小林りんさんの一緒に成長、私を語る〝時計〟のはなし
Q. 愛用の時計は何ですか?
A. カルティエのタンク ルイ カルティエ ウォッチ。
明るめの装いの時、腕時計は決まってこれ。
Q. この時計との出合いは?
A. 『日経ビジネス』が選ぶ「チェンジメーカー・オブ・ザ・イヤー」の受賞時にいただいたものです。
Q. あなたにとって、この時計が持つ意味とは?
A. 自分を動かす情熱や、チャレンジの証。道のりを共にした仲間への感謝のリマインダーとなっています。
心を潤していく、自分らしさへの追求。
止められない情熱を携えて。
心を潤していく、自分らしさへの追求。
止められない情熱を携えて。
―それを知ってしまったら、もう知らなかった自分には戻れない―。17歳の少女の、まだやわらかなそのハートをギュッとつかみ離さない何か。その瞬間、自分に与えられた幸運や巡り合えた縁を、誰かのために使いたいと、少女は強く思う。
小林りんさんは、日本で初めて全寮制の国際高校を創設したひと。世界中に門戸を開くこの学校創設にあたり、準備から現在にいたるまで無償で活動している。2013年『チェンジメーカー・オブ・ザ・イヤー』受賞時に贈られたカルティエのタンクは、仲間たちと無我夢中で奔走した日々へと引き戻してくれるリマインダーだという。「日本の教育を現場から変えなくてはと、紆余曲折しながら活動した時間を評価されたような気持ちでした」。
彼女を奮い起こさせた起爆剤は、学生時代の原体験にある。公立高校で強く感じた違和感が拭えず中退、奨学金をもらって飛び出したカナダの留学先でのこと。メキシコの友人宅を訪れた時、クラスメイトのすぐ隣に歴然として存在する貧困に触れることになる。トタン屋根を打つ雨水、それをドラム缶に溜めた生活水。自分らしさを追い求めていた少女は、自分が世界で数パーセントの恵まれた人間だったことを初めて痛感する。そして、どんな境遇に生まれても自分らしく生きるチャンス、教育の機会は均等であるべきだと、痛烈に感じた。その原体験に突き動かされるよう、ユニセフの活動を経て、学校設立に向け費やした努力の月日は、17歳の時から彼女の胸をつかんで離さなかった情熱の具現化なのだ。
〝チェンジの証〟として手にした腕時計。未来へとしなやかに時を進める美しいその針は、他者のために働き続ける、決して終わることのない彼女の愛情そのもの。
Profile
小林りん
学校法人ユナイテッド・ワールド・カレッジ ISAKジャパン代表理事。全額奨学金を受けカナダの全寮制高校に留学。東京大学経済学部卒、スタンフォード大学教育学修士。国連児童基金プログラムオフィサーとしてフィリピンに駐在。帰国後6年の準備期間を経て、2014年全寮制国際高校を開校。13年日経ビジネス「チェンジメーカー・オブ・ザ・イヤー」、19年Ernst&Young「アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー2019ジャパン大賞」など受賞多数。近著に『世界に通じる「実行力」の育て方』(日本経済新聞出版刊)がある。
撮影/HAL KUZUYA ヘア/TETSU〈SIGNO〉 メーク/早坂香須子〈W〉 取材・文/須賀美季 編集/渋澤しょうこ
VERY NAVY 12月号『一緒に成長、私を語る〝時計〟のはなし』から
詳しくは2020年11/7発売VERY NAVY 12月号に掲載しています。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。