今どき韓国ママたちが“海外進出”を目指す理由【グローバルエリートの育て方】
「子どもを海外で通用する人材に育てたい」という考えが一般的になってきた今日この頃、おとなり韓国では一歩進んでいるようで…。マレーシアへ教育移住中のエディター、マーサがK-MOMの教育事情をリポート。第3回は海外進出ママたちの事情に迫ります。
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韓国ドラマはマレーシアでも大人気。Netflixマレーシアのドラマランキングでも必ず韓国ドラマはランクインしています。「私が韓国人だって言うとみんなドラマの話をしてくるのよ。よっぽどみんなのほうが詳しいけどね」と笑うK-MOMフレンド、ジヨンに「『SKYキャッスル』は?あれどれくらいリアルなの?」と聞いてみました。すると「あのドラマはリアルすぎて見ていられない!怖すぎる」。マジですか。あれがリアルすぎって、どんだけ…。
リアルはもっと怖かった!?
さらにジヨンに教えてもらったこのフレーズ。「母の情報力、祖父の経済力、父の無関心」これは韓国の受験事情を表しているそうで、日本の「母親の狂気と父親の経済力」(by『二月の勝者』黒木先生)と照らし合わせると、なかなかの味わい深さです。なかでも気になる「母の情報力」。中学受験も高校受験も一般的でない韓国では、大学受験が人生を賭ける大勝負であり、母たちにとっては子育ての可否が明らかになる最終決戦。小さい時から、塾の評判、習い事の良し悪し、課外活動の選別など、母たちの情報力の手腕を問われつづけるのですから、子どもはもちろん、ママへのプレッシャーも半端じゃないでしょう。
彼女たちが海外に出た理由
そんなハイプレッシャーな学歴社会に対して、マレーシアで会う韓国ママたちは「韓国の受験戦争は異常」と口をそろえます。では、彼女たちはなぜ海外を選んだのでしょうか。まずひとつに「英語ができると有利」。英語ができれば大学入試はもちろん就職にもメリットあり。ただこれは理由としては弱め。次に「海外の大学に進学させたい」。韓国式の受験スタイルを回避し、アメリカやイギリスをはじめとする海外大学進学を視野に入れるというパターン。その場合、マレーシアなどのアジアの国をステップに高校は現地へという選択肢を取る人も。そして「子ども時代をのびのびと過ごさせたい。さらにグローバルな経験や多様な価値観を持ってほしい。進学は子ども次第」という子ども目線ドリブン。もちろん、理由はひとつではなくハイブリッドだったり、状況によって変化したりしますが、私の周りの韓国ママたちは圧倒的に3番目の「のびのび&多様な価値観重視派」。
「自分がやったような競争を経験させたくない」「英語だけなら国内でもなんとかなる。それより外国で視野を広げてほしい」「画一的な教育じゃなくて、個性を伸ばしてほしい」
韓国ママと会話をしているとこんな言葉が次々と出てきます。経済・社会への不安や不満、教育制度への疑問そして少子化など、共通する問題を抱える日本と韓国。だからこそ韓国ママたちの生の声は響くし、彼女たちの行動は気になる。何よりすごいのは、その腹のくくり方。「何年かしたら帰国も全然あり」が日本人ママの大半であるのに対し、韓国ママは「帰国は最終手段」とばかりに国外での活路をあれこれと模索します。それほど韓国の競争社会はシビア、という見方もできますが、母としてはその強さと覚悟にリスペクトせずにはいられないのです。
高校進学が成績と内申書で決まるので結果、中高は常に勉強ということに…
いまや、日本ではどの受験よりも過熱気味の中学受験。塾に通い、日夜勉強に励む姿は韓国の小学生と似ていますが、韓国ママに「中学受験」と言っても「なんのこと?」みたいな顔をされます。韓国は公立の中学・高校へ進むことが一般的で、私立はごくごくわずか。高校は「特殊目的学校」と言われる科学や外国語、芸術などのエリート校をはじめ、中学の成績・内申で決まります。結果的に受験はないのに中学高校もずっと勉強という学生生活に。数年間海外に居住すると国際学校に入れる資格を得られるので、それ狙いの母子留学組もいます。
今月の1枚
マレーシアは多民族国家なので、祝い事も多彩。最近ではディパバリというヒンドゥー教のお祭りがあり、街中がコーラムと言われる、お米でできたカラフルな飾りに溢れます。モールやお店ごとに個性があって、どれも繊細で美しく、街を歩くのが楽しい時期です。(取材当時)
Profile

マーサ斉藤 MARTHA SAITO
元雑誌編集者。中学受験から逃げるように息子とマレーシアへ移住。最近はK-MOMたちに触発されduolingoで韓国語を勉強中。教育系メディアfindits(findit-s.com)にも参加。
イラスト/香川尚子 取材・文/マーサ斉藤 編集/水澤 薫
*VERY NAVY 12月号「連載 子どもの頃から海外進出も視野に!?K-MOM流 グローバルエリートの育て方」より抜粋。詳しくは2024年11/7(木)発売VERY NaVY 12月号に掲載しています。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。