MIO HARUTAKAさん『ダイヤモンドを取り巻く課題と向き合いたい』
ダイヤモンドの採掘にまつわる人権侵害や環境破壊といった課題に誠意をもって取り組んできた、「ミオ ハルタカ」「ビジュードエム」など人気ジュエリーブランドを手がけるMIO HARUTAKAさん。2022年10月には、現地の状況を自分の目で確かめるために西アフリカへ。「行きたい」と思うことと、実際に「行く」ことには大きな隔たりがある。リスクも伴うその旅に出ることを選んだ彼女の勇気と行動力は、どこから湧いてくるのだろうか。『VERY NaVY』2023年6月号から一部を抜粋してお届けします。
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衣装、ジュエリーはすべて本人私物
Q. リスクを覚悟のうえで、西アフリカ・
リベリアに行くと決意した理由は?
A. ダイヤモンドは神様からの贈り物。
その恩恵にあずかる立場として、いつか採掘者たちと顔を合わせなくては、とは、ずっと心に決めていました。
ダイヤモンド採掘者たちと
同じ未来を描くために
私たちを魅了してやまない、天然ダイヤモンドの輝き。その圧倒的な美しさの裏側には、環境破壊や人権侵害といった数々の課題がいまだに解決していない採掘場もある。問題解決に真摯に取り組んでいるのが、ジュエリーブランド「ビジュードエム」「ミオ ハルタカ」を率いるMIO HARUTAKAさんだ。
「ダイヤモンドは神様からの贈り物。その天然の輝きを守っていくために、私にできることは? ブランドを立ち上げた当初から自問自答を繰り返した結果、採掘場を取り巻く課題におのずと向き合うようになりました」
2020年からは「ミオ ハルタカ」の売り上げの一部を、西アフリカ·リベリアのウィズア村のダイヤモンド採掘労働者の生活向上のために寄付することに。とはいえ、金銭面での支援はMIOさんにとってはじめの一歩。いずれは現地に赴き、採掘労働者たちの暮らしを自分の目で確かめて、彼らと直接話をしなければ── そう決めていた。なぜなら、MIOさんは彼らを「被支援者」ではなく、「大切なパートナー」として見ているからだ。
ウィズア村に到着後、最初に着手したのは、村の至るところに散乱するゴミの片づけ。村の人たちや学生たちに声をかけ、みんなで作業。
「お互いにフェアな立場で同じゴールを見据えながらモノづくりをしていくには、顔を合わせなくては。率直な意見や思いを交換するために、私はリベリアに行く必要があったんです」
そして2022年10月、いよいよウィズア村へ。日本とは大きく異なる環境下での滞在は衝撃の連続だったが、MIOさんが何よりも驚いたのは、人々の積極性の低さだったという。村にはゴミが散乱し、寄付金により完成しているはずの公衆トイレもなかなか建設が進まないという有様。
現地ではアイーシャさんの家に滞在。村には宿はおろか、電気も水道もない。
「原因は彼らではなく、貧困にあるんです。いくら頑張ったところで報われなければ、やる気が起きないのは当然ですよね」
彼らのモチベーションを高めることが生産性の向上につながり、課題解決の突破口になると感じたMIOさんは、ダイヤモンドの採掘労働者たちとのミーティングで、彼らへの感謝とリスペクトの思いを丁寧に伝えた。
炎天下、ダイヤモンドの採掘場で作業を手伝うMIOさん。「想像していた何倍も重労働。ダイヤモンドは採掘労働者たちの汗と努力なしでは輝かないということを実感しました」。
「一人ひとりの手を握り『ありがとう』を言い合えたことで、絆が深まったのを肌で感じました。彼らだって本当は、自分たちの仕事に情熱と誇りをもっているんです」
そんな現地訪問から半年。MIOさんは今もあのときの思いを反芻しながら、彼らを取り巻く環境を改善するという使命感を日々強めている。
「私がやらなくては、という覚悟が決まりました。課題が多すぎて解決までの道のりは長いけれど、これからも一歩ずつ進んでいきます」
PROFILE
「ミオ ハルタカ」デザイナー、「ビジュードエム」クリエイティブディレクター。2011年にジュエリーブランド「ビジュードエム」、2018年に「ミオ ハルタカ」をスタート。
撮影/生田昌士〈hannah〉ヘア・メーク/宮本由梨〈YURIoffice〉取材・文/志村香織 取材協力/龍淵絵美 撮影協力/バックグラウンズファクトリー 編集/渋沢祥子
VERY NaVY6月号『SHE is NAVY SPECIAL ISSUE 一緒に成長、私を語る〝ダイヤモンド〟のはなし MIO HARUTAKAさん』より。詳しくは2023年5/6発売VERY NaVY6月号に掲載しています。掲載中の情報は誌面掲載時のものです。