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Education

教育

2020.05.28 UP

おおたとしまささんと考える「休校中の今、受験生の親に必要なことは?」

Kさん

<家族構成>
夫、長男(中3)、長女(小6)

<今回相談する子どもの状況>
長女 小3の夏期講習から早稲田アカデミーに通塾

小6と中3の子どもがおり、中学校と高校、ダブル受験になります。しかし、学校も未だ再開されず、今は塾のオンライン授業のみです。受験の頃、世の中はどうなっているのか、後れをとっていないか本当に心配です。中学受験する長女は割としっかりしていてコツコツ計画立ててやるタイプですが、模試なども受けられないので今偏差値がどれくらいなのかもわからず……。新型コロナウイルスの影響で、果たして中学受験がどうなるのか、親はどう子どもを支えればいいのか不安に思っています。

おおた:今は世の中の中学受験親子が五里霧中状態。そもそも普通に中学入試が実施できるかもわからないですけれど、これ、誰もわからないよねっていう……。もちろん私にもわかりません。受験生の親御さんがどのあたりに不安を感じているのか聞かせてもらって、一緒に考えていけたらと思います。

 

K:塾ではZoomで授業が始まっていて、割と早く対応していただけたなとは思っています。娘は割とコツコツやるタイプなので、こんな状況でも一生懸命やってはいるんですけど、いかんせん模試が飛んでしまって、偏差値がわかりません。学力がどこまで上がってきてるのか、あとどのくらいやれば志望校に届くのかわからないのが不安ですね。

 

おおた:早稲アカは大手の中ではいち早くZoomに移行しました。Zoomが絶対的にいいのかはわからないけど、親の不安を解消するという意味ではよかったと思います。サピックスもGW明けからZoomをやってますけど、じゃあ家庭教師にニーズが流れているのかなと思ったら、家庭教師もそんなにニーズが高まっていないらしいんですよ。その理由のひとつは、家庭教師であっても今は結局zoomになっちゃうから。もうひとつは、模試を受けてなくて課題認識ができてないから、危機感もないんだろうって。模試については、今後は自宅受験という連絡はきてますよね?

 

K:はい、きてます。

 

おおた:ちなみにお兄ちゃんは中学受験したんですか?

 

K:しました。でも、自分が望んでいた学校から合格をもらえず、結局は公立に行って。大学付属を狙って高校受験でもう一度トライしようと。だから今年はダブル受験なんです。

 

おおた:この状況でダブル受験はしびれますね。高校受験も、内申書がどうなるかとか、わからないことだらけですものね。

 

K:はい。実はお兄ちゃんのほうが心配だったりして(笑)。

 

おおた:身も蓋もないことですが、この状況では、もともとできる子が順当に学力を伸ばしていくでしょうね。親の力を借りなくても自分で考えて勉強を進められる子がこの状況では当然強いよねって。次に、親がすごく関わることによってなんとか学力をキープしていた子も、それを続ければそれなりに学力をキープできるとは思うんだけど、有り余る時間が子どもの限度を超えて裏目に出るケースもあるだろうなって。どういうことかというと、この状況になって僕が一番心配だったのが、教育虐待が増えているんじゃないかってこと。逃げ場がないじゃないですか。かろうじて学校にいくことが息抜きになっていたのが、今はないわけだから、どうしているんだろうって……。あとは親の言うことを聞かない子や、そもそも親自身に子どもの勉強を見る余裕もないっていう家庭の子どもは、自分で勉強することもできなくて学力を上げられない。要するに、二極化っていうのが中学受験においても起こるだろうなと予測できますよね。

 

K:うちも上のお兄ちゃんのときにこの状況だったらもっと焦っていたと思います。なかなか自発的にできない子だったので。

 

おおた:模試もまともに行えていないわけですから、偏差値表も本当にあてにならなくなる。中学入試が終わったあとに、結果として偏差値に大波乱があるだろうなとは思います。学力の幅も広がるし、中学受験に向かうスタンスもすごく開く、特異な中学受験になるだろうな。だからこそ、「みんながこうしているからこう」じゃなくて、「うちの中学受験はこう」っていう方針を持っていないと、どんな結果になってもずっと不満が残っちゃうと思う。「コロナがあったから受からなかった……」じゃなくて、「コロナがあったからこそこの出会いがあったよね」とか、「あの不安な中でよくやりきったよね」とか、ポジティブな面に焦点を当てることができるかどうかが重要かな。9月入学なんていう話もあるし、そしたら中学入試も来年の6月、7月になるかもしれません。それを歓迎する親子もいるだろうし、早く2月に終わらせたいという家庭もあるだろうし。

 

K:早くからアクセルを踏み込みすぎたら、ガス欠になっちゃいますよね。

 

おおた:精神的にもそんな緊張状態が続くのは耐えられないだろうし、経済的にも離脱者は出るだろうしね。本当に親の人間力が試されますよね。

 

K:ドキッ!

 

おおた:Kさんは大丈夫。それだけ笑えてたら大丈夫ですよ。

「中学受験は親が9割」みたいところに意識が向きがちだけど、この状況では、家庭の中の安心感が最大の武器になる。

K:6年生になってから文化祭なり体育祭なりを覗いてみようと思ってたんですけど、その矢先のこれなので、もしかしたら何も見ない中で受けるのかってなると、そこもちょっと不安ですね。実際に学校を見てみないと、子どものモチベーションも上がりにくいですよね。

 

おおた:何のために勉強しているのか、実感が掴みづらいでしょうね。ゴールも競走相手も見えない中で独りでペースを保ってマラソンするなんて大人でも精神的にしんどいことなので、この状況で11歳や12歳の子が勉強に集中できなくても責められないですよ。少しでも勉強してたら偉いって褒めてあげてほしい。ちなみに、これまでって、自宅でお子さんの勉強をどのくらい見ていたんですか?

 

K:うちは本当に見てなくて。それこそ私が2月に外資系企業を退社したんですけど、毎日帰宅が11時とかだったので、塾に任せきりだったんですよね。塾がない日も自習室に行かせていて、とにかく人目のある場所にっていう感じではやってきたんですけど、家ではまったく見られていなかったです。親子関係が悪くなることがあるから、こちらに全面的に任せてくださいって、早稲アカの先生からは言われていたので、ノータッチです。

 

おおた:そこで覚悟を決められることが偉いと思う。親が頑張ればもしかしたらもう少し偏差値が上げられるかもしれないけど、そこを欲張ってもしょうがないよって。

 

K:そうですよね、親子の関係のほうが大事なので。ただし、「わからない問題があるなら、次に塾に行ったときに先生に聞きなさい」って今の状況ではできないので、困ったときにはお兄ちゃんに助けてもらいます(笑)。

 

おおた:それは頼もしいですね。塾で十分な指導が受けられない状況では、当然の発想として、親が少し頑張らなきゃいけないのかなってなるじゃないですか。これも、ポジティブに出るのかネガティブに出るのかってわからない。最初はにわか家庭教師的に自分で頑張ってみようって思っても、親子の距離感だと絶対にカチンとくるはずなんです。子どもも、赤の他人の先生ならそれなりにわきまえてやるけど、相手が親だと甘えから、投げやりな態度をとってみたり、ふてくされてみたり。そうなるとただでさえ時間がない中で見てる親のほうも気持ちに余裕がなくなって、「そんな態度しかできないなら、中学受験やめなさい!」ってなったり。いまそこら中で起きていると思います。

 

K:学校に行って部活をやって塾に行ってというパンパンな生活からは今解放されているので、うちの中は今、割と穏やかに家族のコミュニケーションをとれていて、すごく充実していて、大変な世の中ではありますが、その状況に関してだけ言えば私はむしろ幸せを感じているんですよね。

 

おおた:それは素晴らしい! この状況で全てが満たされていることってありえないと思うんですけど、でも家の中が穏やかだとか、コミュニケーションがあるっていう良い部分に目を向けていて、お母さん自身が幸せを感じているなら、それが一番だと思う。よく、コップの中に水が入っていて、半分も入っていると思うか、半分しか入ってないと思うかというたとえ話がありますよね。ポジティブな部分に意識を向けていると、そこが増えてくる。でも、「十分に勉強ができてない」とか不足や不満に目を向けるとそっちが増えてくるから、子どもはますます勉強しなくなる。親がどこに意識を向けているかって、すごく子どもの無意識の行動に影響します。お母さんがポジティブな部分に目を向けていられるってすごくプラス材料だと思う。

 

K:(笑)

 

おおた:カリスマ塾講師でも何でもないので、こんなときにどんな勉強をしたらいいのかとか、テクニカルなことはさっぱりわかりません。僕が僕の立場から唯一アドバイスできるとしたら、「いま、親が一番にやらなきゃいけないことは、子どもに安心感を与えることですよ」ってこと。

 

K:わかります!

 

おおた:普段の中学受験ならどれだけ親が勉強を見てあげるのか、教えてあげるかっていう、それこそ「中学受験は親が9割」みたいところに意識が向きがちだけど、この状況では、家庭の中の安心感が最大の武器になる。普段から勉強を見ていて関係性ができていて、親も中学受験生の親として素質のいい人、センスがある人ってたまにいる。そういうひとは今まで通り子どもと二人三脚すればいい。それがその親子のスタイルだから。でもそうじゃないという自覚があるのなら、むしろKさんくらいのんびりしているほうが正解なんじゃないかな。

 

K:そうですか!?

 

おおた:もしかしたら学力向上という意味では不完全燃焼の中での中学入試になってしまったとしても、置かれたところで咲きなさいじゃないけど、「この状況でよくやったよね」って言えたもん勝ちだと思うので。僕の中学受験観の中ではね。

 

K:地域的にもまわりに中学受験をするご家庭が少ないから、余計な情報が耳に入ってこないのが、この状況ではむしろいいのかもしれませんね。

 

おおた:これで仮に100%の望み通りの結果が出なかった時に、「コロナがあったから」って一生言い続けるんですかって話で。さらに、読者向けに釘をさす意味で言っておくのであれば、「この状況で頑張れなかったあなたが悪いのよ」っていう無茶を子どもに押し付けちゃいけないよね。すごく傷つくから。「こんな状態でも受かった子は、学校休みで塾にいけなくても一人で頑張れた子なのよ」なんて言われたら、子どもは何年も立ち直れないと思う。それはやめてほしい。この状況で勉強できないのが普通だから。あとは、これもいつも言っていることだけど、別に学校が人生を決めるわけじゃないので。この状況での出会い、縁をポジティブに捉えられるように。人生ってみんながいろんなタイミングでいろんなことに巻き込まれて、あの時あれがなければなっていうことってたくさんあるじゃないですか。それをどう乗り越えたのかってことが後で振り返れば人生の彩りになるわけで。「この状況ってみんな一緒だから、自分たちにとって意味あるものにしようね」って、12歳にはちょっと早いんだけど、そういうことを親子で話す時間にしてもらえたらいいんじゃないかと思います。

 

K:もう運命かなって。今年受験生なのって……。コップの話もそうだし、これから先の人生もどこを見てどう感じるかって、自分次第なので。くれぐれも無理はさせたくないなっていうのと、条件はみんな同じだから、自分たちがどれだけ納得した形で頑張れるかっていうことなのかなって思いました。

【おおたさんからひとこと】

このお母さんなら大丈夫。外資系企業で揉まれた経験と、お兄ちゃんの中学受験で苦渋の決断をしてそれを今前向きにとらえられているという自信が、親としてのぶれない軸を形成しているのだと思います。先行き不透明な状況は続くでしょうが、ネガティブな部分を憂うのではなく、ポジティブな部分に意識を向けることが大事だと思います。

Profile

おおたとしまさ

教育ジャーナリスト。1973年東京都生まれ。東京外国語大学中退、上智大学英語学科卒。リクルートから独立後、育児・教育分野で活躍。執筆・講演活動を行う。
著書は『中学受験「必笑法」』(中公新書 ラクレ)など60冊以上。
http://toshimasaota.jp/

イラスト/Jody Asano コーディネート/宇野安紀子 編集/羽城麻子 

 

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