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6−2 日本初!国際高校「ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン」とは

2014年8月、長野県軽井沢町に開校した国際高校「ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン」。教育界のチェンジメーカーとして注目をあつめる小林りんさんが尽力し開校に至った、日本初の全寮制のインターナショナルスクールとは、一体どんな学校なのか。前代未聞の国際高校、その魅力の一部をご紹介します。

世界84カ国からの生徒が集結する、全寮制高校

小林りんさんがこれまで勤めていた国連を退職し、新しい学校開設に奮闘した6年間がある。それは、彼女自身が10代のときから感じていた日本の教育への違和感、それを払拭すべく導きだした答えのひとつが、政府に改革を求めたり学校を責め立てるのではなく、自分たち自身で教育を変えていけばいいということだった。紆余曲折ののち、ようやく国からの許認可がおりたのは2012年のこと。そして2014年に、日本初の全寮制国際高校「インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢(ISAK)」が開校する。2017年には、UWCに加盟し「ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン」として新たな一歩を踏み出した。

一、 生徒と教員は世界中から応募し、授業は原則としてすベて英語で行う。
二、 生徒全員が寮生活をする。
三、 生徒の圧倒的多数に対して奨学金を給付し、真のダイバーシティを追求する。

という特徴を持つ、「ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン」は、国際基準のタームに則って、全面9月入学。日本の高校でありながら、国際バカロレア(注)としてその門校は世界中に開かれている。現在は世界84カ国から集まった200人の高校生が、軽井沢の学校で寮生活をしながら勉学に励んでいるのだ。

「ここまでダイバーシティのある学校は、これまで日本にはなかったんです。しかも、文科省の学校法一条校の許可をうけたということは、日本の教育界においてひとつの大きなチェンジだったと思います」

“一度しかない人生。自分の個性を生かして思い切り生き、自分らの立つ場所から世界を変える”を信条に、次の時代のチェンジメーカーを育てることをモットーとしている。
「教育者、ジャーナリスト、実業家、政治家、どんな立場でもいいから、社会を変えられるチェンジメーカーを教育することが求められている、と思いました。社会を根幹から揺さぶっていけるような人をこれから育てていかなくては、“教育”ということの使命を果たせていないと思ったんです」

小林さん自身が、高校時代奨学金制度を使い日本を飛び出したように、「ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン」にも、充実した奨学金制度が用意されており、全生徒の実に7割が奨学金の給付をうけている。国籍のみならず、社会経済的にもさまざまなバックグラウンドの生徒が、同一の教育を受けることのできるチャンスがこの学校にはある。
開校から7年が経つ今、4期生が卒業を迎えた。

自然に囲まれた校舎が、教育の舞台

「ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン」は、避暑地として知られる長野県軽井沢町にある。1万5千坪という広大な敷地の中に、校舎棟、生徒・教職員棟、体育館、ゲストハウス、集会所やウェルネスセンターなどが立ち並んでいる。

「日本という国の魅力でもある、“美しい四季”が見られる場所というのが、最初の条件でした。事実、アジアから来る生徒達の多くは、日本の雪景色に魅了されているようですね。軽井沢町には、学校のコンセプトを理解してもらえたというのも大きく、準備途中から町の皆さんが国際文化観光親善都市にはこんな学校が必要だとおっしゃって、積極的に誘致してくれたんです。しかも学校が立ち上がる前から、ふるさと納税の中に、我々の生徒たちへの奨学金をメニューに加えてくださった。この町は、そういう動きをしてくださる特異な町だったんです。いま学校が存続できるのは、地元の人たちの協力があったからこそだと、思っています」

誰にでも開かれる教育の機会こそ、真のダイバーシティ

人、国、文化を結び、平和と持続可能な未来に貢献することを理念とした、世界的国際教育機関である「ユナイテッド・ワールド・カレッジ(UWC)」に2017年に加盟した同校。小林りんさん自身が、高校時代奨学金制度を使って日本を飛び出したように、「ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン」にも、充実した奨学金制度が用意されている。国籍のみならず、社会経済的にもさまざまなバックグラウンドを持つ生徒が、同一の教育を受けることのできるチャンスがこの学校にはある。

「私は、自分自身が教育を通してチャンスをもらったように、世界の子どもたちが等しく教育のチャンスを受けられないかと思って、当時ユニセフに就職したんです。どこに生まれても、均等の機会があるべきだと思ったのです。能力や頑張りというのは、その次にあるものだと信じていました」


「ユニセフマニラ事務局の仕事は、フィリピン国内に年間30〜40万人いるというストリートチルドレンのうちの、8〜9千人をお手伝いするという仕事でした。一見多くの子どもたちを助けているように見えるけれど、その母数は年々増えていくという世界。格差がずっと再生産されていくという社会構造を、絶望に感じてしまいました。貧困層のごく一部のひとに教育を受けてもらっても、その構造はなかなか変わらないんです」

小林さんと100人の発起人が、「ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン」設立のもとに目指したのは、そんな社会構造をも変えていけるようなチェンジメーカー、リーダー層を育てることだったという。世界84カ国の生徒がいま軽井沢の宿舎で勉強しており、外国籍の生徒は全体の75%にものぼるという。さらに在学する生徒の70%が、奨学金制度を使って入学をしている。


世界という舞台で、本質を学ぶこと

多様性を重視しながら、リーダーシップ教育に力を入れている同校は、日本の高校でありながら「国際バカロレア(注)」として、世界中から集まった全校生徒が、カリキュラムを取ることが出来るのが特徴。さらに卒業後も、世界中の大学に進路が開ける。

国際バカロレア(IB):スイスの財団法人である国際バカロレア機構(本部ジュネーブ)が認定する教育プログラムで、半世紀前の1968年にスタートした。国際機関が多いジュネーブの学校には、各国から生徒が集まっていたが、各国ごとに大学の入試制度は異なるという問題があった。そのため、世界共通の成績証明書のようなものをつくろうという動きが生まれた。16歳から19歳を対象とする「ディプロマ・プログラム(DP)」(2年間)を修了し、試験に合格すれば、国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)が得られる。現在、150以上の国・地域の約5000校が認定校となっている。

高校生対象のIBプログラムの場合、母国語、外国語、数学、理科、社会、芸術の6つの柱がある。自分の考えを表現する卒業論文(Extended Essay)、物事を多角的にとらえるクリティカルシンキングを学ぶ哲学入門(Theory of Knowledge)、社会貢献や創造活動(Creativity, Activity, Service)も必須科目となっており、学科にとどまらない教育思想が特徴だ。同行の進学先は、約8割が海外大学進学(アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ)、1割が日本国内進学、そして1割が起業やギャップイヤーとなっている。

「ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン」において、小林りんさんは、以下の3つの柱が大切であることを常々生徒達に話しているという。

・ 問いを立てるちから
・ 多様性を生かすちから
・ 困難に挑むちから

「問題解決能力が重要だと言われますが、それは、すでに問題が与えられていて、それをいかに上手く早く解くか、という能力。それよりもこれからは、そもそも何が解かれる問題なのか、“問いを立てる”ということのほうがずっと大事だと考えています。例えば、世の中で起きていることやトレンド、同調圧力への疑問が“外向きの問い”だとしたら、自分は何にドキドキするのか、夜も眠れないくらいワクワクしたり憤ったりするものは何なのか、このために生きていんだ!と思えることと向き合う“内向きの問い”もあります。私は、そのふたつがぴたりと混じり合ったときに、大きなものが動くんだと思うんです。だから子どもたちには、“内向きの問い”と“外向きの問い”、その両方を探して欲しいですね。きっとそこに答えがあると思うんです」

学校法人ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパンhttps://uwcisak.jp/jp/

 

Profile

小林りん

学校法人ユナイテッド・ワールド・カレッジ ISAKジャパン代表理事。全額奨学金を受けカナダの全寮制高校に留学。東京大学経済学部卒、スタンフォード大学教育学修士。国連児童基金プログラムオフィサーとしてフィリピンに駐在。帰国後6年の準備期間を経て、2014年全寮制国際高校を開校。13年日経ビジネス「チェンジメーカー・オブ・ザ・イヤー」、19年Ernst&Young「アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー2019ジャパン大賞」など受賞多数。近著に『世界に通じる「実行力」の育て方』(日本経済新聞出版刊)がある。

撮影(ポートレート)/HAL KUZUYA  取材・文/須賀美季 

 

 

 

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