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クリス-ウェブ 佳子さん「嫉妬を上手くさばけるようになるには」

クリス-ウェブ 佳子さんがVERY別冊付録「VERY NAVY」2021年4月号より連載をスタート。佳子さんらしい切り口と語り口で、大人の“彩り”に満ちた人生を語ります。今回は、“嫉妬”についてです。

vol.03
文=クリス-ウェブ 佳子
Yoshiko Kris-Webb

 ブルガリ銀座タワーの9階にあるコンテンポラリーなイタリア料理が楽しめる「リストランテ・ルカ・ファンティン」の個室で、インテリアデザイナーの友人と2年越しのディナーをしていたとき。壁に飾られた1枚のモノクロ写真がふと視界に入り、思わずホッとした気持ちになりました。

 

〝自分知らずな人ほど嫉妬する〟

 

 ふたりのグラマラスな美女がディナーテーブルに隣り合って座るモノクロ写真。ひとりは1960年代に数多の映画賞に輝き、86歳にして現役という、イタリアが生んだ大女優ソフィア・ローレンで、彼女はとても冷ややかな目で隣に座る女性を、というよりもテーブルの上にこぼれ落ちそうなまでにあらわになったその女性の胸元をガン見しています。そんなソフィア・ローレンとは対照的にレンズに向かって微笑むのは、ブロードウェイとハリウッドを舞台に活躍し、1950年代のセックスシンボルとしても名を馳せたジェーン・マンスフィールド。会場の視線を独り占めにしていたであろうジェーンと主役の座を奪われたかのようなソフィア。険悪な雰囲気さえ漂うその写真を見て、私は「ソフィア・ローレンでも嫉妬するんだ」と安心したのでした。

 

 それは1957年にパラマウント・ピクチャーズがソフィア・ローレンと契約を結んだことを祝福するために催した晩餐会での一コマを切り取った写真です。しかし、あまりのインパクトの強さからハリウッド史に残る有名な一枚となりました。ふたりの関係性に一抹の不安すら感じるのですが、実はふたりが笑顔で握手を交わす写真や談笑する写真もあり、さらにソフィアはとあるインタビューで「ジェーンの乳首が私のお皿の上に飛び出すかもしれないと心配していたのよ」とすら語っています。妬みなんかではなかったのです。相手を気遣っての一瞬の視線が、レンズを通した他人の思惑により、嫉妬へと変わってしまった稀有な一枚だったのです(現代のメディアでは十八番な切り取り手法ですけどね)。

 

 嫉妬。誰の心にでも宿る嫉妬。生きているうえで持たないことが難しい嫉妬。一度噴出すると、その陰湿性によって病的な問題にまで発展してしまう嫉妬。「七つの大罪」に表記されるほど、人間を罪に導く可能性があると見なされている嫉妬。根底に「自分もそうなりたい」という羨望の気持ちがあることを理解し、「自分の機嫌は自分で取る」のと同様に、他人から得る肯定感ではなく自力で生み出す肯定力を身につけることができれば、上手く嫉妬をさばけるようになるのかもしれません。

 

 ちなみに西暦400年ごろに記されたラテン語叙事詩『プシュコマキア』によると、「七つの大罪」には相対する「七つの美徳」があり、嫉妬のそれは感謝になります。嫉妬は心に溜めても無駄なもの。感謝は心に留めていては勿体無いもの。日本に宿る〝勿体無い精神〟にならうのは、きっとみんな得意なはず!

 

 

クリス-ウェブ 佳子さん

10年間VERY専属モデルとして活動。現在は、VERY NAVYのロールモデルのひとりとして参加。趣味や人脈もジャンルを超え多岐にわたり、その経験から執筆業、ラジオDJ、インテリアデコレーターなどマルチに活躍。2人の娘も女優やモデルとして活躍する。著書に『TRIP with KIDS ーこありっぷー』(講談社)、『考える女』(光文社)。

イラスト/Przemek Sobocki

 

VERY NAVY 6月号『[新連載]クリス‐ウェブ 佳子さん LIFE in COLORS vol.3』から
詳しくは2021年5/7発売VERY NAVY 6月号に掲載しています。

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