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ウーマノミクス生みの親、キャシー松井さんが“失敗”したジェンダー教育

元・ゴールドマン・サックス証券 副会長兼チーフ日本株ストラテジストで、日本の女性活躍推進の礎となった「ウーマノミクス」生みの親でもあるキャシー松井さん。現在は女性だけで設立したベンチャーキャピタルで社会的課題解決を目指すスタートアップへの投資活動を行なっています。ビジネスリーダーでありながら、私生活では一男一女を育てたワーキングママでもあります。

『VERY NaVY』2022年5月号本誌では、子どもにオーナーシップを持たせる大切さについてお話を伺いました。Web版では、ジェンダー教育について松井さん自身が「失敗した」と語るジェンダー教育について、その反省点をもとに何が大切なのかを教えていただきました。

キャシー松井さん ─ PROFILE ─

元・ゴールドマン・サックス証券 副会長兼チーフ日本株ストラテジスト。2021年に女性3人の共同創業でベンチャーキャピタルMPower Partners Fund L.P.を設立。ヘルスケア/ウェルネス、フィンテック、次世代の働き方といった社会的課題を解決する国内外のスタートアップが投資対象で、ESG(環境・社会・企業統治)を投資先企業の成長戦略に組み込むことで世界にインパクトを与える規模にまで拡大させることを目的として注目を集めている。

 

ーー今ほど女性活躍推進が社会に浸透していなかった1999年に、松井さんは「ウーマノミクス」を提唱され、女性のエンパワメントに長年取り組んで来られました。

 

ウーマノミクスを書き上げたのは、2人目(長女)を妊娠していたときです。
当時、日本はバブルが崩壊した直後で日本株は売られるばかりで頭を抱えていました。海外投資家は日本の財政赤字が膨れていることや、少子高齢化による労働人口の減少に意識を向け始めており、周囲で「日本の明るい成長」を期待する人はいませんでした。

そんな顧客たちに建設的な解決策を提示しようと思い浮かんだのが「ウーマノミクス」です。働く女性が増えて彼女たちの所得が増えれば消費が盛り上がり、経済にもプラスになる、という話です。

その背景にあったのは、私がワーキングマザーとして働く中で公認会計士や弁護士など非常に優秀な女性たちが、結婚や出産を機に仕事を辞めて、それ以降正社員雇用として仕事に戻ってこない、ということでした。

 

ーー30歳前後の女性たちの就業率が低くなる「M字カーブ」と呼ばれる減少ですね。

 

はい。人口の半分に当たる女性の才能が生かされないというのは日本にとって大きな損失です。

ただ、2021年のジェンダーギャップ指数では、日本は156カ国中120位でした。先進国ではもちろん最下位ですし、近隣の中国や韓国よりも男女格差が開いている。つまり、いまだに日本はどんなに優秀でも女性だというだけで仕事がしにくく、活躍が阻まれやすいということです。

 

ーーまだまだ、道半ばですね。一方でウーマノミクス以降、エンパワメントやダイバーシティに力を入れ始める会社も増えてきました。ゴールドマン・サックスも、松井さんはじめ会社ぐるみで取り組まれ「M字カーブ」を解消するべくさまざまな改革を行い、離職率の激減に成功されています。女性社員のキャリアアップやダイバーシティの推進を積極的に行ってこられた松井さんですが、ご自身の子育てでジェンダー教育を意識しながら伝えてきたことはありますか?

 

実は子どもへのジェンダー教育に関しては、反省のほうが大きいのです。

まだ子どもたちが幼い頃、私は海外出張が多く1年の半分くらいは家を空けていました。そのことへの罪悪感を緩和するため、帰国する際はいつも空港で子どもたちにおもちゃを買っていたのです。

ところが、その内容が息子にはレゴやサイエンスキットなど”男の子らしい”ものを、娘にはピンクで可愛い”女の子らしい”ものものばかりをつい買っていたのです。

そしてある日、ふと気がつきました。

「もしかして理系女子が少ないのは私のせいなのでは?」と。
無意識のジェンダーバイアスの根深さを思い知らされました。

ずっとジェンダー問題に取り組んできた私ですらこうなってしまうのですから。
この点に関しては、失敗したという思いがあります。

 

ーーそうなのですね。では今、改めて子どもたちに伝えるべきジェンダー教育のメッセージとはどのようなものでしょうか。

 

男性でも女性でもLGBTQでも、性別だけではなくたとえ障害があったとしても、「あなたは何でもできる」ということです。

制限は一切なく、キャリアや趣味、目指したいものがあればそれに向かうあなたを全力で応援する、というメッセージを伝えることが何より大切ですね。

 

撮影/須藤敬一 ヘア・メーク/後藤若菜 取材・文/北川聖恵 編集/羽城麻子

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