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エシカルなジュエリー・HASUNAの白木夏子さん「エルメスの時計は、子どもに残せるものに」

採掘の工程がわかるダイヤモンドや、南米のエシカルゴールド。パキスタンの女性が磨きあげる天然石。ルワンダの子ども達が加工を手伝う牛の角。紛争、飢餓、貧困が残るこの世界でどこかで苦しむ人がいないよう、手に取った誰もが笑顔で終わるよう、すべてのストーリーがいつわりなく美しいものでありたいと、白木夏子さんは動き続ける。手のひらのジュエリーは、地球を巡るほどの尊い輝きを放って。

*私物に関するブティックへのお問合わせはお控えください。

Q. 愛用の時計は何ですか?

A. エルメスの
ギャロップ ドゥ エルメス。

メゾンの遊び心と、
『未来への宇宙船』という
美しい言葉に惹かれて。

Q. 時計ってどんな存在ですか?

A. 自分で見えないネックレスやピアスが
自身を表現するものだとしたら、
時計は指輪やバングルのように
常に目に入るもの、
いつも気分を高めてくれるもの。

Q. 気に入っている点は?

A. 歴史あるメゾンが持つ
時間や空間を超えた良さと
価値を伝えてくれるところ。

世界を見つめる眼差しと、
他者を思う心。
平和という心地よさを知る。

世界を見つめる眼差しと、
他者を思う心。
平和という心地よさを知る。

 ジュエリーで世界を救いたい。時間に縛られることなく邁進する自分を思い描き、持っていた腕時計も時間そのものも起業とともに手放したのは、白木夏子さんが30歳のときのこと。「何万円も出してジュエリーを買うのに、インドの鉱山で働く人は1日1ドルももらえないんです。子どもは学校に通えず、鉱山で怪我した腕は化膿したまま。私たち先進国の便利で豊かな美しい生活が、貧困層の人たちの犠牲のもとにあるなんて、どうしてもおかしいと思いました」。
 紛争や飢餓、貧困を伝えてくれたフォトジャーナリスト。女性もこれからは世界で活躍する時代だとイギリス留学へと背中をおしてくれた祖父。危険を省みず世界中の鉱山へと足を運び、知った現実。自分の生きている時間が、確実に世界とつながっていると感じ続けてきた彼女は、人生で心に触れたさまざまな出来事を紡ぎ出し、ひとつの道を作り出した。誰もが幸せになれるエシカルなジュエリー「HASUNA(ハスナ)」は、白木さんの情熱の瞬間を繋ぎ合わせたものだ。
 使命感とともに走り続けた都会暮らしを、次女が生まれた今は郊外の森の中へと移したばかり。「自然の中にいると、子ども時代を思い出して息を吹き返したようになるんです」。人生の流れが変わった時に、ふたたび手にした腕時計。「エルメスの時計は、子どもに残せるものになるかもしれないと思いました」。母として、女性として、そして起業家として。『未来への宇宙船』と呼ばれた腕時計を携えて、白木さんはまるで人生の第二章の幕開けを楽しんでいるかのよう。控えめで美しく、心密かに冷めぬ情熱を宿して。

Profile

白木夏子

ジュエリーブランド「HASUNA(ハスナ)」創業者・CEO、ブランドプロデューサー・ディレクター。武蔵野大学アントレプレナーシップ学部教員・研究所客員研究員。英ロンドン大学卒業後、国際機関、投資ファンドを経て2009年に株式会社HASUNAを設立。HASUNA(ハスナ)では、ペルー、パキスタン、ルワンダほか世界約10カ国の宝石鉱山労働者や職人とともにジュエリーを制作し、エシカル(=道徳的、倫理的)なものづくりを実践。2011年日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー受賞、2013年ダボス会議に参加。Voicyにて「起業&ブランドゆる話」チャンネル音声配信中。

撮影/HAL KUZUYA 取材・文/須賀美季 編集/渋沢祥子 協力:ホテルメトロポリタン 鎌倉

VERY NAVY10月号『一緒に成長、私を語る〝時計〟のはなし』より。詳しくは2021年9/7発売VERY NAVY10月号に掲載しています。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。

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