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Interview

インタビュー

2021.12.12 UP

【中2で単身渡欧・25歳で起業】辻愛沙子さん「突破する力」の育て方

クリエイティブディレクターとして広告や商品開発に携わる一方、テレビなどのメディアで発信者としても活躍する辻愛沙子さん。次々と新しい挑戦を続ける辻さんの「突破力」の原点は、小6にして自らの意志で留学したいと決意したことでした。ご両親の関わり方、さらに上司との出会いを通し、今私たちがおかれている課題を乗り越えるヒントについて伺いました。

「突破する力」の育て方

「好き」に勝るものはない!
クリエイティブディレクター 辻 愛沙子さん

想像ができない世界を見るために
学校をやめて海外に行くと決めた

「あれこれ言わない」
両親の背中から、社会性と
ジェンダー観を学んだ

編集部(以下、編)小6で留学を決意し、中2で単身渡欧。とても10代前半とは思えない辻さんの行動力に驚かされました。ご両親から「自分でなんでもやるように」など、自立を促す教育を受けていたのでしょうか。

辻 愛沙子さん(以下、辻)思い返してみると、母からも父からも「これをやりなさい」と言われたことがほとんどありません。せいぜい「部屋を片付けなさい」くらい(笑)。あれこれ言われなかったおかげで、想像力が育ったのかもしれません。

 父は医師、母は自営業の共働き家庭で育ちました。母は仕事のかたわらアジアのある国に児童養護施設を作って孤児の支援活動もしています。常に他者の幸せを思いやる両親の背中を見て育ちました。

 私が小学校に入学したのをきっかけに、母が本格的に仕事をスタート。通っていたカトリック系の女子校には共働き家庭が少なかったのですが、両親はどちらも家事や育児に関わり、忙しい時にはお互いをサポートするという方針だったようです。今もとても仲が良い両親の在り方も、私のジェンダー観に影響していると思います。

 どんなきっかけで、留学をすると決めたのでしょうか。

 小学生の頃、カートゥーンネットワークで放送していた「パワーパフガールズ」というアメリカのアニメが好きで、将来はピクサーのアニメーターになりたかったんです。だから、英語は必要だろうとは漠然と考えていました。また、サマースクールや海外への家族旅行の経験から、単純に英語に興味もありました。でも、最終的に留学を決めたのは「想像ができないところに行ってみたい」という思いが強まったから。

 小6のある日、ふと「自分の周りには似たような家庭環境の子しかいない」と気づいたんです。私立小に通っていて地元の友達もいないので、偏った価値観で過ごしているような気がしてしまって。今の自分から最も遠いところに行ってみたいという思いが強まり、たどり着いたのが、多文化、多人種、多言語であるスイスのアメリカンスクールでした。もちろん、最初からそんなことまではわからないので、キッチンの奥にあった古いパソコンで「寮 ヨーロッパ 学校」って検索して。資料も集めてから、ようやく両親に打ち明けました。

派手な見た目に苦言。
でも「恥ずかしい」とは絶対に
言わなかった両親

 エスカレーター式の学校を退学しての留学に、ご両親からの反対はなかったのでしょうか。

 本気かどうかは聞かれましたね。でも「学校が嫌いだからやめるのではない。外の世界が見たい」と素直な気持ちを伝えたら、ちゃんと受け止めてくれました。大きく反対されるようなこともなかったので、このあたりのやりとりがすぐに思い出せないくらいなんです。

 ただ、周囲にはなかなか理解されませんでした。幼稚園から通っていた私立校だったので、親同士のつながりも強く、いろいろと噂されるようなこともあったようです。それでも両親は「愛沙子がやりたいことなら」と、世間体は気にせず応援してくれました。

 とはいえ、特に外見面において「この子、大丈夫なの?」と思わせてしまった瞬間も多かったと思います。もともと私は原宿カルチャーが好きで、ぱっつん姫カットで金髪にしていたことがあったんですよ。ピアスをたくさん開けて、厚底の靴も履いて。「三つ編みでごきげんよう」の世界から、派手になって帰ってきたわけです。

 あれこれ言わない母親でも思うところはあったようで、「ちょっと髪の色、派手すぎない?」「法事にその格好はどうなの?」とチクチク言われてケンカに発展したこともあります(笑)。それでも私がどんな外見をしていても、「世間に対して恥ずかしい」と言われたことは一回もありませんでした。

 仕事の相談をご両親にすることはありますか?

 具体的な相談は父にすることが多いですね。両親ともにメディアに出ているのをチェックして感想を伝えてくれることもあります。でも、基本的には我が道を爆走している私を見守りつつ、「体にだけは気をつけてね」という程度。

 学生ながらベンチャーに入ったり会社を始めたりと、心配なこともあったと思います。ようやくここ1、2年で、何をしてもまるごと受け止めてくれるようになった気がします。

全力疾走する私を見守ってくれた
両親と上司のおかげで今がある

マイクロマネジメントしない
上司に出会って、アイデアを
芽吹かせることができた

 辻さんは大学在学中に広告代理店で働き始めたんですよね。職場での経験で、現在の活動につながる転機になったような出来事はありますか?

 在学中からクリエイティブに関わる仕事がしたくて、ベンチャーの広告代理店に在学のまま就職しました。そこでの上司との出会いが、今の私の仕事の基礎になっています。

 私は「ネーミング案を出して」と言われると、100案持っていってしまうタイプ。この熱量は、どこへ行っても「まぁまぁそんな熱くならずに」と言われると自覚しています。そもそも足並みを揃えることを求められるのが組織、社会なんだろうなと薄々感じていた頃でした。でも上司は全速力で走り抜ける私を面白がってくれました。マイクロマネジメントせず、細かいところは「辻の中に答えがあるはずだから」と、無理やり前に引っ張っていこうとしない人。私はもともとひとりで深く考えることが好きで、これまで20年近く自分ひとりの世界に閉じこもっていたところがありました。でも上司のおかげで、アイデアを芽吹かせることができたのだと思います。

SNSでの評価に疲弊したら
目的のない「好き」を見つめ直して

 ご自身の会社の立ち上げ、SNSやニュース番組を通しての社会問題に対する提起など、現在も精力的に活動されています。辻さんの動きを注視している人も多いですが、今後はどんなことに挑戦してみたいですか?

 教育事業に関心があります。コロナ禍で大人の教育コンテンツが増えたような気がしますが、あくまで「資本主義の中で成功する」という視点な気がして。書店で平積みされているビジネス書を見ても、そう感じます。でも本来、人生とは上り詰めだけるだけではなく、深く耕していくことだと思うんです。

 私は学年1位の教科もあれば最下位の教科もあるという、成績にムラがある子どもでした。もし今お子さんが私のような成績なら、親御さんも学校側も戸惑ってしまうかもしれません。でも、一般的には落第生と言われる子でも、才能を発揮できることはあるはず。そのためにも、人生を耕せる学びを提供していきたいです。

 大人になってもSNSのいいね!やコメントに一喜一憂するなど、わざわざ評価されるような状況に身を置いて疲弊してしまうといったこともあると思います。

 確かに今の社会はバズるとか認知度を上げることを一つの指標としているところがありますよね。先ほどの耕す学びのように、大人にこそ今からでもいいので、他者の目は気にせずに好きだと思えることをぜひ見つけてもらいたいです。昔好きだった編み物などを目的なくやり切ってみると、その先にきっと見えてくるものがあるはず。

 最近、週末に陶芸を始めました。経営者としては数字を追う必要があるけれど、自分がただ美しいと思うもののアウトプットをしていかないと、私は生きていくことができない。

 これからはアーティスト活動にも力を入れていきたいです。

現在25歳!辻さんの歩み

a. 厳格な校風の私立校に通っていたが「礼儀作法が身についたのは学校のおかげかも」。b. d. 留学時代の友人と。ファッションを自由に楽しめるようになったのもこの頃。c. 社会派クリエイティブディレクターとして、制作物やニュースのコメントで日々メッセージを発信中。2021年5月には大人の学び場がテーマのコミュニティ「Social Coffee House」を発足した。

History

・1995 ・
二人姉妹の次女として東京都に生まれる。大学付属の私立女子校の幼稚園に入園。小学校に進学

・2007・
「知らない世界を見てみたい」と、小6で留学を決意。PCで資料を集め、親を説得

・2009・
単身渡欧。英国の語学学校、スイスの全寮制アメリカンスクールを経て、米国の高校に進学

・2014・
帰国し、慶應義塾大学環境情報学部に入学。将来は広告代理店で働きたいと考え始める

・ 2017・
インターン先の広告代理店に、「学生正社員」として採用され、商品企画や広告制作などを手がける

・2021・
前職のグループ会社として2019年に創業した「arca」を完全独立

Profile

クリエイティブディレクター
辻 愛沙子さん

1995年11月24日生まれ。慶應義塾大学在学中から広告代理店で働き始め、「ナイトプール」のアートディレクションやスイーツの開発、プロデュースで注目を浴びる。2019年には女性のエンパワーメントやヘルスケアを促す「Ladyknows」プロジェクトを発足するなど、社会問題にも関心が高い。

 

撮影/五十嵐 洋(複写) 取材・文/樋口可奈子 編集/羽城麻子

VERY NAVY12月号『クリエイティブディレクター 辻 愛沙子さん「突破する力」の育て方』より。詳しくは2021年11/6発売VERY NAVY12月号に掲載しています。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。

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