本上まなみさん「最終学歴は問わないけれど、学業を終えたら独り立ちと伝えています」
VERY NAVY10月号にご登場いただいた俳優の本上まなみさん。本誌では収まりきらなかった子育てトークをウェブ限定で公開します。
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「ごんぎつね」に息子が涙。
心の成長を感じました
VERYで連載をしていた頃はまだ赤ちゃんだった娘は中学3年生に、息子は小学3年生になりました。子どもたちの成長は本当にあっという間で目まぐるしいほどに色んなことが起こりますが、最近の印象深いエピソードは“息子とごんぎつね”。先日家族で食卓を囲んでいるとき、何かのきっかけで『ごんぎつね』の物語が話題にのぼったんです。息子が「どんな物語?」と興味を持った様子だったのであらすじを教えてあげると、「ごんがかわいそう」とものすごく凹んでしまって。息子はやんちゃで荒っぽいくせに、実は可愛いキャラクターが好きだったりするんです。次の日、図書館で『ごんぎつね』を借りて読んだそうで「本当に悲しいお話で涙が出てしまった」と教えてくれました。これまではウルトラマンのようにカッコよくて強いことが大事で、わかりやすいものに魅力を感じることが多かった息子。でも、人の悲しみや辛さ、弱さとか、そういったことが彼の琴線に触れたんだと、心の成長を感じた瞬間でした。私も息子と同じ歳の頃、曽祖父と曽祖母が立て続けに亡くなって「身近な人が目の前からいなくなって、自分の手の届かないところに行ってしまうんだ」と初めてハッと気づいたことを覚えているんです。次は自分が大好きなおばあちゃんが……と、おばあちゃんがまだ元気だというのに私は毎晩泣いてしまって。命の尊さへの気づきって、ある一定の年齢にきたら成長過程として訪れるものなのかも知れないと、息子を見て思い出しました。ごんぎつねの涙から数日後、息子が「もっと悲しいお話はない?」と興味津々で聞いてきたときは、家族で「え?」となりましたが(笑)。
学業を終えたら、独り立ちのとき。
巣立つことは寂しくも、幸せなこと
私の母も、祖母も、働きながら子育てをしたひと。共働きの両親から小さな頃に教わったのは“自活のススメ”です。母と一緒に台所に立ち食事の支度が自分できるようにと教わり、小学校高学年の頃はひとりで食材の買い出しをして、母が仕事から帰るまでに一品作ったりしていました。その経験はとても大切だと思っていて、今は息子に仕込んでいる最中。メニューは自分で決めてもらい、ひと通りできるようになるまで何回か作ってもらいます。一作目は、フレンチトースト。卵を割って牛乳は少しずつ入れて、卵の大きさは日によって違うから牛乳を入れたときの“この色”を覚えて、パンを卵液に浸している間は遊んで待っても平気だよと、なるべく息子目線でアドバイス。最近はだいぶ上手になって、お味噌汁も作れるようになりました。仕事のある日に付き添って料理を教えるのは正直むずかしいかなと思いますが、コロナ禍で子どもと過ごす時間が増えて、それがいいきっかけになった気がします。独り立ちできるスキルは、家族で住んでいるあいだに身につけて欲しいというのが夫と共通の想い。子どもには最終学歴が何であってもいいけれど、学校を通い終えたら“独り立ち”ということは伝えてあるんです。仕事を持って、自分で人生を切り開く努力をするんだよって。どんな職業に就き、どこに住み、どんな暮らしをするのか……。巣立ってしまうことを考えると寂しくもありますが、“ひとりできちんと立てる人”になってくれることが、親子にとって幸せなことなのかなって思うんです。
ニット ¥26,400(ガリャルダガランテ/ガリャルダガランテ 表参道店)パンツ ¥35,200(ドローイング ナンバーズ/ドローイング ナンバーズ 新宿店)スニーカー ¥34,100(デイト/ウィム ガゼット 玉川高島屋S・C店)ピアス ¥429,000 イヤカフ ¥242,000 リング ¥286,000(すべてメシカ/メシカ ブティック 日本橋三越本店 本館6階)
ほんじょう まなみ。1975年東京生まれ、大阪育ち。共働きの家庭で育ち、働く母の姿を見て育ったご自身も結婚・出産後も迷うことなく仕事を継続。現在も俳優としてだけでなく、声優、エッセイスト、絵本作家などと幅広いジャンルで活躍。現在は京都在住。
撮影/竹内裕二〈BALLPARK〉 スタイリング/池田奈加子 ヘア・メーク/笹浦洋子 取材・文/櫻井裕美 編集/羽城麻子