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【中学受験】は通過点!実際に『受験してよかった学校』とは?

『中学受験生を見守る最強メンタル!』というタイトルで書籍化された、話題の連載・おおたとしまささんの『悩めるママのための、受験進路相談室』。約5年間、中学受験に悩むママの相談を取り上げてきたこの連載もついに最終回。今なお過熱している中学受験ですが、ともに受験勉強に取り組むことで、親子の関係を見直し、成長に繫げるチャンスでもあります。おおたさんの愛あるアドバイスで受験を乗り越えた親子を改めて取材しました。

「中学受験は単なる通過点」
性格も成績も違う姉妹の受験から学んだ、
中学受験をする意味

編集部:Tさんには、連載開始当初の2020年にご登場いただきました。長女と次女の学力差や性格の違いから、学校選びに悩んでいるというお話でした。おおたさんとお話しされたことで、学校選びの参考になったようなことはありましたか?

 

Tさん(相談者):どの学校に見学に行っても、「ここもいいね」というような主体性のない次女を心配していたのですが、おおたさんの「それはどこの学校に行っても大丈夫な子だということ」という一言で、気が楽になりました。「子どもってそういうものかも」と思えたんです。次女の希望をよく聞いてみると、ミッション系で、校則が厳しくてもいいからルールがきちんと決まっている学校がいいとのことでした。そこで、おおたさんとの相談に出てきた、「パンフレットにも書いていないような、学校の軸があるところ。一言で言うと伝統校がいいのではないか」というアドバイスが思い浮かびました。最終的にはミッション系でないところも含めて受験しましたが、全て伝統校と言われるところにして、今はそのうちの一つの学校に通っています。第一志望は残念な結果になりましたが、今の学校はとても居心地が良いようで、時に先生に対しての文句を友達と言いつつも楽しく通っています。進学実績には全く固執せず、偏差値よりも、彼女の希望重視で学校を探したことが結果として良かったと思います。

 

:ちょうどコロナ禍に突入した時期の受験でしたね。ICT教育に力を入れている、新興校に注目が集まっていましたが、親としてそちらに心惹かれるようなことはなかったのでしょうか。

 

T:むしろ、伝統校の「どんな時にもぶれない」という姿勢に安心感を覚えました。正直、長女とは見ている偏差値帯が全く違いましたが、偏差値50以下でも素晴らしい学校はたくさんあることを実感しました。ある学校の見学で、「算数を嫌いにならないような子にしたい」と言われて、ハッとしたんです。難関進学校のように「教科書はこれを使っています」みたいな話は全然しないのですが、次女に合っているのはしっかりと見守ってくれる学校だと確信しました。

 

オ(おおたさん):「変化の激しい時代だから、新興校を選ぶべき」というのは理屈が通っていないですよね。伝統校の価値はネームバリューではなく、その時代にあった適切な変化をしながら生き抜いてきた学校であるということだから。船に例えるなら、立派な航海の技術を持っているということ。6年間通うことで、そうした佇まいのようなものを子ども自身がまとうことができるというのも、伝統校を選ぶ意味の一つだと思います。

 

:受験から4年。今ならあの頃の自分にどんな声をかけてあげたいですか?

 

T:「中学受験なんて、単なる通過点だよ」と言いたいです。次女は真面目な性格で、自ら机に向かうものの一向に成績が上がらず、算数は何度やっても忘れるような子でした。それに、びっくりするくらい理科が苦手だったんです。第一志望の過去問で60点中10点を取ったこともありました。今思えば、かなり相性が悪かったです。大問1と2さえ取れていればとか、正答率が7割の問題を間違わなければと思いましたし、本人に指摘してしまったこともあります。でも子どもって機械じゃないんですよね。7割の子ができていても、その子ができるわけじゃないんです。むしろ中学受験の意味は、勉強以外で得るもののほうが多い点にあると思います。次女は今学校の課外活動の影響で、ボランティアに興味を持っています。英語が得意なので、それを活かして国内で困っている難民の人を支援してみたいと。次女のもともと持っていたいいところを、学校が伸ばしてくれたように感じます。

 

:Tさんがおっしゃる通りです。持っているもの以上を手に入れるために、それ以上の負荷をかけることは、子どもの人生にとって必要ではないと思います。いわゆる中学受験における学力が仮に人より低かったとしても、それで何も問題はありません。「この子はこうなんだから」と受け止めて、その中で水が合いそうな学校はどこなのかを考えればいいだけです。

 

T:附属の中高一貫に通っていた長女はもう大学生なのですが、先日、ちょうど同じ時期に受験した、附属ではない学校に通っている親御さんと話す機会があったんです。そうしたら、中学受験で第一志望に合格しなかったお子さんのほうが、大学受験でいい結果を残しているということがわかって。中学受験の結果なんて、本当に長い人生の過程の、ほんの一部なんだと改めて思いました。

 

:2回も中学受験を経験したからこそ、見えてくる視点かもしれませんね。お子さんが充実した学校生活を送れているようで、何よりです。これから大学受験も控えているかと思いますが、残りの学校生活も存分に楽しんでもらいたいです。

Profile

おおたとしまさ

教育ジャーナリスト。1973年東京都生まれ。東京外国語大学中退、上智大学英語学科卒。リクルートから独立後、育児・教育分野で活躍。執筆・講演活動を行う。著書は『なぜ中学受験するのか?』(光文社新書)など80冊以上。http://toshimasaota.jp/

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イラスト/Jody Asano 取材・文/樋口可奈子 編集/水澤 薫

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