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専門家が語る中学受験、自立目線で選ぶ「女子校選び」

「自立した女性になってほしい」と我が子に思うのは、親の共通の願い。家庭環境だけでなく、大切な思春期を過ごす学校が及ぼす影響は大きいはず。御三家をはじめとする難関校は「自主・自立」の精神で知られていますが、中間層の女子校はどうなのでしょうか。中学受験と私立校を知り尽くすお二人に聞きました。

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【お話を聞いたのは…】

安浪京子先生

中学受験カウンセラー
中学受験算数のプロ家庭教師として、数年先まで予約が入るほどの人気と実績を誇る。中学受験に関するセミナーや著書も多数で、中学受験カウンセラーとしても活躍。通称「きょうこ先生」。

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矢野耕平先生

中学受験指導スタジオキャンパス代表
大手塾に十数年勤めた後、中学受験専門塾スタジオキャンパスを設立。著書『旧名門校vs.新名門校』『早慶MARCHに入れる中学・高校』など、学校への取材経験も豊富。

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高度経済成長とともに増えた良妻賢母系の女子校は時代のニーズとともに減少傾向にあります

 

良妻賢母系の女子校は
もう流行らない!?

   VERY世代が中学受験をしていた時代は、良妻賢母を謳う女子校が目立った気がするのですが、最近の女子校の流れはどうですか?

矢野(以下、良妻賢母系の女子校を探すのが難しいほど、学校が変わってきたというか、変わらざるをえないんですよね。変化しない学校はどうしても人気が落ちてきてしまうので。

安浪(以下、時代の流れにうまく乗れずに、定員割れを起こしている女子校はありますね。

 男女は同質ではないけど平等であるという価値観が浸透し始めて、中学受験を選択する親はそういった時代の雰囲気に敏感なのではないでしょうか。だから今更、良妻賢母と言われても「え?」みたいなね。面接で受験生に「あなたは結婚して安泰派? それとも社会に出てバリバリやりたい派?」なんて聞く学校もあるくらいですから。

 校長が自立を掲げて頑張っていても、現場の先生がついていけてない学校もあるので、難しいんですけどね。

 女子校の設立は明治時代の女性解放運動とそもそも連動していて、御三家の桜蔭や女子学院はまさにその流れでできた学校。女子校は女性の自立を掲げて創設されたところが多いのです。

 それが高度経済成長期に男性と女性に役割を作って、良妻賢母を求めたんですよね。だから良妻賢母系の女子校は時代の流れでもあったんです。

 女子校と言ってもカラーはそれぞれで、男子校よりバラエティに富んでいると思います。自立目線で見るなら、洗足学園、頌栄女子学院、鷗友学園、吉祥女子は自立したタイプの子が多いです。たとえば、吉祥女子は校舎も明るく開放感があって、リベラルな雰囲気。芸術教育にすごく力を入れているので、美大や音大に進む子も多いです。課外授業で芸術系の講座がたくさんあってプロに習えるので、興味がある子は楽しいと思うし、「好きなことにとことん打ち込もう」という空気があり、人気の学校です。女子校は男子校以上に、先輩後輩が織りなす人間関係の影響が大きいと思います。先輩の所作を見続けて憧れていると、自分もそういう先輩になっていく。それが学校の文化として継承されていくんですね。

 学校が変化したというよりも、時代の流れとともに入学する生徒が変わって、学校も少しずつ自立寄りになっているというほうが正しいかもしれないですね。

女子=文系ではない
理系教育に力を入れる学校

   時代の変化といえば、女子の理系進学率も上がっていて豊島岡女子学園は4分の3が理系進学者と聞きますが、他に理系に強い女子校はありますか?

 おっしゃるように、文理の比率が半々の女子校が増えていますね。

 日本女子大学附属は科学棟がすごく充実していて、大学で理系に進む子が多いと聞きます。

 医学部を目指すなら?

 光塩女子学院は入口の偏差値に対して医・歯・薬学部進学の比率が高いです。ただ、入ってからの勉強はかなり大変といわれています。いわゆる“お得な学校”と呼ばれるところは、入学してからの勉強量が多いということですから。

 入口の割に出口が良いのはそういうことですよね。普連土学園や東京女学館も理系進学者が増えているそうです。共学だと女子=文系、男子=理系というムードになりがちですが、別学は自分がどの方向に進みたいのかをじっくり考えられる環境でもあるんですよね。そもそもリケジョなんていう言葉は女子校には存在しませんから。自分の興味関心を突き詰められるのが別学の魅力です。

入試問題にも学校のカラーが

自立≠進学実績。多様性が認められる環境でいかに好きなことに打ち込めるか

 

“女性の自立教育度”を
見極めるポイントは?

   娘に自立した人間になってほしい、リベラルな価値観を持ってほしいと思った時に、その学校がリベラルな教育をしているかどうか、授業カリキュラムや学校のスローガン、雰囲気など何を見ればいいですか?

 本当にその学校の雰囲気を知りたいなら、文化祭や説明会でなく、学校帰りの生徒たちの姿を見ればわかります。6年後、自分の娘にこうなってほしいという顔をしているかどうか。道に広がってお喋りしながら歩いているか、行儀よくしているかだけでもカラーが出ますね。

 校門を出た瞬間、結んでいた髪の毛をバサッとほどくような学校もありますよね。それと、個人的にはキャリア教育を派手なアドバルーンのように打ち上げている学校についてはその内容を見極める必要があるかなと。

 もちろんすべてではないですが、“キャリアごっこ”を真のキャリア教育だと勘違いしている学校は、確かにありますね。

 あと、これは男子校、女子校、共学校すべてに共通しますが、大学進学実績よりもどんなジャンルに進んだ卒業生がいるか。政治家、学者、経営者、芸術家、医者など、多彩なジャンルの卒業生を輩出している学校は、リベラル度が高いと思います。カリキュラムで言うなら、教科学習以外にどんな教育をしているか。中高生の学術的好奇心を満たす機会をどれだけ本気で用意しているかということです。たとえば、英語教育は今どの学校も力を入れていて、ICTやグローバルという言葉はよく耳にしますが、英語教諭の人選や、交換留学を行っている場合、提携先や実績で英語に対する本気度や学校のカラーがわかりますね。

あえて自立を掲げなくても実はリベラルな教育をしている女子校を僕はおすすめします。

 

自立=大学進学実績の
高さとは限らない

 ここまでお話しして、女性の自立という時に、果たして何をもって自立というのかは難しいですね。

 たとえば、外で働いていなくて、専業主婦として子育てに一生懸命になるのも自立だし、自立=高学歴、有職率ではないですよね。

   親の価値観が問われますね。共学と別学で悩む家庭も多いですが、女子校に向いているのはどんな子でしょうか?

 女子校全般に言えるのは、生徒は女子のみで教師も女性が多いので、異性の目線を気にせずズバズバとものを言える子が育つ傾向があります。女性であることを意識しなくていいので、人間対人間の付き合いになっていくんですね。結構キツイことも言い合うけど、女子校出身者はそれが心地よいと言います。そういった心地よさを感じられない子は、共学向きかもしれませんね。

 東京の私学で圧倒的に数が多いのが女子校で、続いて共学校、男子校の順。女子校はバラエティに富んでいてカラーが濃い分、合わないと辛くて退学してしまうという話も聞きますから、様々な角度から学校をよく見て、お子さんに合う学校を選んでもらいたいですね。

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撮影/杉本大希〈zecca〉 取材・文/宇野安紀子 編集/羽城麻子
VERY NAVY 12月号『良妻賢母のイメージはもう古い!?「自立」目線で考える、女子校選び』から 
詳しくは2020年11/7発売VERY NAVY 12月号に掲載しています。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。

 

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