宋美玄さんの「今を生きる母たちの心に響く」おすすめの本3選
丸の内のオフィス街に、これまで無かった産婦人科クリニックを開業した宋美玄さん。それは、働く女性たちをサポートしたいという思いから。妊娠やカラダの不調を理由に、仕事やキャリアを諦めてほしくないという宋さんの強い信念は、医療という枠を飛び越えて多くの女性たちを救っている。子育てのことやママの社会的立場、子ども達が生きていく未来についてなどなど、山積みの問題に向き合うキッカケとなる本を紹介してもらいました。産前産後の女性たちに寄り添う、宋さんならではの鋭い視点を垣間みられる名著ばかり。
子どもの心を育てる育児と、待ってあげることの重要性を学んだ愛読書。
子どもの心を育てる育児と、待ってあげることの重要性を学んだ愛読書。
まっさらな心をもった子ども達。感性が作り上げられていく乳幼児期だからこそ、大人とのつながりから育っていく豊かな人間関係がある。今は亡き児童精神科医の著者が、人間の基礎を作る育児の大切さを語る。
「親になるひと全員に読んでほしいと思う一冊です。ここには、子どもの心が育つために私たちがどう接するべきかなど、大切なことがたくさん書かれています。最も心に響いた言葉のひとつに『子育てというのは待つこと。出来るようになることを待ってあげること』という一節がありました。子育てをしていると、待ちきれなくなってついつい手を出してしまう。知らずうちに手をかけてしまうんですね。親になると、子どものことで悩んだりすることもたくさんあるけれど、子どもに期待したり、望み通りに育ってほしいとルートをつくってあげたりするのではなく、子どもが自分で出来るようになるまで、待ってあげることなんだと実感しました。子どもが、わーって遊んでいて、パッと振り向いたときにちゃんと見てあげていられる親でいたいなと、この本を通じて思ったんです」
——『子どもへのまなざし』佐々木正美・著 山脇百合子・絵(福音館書店刊)
勇気を持って社会を変えること。いま、心に沈んだわだかまりを脱ぎ捨てるとき。
勇気を持って社会を変えること。いま、心に沈んだわだかまりを脱ぎ捨てるとき。
ハラスメントとはどういうことか、なぜハラスメントは起きるのか。ハラスメントのない社会にするためには何が必要なのか。小島慶子が、小説家や評論家、社会学者など11人の識者にインタビューする。
「小島慶子さんがゲストを迎えて、社会や男女間のハラスメントについて編集された本です。女性として生きづらい社会を身をもって知ったときに読んだ一冊で、『嫌なときは嫌だ』と言ってもいいんだと思えました。現代の多くの女性は、子どもを産んだら文句を言わずに家事をしながら、仕事をこなしているんです。例えば、社会復帰した後では出産したママのための時短という制度があって、それは夫が生活も仕事スタイルも変えずに済むためのシステムでもあります。そして、女性が時短を取ったら、給料も減って家庭内の相対的地位も低くなるのに、一方家では家事も育児も全部抱えて、最終責任者みたいなる。そういうのってやっぱりおかしいと、痛切に感じます。だから、自分の娘が大きくなるまでにそういうシステムは変えたいなと、私にできることについても考えるキッカケにもなりました」
——『さようならハラスメント』小島慶子・編(晶文社刊)
子ども達が生きていく未来を私たちはどう作るか!? 日本再生論を問う一冊。
子ども達が生きていく未来を私たちはどう作るか!? 日本再生論を問う一冊。
これからの時代、そして近い未来、この世界はどう変わっていくのか? 日本はこれからどうなるのか? データとAIが作っていく新しい未来を、子ども達がどう乗り越えていくべきか。慶應大学SFC教授でありヤフーCSOの著書が問う、日本が這い上がるためにいま進むべき道とは。
「この1冊には、日本がいかにダメかが書かれているんです。日本って遅れている、ダメだな、と思えるような事がデータと共にたくさん書かれています。でも著者の凄いのは、『だからこそ、伸び白がある』と言っていること。日本をより良く変えていきたいと思える、この国は変えるべきところがいっぱいあると、思わされます。日本に産まれて、死ぬまで日本に住むつもりだから、いい国になってほしいというのがすごくあるんです」
——『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成』安宅和人・著(NewPicksパブリッシング)
撮影/金 玖美 ヘア・メーク/イオギユミ 取材・文/須賀美季