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Education

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2021.08.14 UP

「自立目線の女子校と学歴の関係が気になります」
受験進路相談

【今月の質問】

自立目線の女子校と
学歴の関係が気になります

[受験進路相談室]

Kさんの場合

 

【家族構成】
夫、長男(中学1年)、長女(小5)
【今回相談する子どもの状況】

小3から早稲田アカデミーに。現在は野球とピアノの習い事も

 

娘は兄の影響で、野球を頑張っています。区のチームにも所属しています。男子の中に女子一人でも、野球が好きだから平気らしいのですが、塾との両立に苦戦しております。また、息子は今年2月に本人も希望する中学に合格し、楽しく通学しています。しかし、入学を決めた後、お友達から、「お前の行く学校は滑り止めでも受けないわ」「偏差値いくつ?」と言われたり、夫は、大人同士の会話で「大学考えたら微妙ですね」と言われたそうです。余計なお世話ですよね。でも、夫も「学歴社会はなくならない」と子どもたちに教えています。
私は、おおたさんの本を読んでいて、その子に合っている学校を見つけることが大切だと信じていますし、中高の6年間を安心して過ごせる場所があることは幸せなことだと思うので、娘にも受験はさせたい。でも、一方で、学歴はやっぱり高いほうがいいのだろうか?どこまで頑張らせるべきか?については悩んでいます。

大事なのは娘さんがイキイキしているかどうかですよね。

K(相談者):上の子は、中学受験が終わって友人から「俺の友達、その中学に受かったけど偏差値低いから行かないらしいよ、公立中にしたって」と言われたようです。夫も会社で同様のことを言われたと。夫自身も「やっぱり学歴は必要」ってはっきり言います。そう言われると、私がもっと頑張って、偏差値が1つでも高い学校に入れたほうが良かったのかなって、不安になります。下の子はどうしようって。

オ(おおたさん):僕も学歴社会はなくならないと思います。「学歴で生きている人たちの世界」はなくならない。「そういう世界」しか知らない人たちが無理して学歴と関係ない社会で生きていく必要はないですけど、それだけが社会だと思うのは間違い。そうじゃない世界も必ずあるんです。要は家猫みたいなことですよね。外の世界には怖くて行けない。野良猫の生き方を知らない。

K:自分の子どもにそうなってほしくないと思ったら、学歴社会じゃないところで生きていくことも教えたいですよね。

オ:ここだけが世界だって思わせなければいいんです。「学歴がないと生きていけないよ」と脅して追い込んじゃえば、文字通りの死に物狂いなわけですからパフォーマンスは上がるかもしれないけど、それが幸せかどうかはわかりません。そもそも「勉強やりなさい」ってお尻を叩けば偏差値は上がるのかって問題もありますけど。

K:なかなか頑固な息子で、去年もコロナ禍で向き合うことがたくさんあって、私が折れちゃったというか。この子の意思は変えられないと思って。意思を尊重しながら、我慢もしながらやってたんですけど、娘はそこまでの意思がなくて、あれもやりたいこれもやりたいっていう感じで、そんなの全部はできるわけないじゃないっていう状況で。

オ:一旦は息子さんと向き合って、子どもと尊重する中学受験ができたわけじゃないですか。一方で、息子さんの時に持っていた信念が揺らいでいるのだとしたら、揺るがしているのは何なんでしょうか?

K:女の子だからどうしようとかっていう考えも入ってきちゃうところもあって。娘は男の子の中で野球をやっているので、なかなか根性もあるんですけど、今、早稲アカに通っていて、両立はちょっと無理かなって。息子の時は野球も受験も頑張りなさいって言ってたんですけど、娘にはそこまで思えなくて。それで、私自身女性の生き方に偏見があるんじゃないかって悩んでしまったり。自分がそういうふうに思ってしまう部分があるので、そうじゃない学校に入れたいとも思ったり。

オ:たしかにお母さんの中のジェンダー意識の影響もあるかもしれません。でも大事なのは娘さんがイキイキしているかどうかですよね。テストで点数を取るのが得意で、学歴で生きていくんだっていうのは一つの生き方だけど、それがその子に合っているかどうかですよね。

K:うちの子に関してはそっちじゃないしなって。

オ:男の子に交じって物怖じせずに野球を楽しめるなんて、すごく個性的に育っているじゃないですか。それをいかに潰さないかですよね。

K:そうなんですけど、夫と意見が合わなくて。私はそこまで頑張ってるんだったら野球頑張ればって思うけど、夫は「テストの点数が悪かったら野球行かせないぞ」って言うんです。長いスパンで考えたら、私立に入るほうがいいから言ってるんでしょうけど、私は今やっていることを大切にしたいと思っていて。そこがなかなか……。

子どもが目を輝かした瞬間を見逃さないこと。で、「今、いい目してたね」って言うだけ。

オ:お母さん自身がお父さんとの関係の中で板挟みになってるのかな。

K:気持ちは板挟みなんですけど、態度は子どもに寄り添ってますね。でも、それがいいのかどうかっていうのはわからないから。

オ:そんなこと言わないでしょうけど、「お前が責任取れるのか」って言われたら、ねぇ。

K:そうなんですよね。子どもを育てていて、赤ちゃんの時に「この子ってこういう子だな」って思ったことって変わらないんだなって。だから多分これでいいんじゃないかっていう勘はある。娘の個性を活かして一生続けられる仕事を見つけてほしいと思っていて、そのために中高でできる友達ってすごく大事なんじゃないかなって思っていて、それもあって私立に行ってほしいっていうのもあって。

オ:個性や特技でメシが食えるのかって批判が昔からあるんですけど、それって「独りで生きていく」発想なんですよね。どういうことかというと、たとえば私は絵が好きだと。でも、昔の親御さんが言ったのは「そんなの筆一本で食べていけるわけないでしょ」って。それは絵の技術だけで生きていこうとすることですよね。画家とか。でも、これからは絵が上手な人とITの得意な人が組んだら、何かイノベーションが生まれるかもしれないし、農業や林業、医療と組むかもしれない。自分にしかできないことがあることによって、どこかのチームに加わることができる。“自分が持っていない才能を持っている人とチームになる力”って僕は言うんですけど。そう考えると、ニッチでもいいから人にはない能力を持っていることが大事。つまりスペシャリストになっていく必要がある。

K:夢とかも学校で書かされるけど、書くことがないって。私もなかったので。それなのに、子どもには夢を持ってほしいって思っちゃうんですよね。

オ:子どもが夢を語ってくれたら親は一安心ですから。でも、まだお兄ちゃんだって中1でしょ?

K:じゃあ、何かのスペシャリストになってほしいと思った時に、親がすべきことって何なんですか?

オ:子どもが目を輝かした瞬間を見逃さないこと。で、「今、いい目してたね」って言うだけ。

K:息子は割と個性的で、サンタさんに昔頼んだものが宝石だったんです。私が母から譲り受けた宝石が入っているのをリフォーム屋さんに持っていったら、そんなこと言う子はいないから協力してあげるって言われて、売り物にならないような物までくれたんですよ。だから息子はいいんですけど、娘がわからない。あれもやりたいこれもやりたいって言って、いろんなところに目が輝いていてよくわからない。

オ:どちらのお子さんもそれぞれに素晴らしいじゃないですか。

K:もう中学受験はやめて、高校受験にしたら?って言ったんですけど、勝ち負けが好きなので受験はやりたい。でも、結果が出なくて泣いたりしてるんですけど。

オ:それはいいことですよね。あれもこれもやりたいって言って結果は中途半端だとしても、目が輝いているならどれも必要なことだから。

K:結果が中途半端っていうのが良くないかなって思うんですけど、それで輝いていればいいんですね。

オ:はい。結果が中途半端でも、目が輝いているなら、それもその子にとって必要な経験だということです。どれもやりきったって思った時に、「じゃあ、勉強するわ」ってなるかもしれないし、もしかしたら「徹底的に野球やるわ」ってなるかもしれない。

K:私は、それはそれでいいと思います。

オ:お母さんはそこでそう思えるじゃないですか。普通はなかなかいないですよ。「いやいやいや」って中学受験に戻そうとしちゃう。でも、お母さんにはしっかりした軸があるから、息子さんもお嬢さんも軸を持ってる。お嬢さんは結果を出したいっていう競争心も強いですから、「あれもやった。これもやった。満足したぞ! ここから先はこっちに集中するぞ!」ってなった時に、めちゃくちゃ力を発揮すると思う。

K:実際は、私自身は本当にブレブレで……。

オ:でも、それはしなやかなブレだから。なかなか世の中の教育ママが持てないような大らかさを持っているから。そういう余裕がある人だったら、十分に耐えられる振れ幅だと思います。でも、これだけ話して申し訳ないなと思っているのが、旦那さんを説得する方法を提案できなかったっていう。

K:結婚してわかったんですけど、この人を論破するのは無理だなって。だから喧嘩はしないんです。ひたすら黙るっていう作戦。でも、子どもが抵抗しているのを見ると、あぁどうしようって。自分のことなら適当に無視しておけばいいんですけど、子どもが苦しんでいるのがわかると、どうかなって。

オ:両親の考え方の違いは、子どもが育つ「奥行き」になります。逆にお父さんとお母さんが完全一致してたら怖いですよ。子どもも同じ価値観しか持てないからコピーロボットになっちゃう。お父さんはこう言ってる、お母さんはこう言ってる、その矛盾の中で自分なりの答えをその都度考えていくことが人生なんだから。そこは夫婦で一致する必要なんてなくて。

K:よく、中学受験で夫婦の意見が揃ってないと失敗するって見るんですけど。あぁ、それならうちは無理だって。

オ:いい点数を取ろうとか第一志望に受かるっていうことで言えば、意見を統一して「これしか道がない」ってやったほうが効率的ですよ。「幅」があるとぐらぐらして最短距離ではなくなるわけだから。でも、「幅」こそ人生の豊かさになるので。意見が違うことで喧嘩したりして、子どもが傷つくような事態は避けたほうがいいですけど。

K:そこではちょっと自信が出ました。私は地方で育ちましたけど、地方に住んでいると選択肢がないですから。それに比べると選択肢が多すぎて、選べるところにいると、選びたくなるんですよね。考えて選んでっていうことを繰り返すのってこんなに疲れるんだって。

オ:それが自由っていうことですからね。

【 おおたさんからひとこと 】

しっかりとした教育観を持っているお母さんですが、夫との価値観も尊重しなきゃいけないと思うからこそ不安になっている様子でした。ただ、意見が違った時に黙っている作戦というのは長期的に見ると危険です。夫も「ちゃんと伝わっているのかな?」と不安になるので、余計に強い表現で自分の考えを述べるようになり、ますます溝が広がってしまう可能性がありますから。夫婦の意見を揃える必要はないのですが、「相互理解」ができる夫婦になるといいのになと思いました。「相互理解」とは、相手の考えに合わせるとかお互いに妥協するとかいう意味ではありません。たとえ意見が違っても、相手の考えを自分の考えと同等に大事なものだと尊重するだけでいいんです。お互いに相手の意見をちゃんと聞いて、相手の意見そのものに同意はしなくても、相手の理路を理解さえすればいいんです。

Profile

おおたとしまさ

教育ジャーナリスト。1973年東京都生まれ。東京外国語大学中退、上智大学英語学科卒。リクルートから独立後、育児・教育分野で活躍。執筆・講演活動を行う。
著書は『中学受験生に伝えたい 勉強よりも大切な100の言葉』(小学館)など60冊以上。
http://toshimasaota.jp/

イラスト/Jody Asano コーディネート/宇野安紀子 編集/羽城麻子

 

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