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【瀬戸朝香さん】50歳を目前に本格復帰。後押ししたのは娘の留学です

毎日一緒にいると、つい忘れてしまいがちな家族と暮らすありがたさや日常の些細な幸せ。留学という距離はお互いを信頼し、成長し合えるきっかけにもなる。15歳で単身上京した自身の経験を重ね、瀬戸朝香さんが母の想いを語ります。

ひとりで3人の子どもを育てた母。立派でしかありません

兄に憧れ、娘も小学生で留学。大変だった「涙の1学期」

もうすぐ15歳になる息子と11歳の娘は今、海外に留学中です。息子は中学1年生になるタイミングで、進路を決める選択肢のひとつとして留学を提案。最終的に彼自身が決断しました。学校は野うさぎが出てきちゃうような田舎にあって、雄大な自然のなかでサッカーやテニス、バドミントンと、様々なスポーツを楽しみ、勉強だけでない経験をのびのびと重ねている様子。行事で学校を訪れたときに、お兄ちゃんの生き生きとした姿を見て羨ましく思ったのか、娘が「私もここに通いたい!」と言い出して。下の子あるあるですよね。当時、娘は小学4年生になったばかり。彼女は親と離れて生活する心細さの想像がついていないはずで、そもそも私が「さすがに無理!」と1年ぐらいかけて留学とはどういうことかをじっくり説明、話し合いました。結局、娘の考えは変わらず。昨年、小学5年生にあがるタイミングで、息子と同じ学校に留学することに。想像通り、入学式から娘は涙。後ろ髪を引かれる思いで帰国しましたが、正直最初の1学期は大変でした。毎日何度もメールして、オンラインで会話して、その度に泣かれてしまって。一度でも「帰りたい」を受け入れてしまったら戻れなくなってしまう……。

 

心を鬼にして「もうちょっと頑張ったら、きっと楽しくなるよ」と励まし続ける日々。通話が終わると、私も切なくて泣いてました。息子は私にそんな素振りは一切見せませんが、いつも妹のことを気にかけてくれているみたいです。ある日、娘の担任の先生から「息子さんが“妹がお世話になっています、ありがとうございます”と声をかけてくれました」と報告が。直接褒めてあげたいけれど、照れくさいお年頃。「なんで知ってるの?」と知らないところで自分のことを話されるのを恥ずかしがって、妹のお世話をやめてしまう可能性があります。なので「かっこいいじゃん!」と心の中で大きな拍手。異国の地でお互いの存在が心強く、絆を感じているのかなって思います。最近は娘が涙する間隔がひらいてきて、私が一番聞きたかった楽しかった出来事の報告をしてくれるようになりました。 子どもたちがお休みで帰ってきたときの幸せは、ひとつの部屋で一緒に寝ること。だいたい私が最後に寝室に入るのですが、帰国のたびに大きくなる子どもたちの寝姿を見て「あー、いるいる!」と幸せを嚙み締めます。小言も口にする前に「本当に怒るほどのことかな」と考えるようになったのは、子どもたちへの信頼が増し、私にも余裕ができたから。それでも10日間ぐらい一緒に過ごすといろんなことが目につきはじめ、気がつけば小言が多いママが復活(笑)。その繰り返しですけど、お互いの存在にあらためて感謝して、ちょっとずつ成長している確かな実感はあります。

勉強よりも大切なのは家庭に“笑い”があること

私が芸能界デビューすることになり、親元を離れ東京で生活するようになったのが15歳のとき。三兄弟の末っ子で甘えん坊、やっぱり「寂しい、帰りたい」と毎日母に電話していました。当時は固定電話でしたが、料金が月11万円になってしまったことも。「大丈夫よ」と母が払ってくれましたが、そんなわけはなかったと思うんです。うちは、私が小学4年生のときに両親が離婚。それからは母ひとりで私たち3人を育ててくれたわけですが、もう立派でしかないんですよね。離婚のことを友だちに言われたときに「なんでお父さんがいないの」と責めてしまったこともありましたし、仲裁してもおさまらない激しいきょうだい喧嘩のあとに母がいないと探したら、別の部屋で静かに泣いていたこともあって。しんどいときもたくさんあっただろうに、振り返るほどに感じるのは“たくさん愛情をかけてもらった”ということ。お給料をもらって母を旅行に連れ出せたときは、本当に嬉しかったです。

 

実家で暮らしているときも今も、私は家族を笑わせるのが好き。小さいころから変な顔や踊りをして、よくおちゃらけていました。人見知りの内弁慶なので、外ではしません(笑)。真剣に話さなければならないときは別として、何となく嫌なムードが流れたり、喧嘩のあとによくない余韻が続くのが苦手なんです。もったいないと思っちゃいます。そんなときにワンアクションで、プッと笑わせることができたら勝ちじゃないですか。「何でそんなに怒っていたんだっけ」と、一気に空気が和んで、また平和な時間が流れ出す。勉強にはうるさくありませんが楽しく生きる術として、笑いの教育はしっかりしているかもしれません(笑)。

 

留学中の子どもたちを訪ねてヨーロッパへ。観光で立ち寄ったイギリス・ブライトンで、フィッシュ&チップスを食べた後、家族で海へ。離れて暮らす子どもたちは会うたびに大きくなっていて感動します。

7年ぶりの本格復帰。「ママも頑張ってるよ」
留学中の子どもたちへのエールになったらいいなって

仕事復帰は、戸惑いの連続。それでも私は「この仕事が好き」

50歳を目前に、約7年ぶりに仕事に本格復帰。後押ししたのは、やはり娘の留学です。仕事をセーブした理由はシンプルで、子育てに専念するほうが自分には向いているなと思ったから。テレビを見ながら「この役やりたかったな」とか寂しく感じるときもありましたが後悔はまったくなく、その経験があったからこそ今あらためて「この仕事が好き!」と確信できたのかなって。7年のロスはそれなりに大きく、毎日が戸惑いの連続。私が仕事をしていた時代は紙だった台本が、iPadになっていたりするわけです。よく考えたら当たり前なんですけど、いちいちドキドキしちゃって。焦りも不安もありますけど、どちらも前向きなもの。これからまた積み重ねていこうと新鮮な気持ちでいます。私がテレビに出ていた時代を知らない子どもたちは「ママ、こんなお仕事してたんだ」と喜んでくれていて、私の頑張る姿が子どもたちへのエールになってくれたら、それ以上のご褒美はないかもですね。

 

ジャケット¥330,000ブラウス¥100,100パンツ¥129,800(すべてマックスマーラ/マックスマーラ ジャパン)シューズ¥181,500(ジャンヴィト ロッシ/ジャンヴィト ロッシ ジャパン)イヤリング¥660,000リング[人差し指]¥423,500[中指]¥583,000ブレスレット¥1,557,600(すべてカルティエ/カルティエ カスタマー サービスセンター)

Profile

瀬戸朝香さん(せと あさか)

1976年生まれ。15歳で愛知県から上京、芸能界デビュー。化粧品CMをはじめ、俳優としてドラマ『君といた夏』『東京大学物語』などヒット作にも多数出演。映画「青春ゲシュタルト崩壊」が2025年6月13日より全国公開。

撮影/竹内裕二〈BALLPARK〉 スタイリング/池田 敬 ヘア・メイク/森 ユキオ〈ROI〉 取材・文/櫻井裕美 編集/水澤 薫
*VERY NAVY 4月号「瀬戸朝香さん Inter view」より抜粋。詳しくは2025年3/7(金)発売VERY NaVY 4月号に掲載しています。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。

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