイリスト私物

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撮影/酒井貴生〈aosora〉 スタイリング/MORIYA ヘア・メイク/後藤マキ 取材・文/櫻井裕美 編集/水澤 薫

*VERY NaVY6月号『子育て第2シーズンどうですか?』より。詳しくは2026年5/7(木)発売VERY NaVY 6月号に掲載しています。

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