内田恭子さん「子どもたちも大好きな“りんごのケーキ”は母から伝わる思い出の味です」
知性のある上品なファッションと聡明なキャラクターで人気の内田恭子さん。VERY NaVYで、彼女が愛する「モノ、コト、場所」を通じてその〝審美眼と価値観〟を知るエッセイ連載。今回は、内田さんのお母さまの味〝アプフェルクーヘン〟についてのお話です。
こちらの記事も読まれています
内田恭子さんの
my LEGEND++web special++
「アプフェルクーヘン」
11月になると、我が家は毎年軽井沢のりんご農園にりんご狩りに行きます。これは子どもたちがまだ小さい時からなんとなく続いている恒例行事。澄んだ空とたわわに赤い実をつけたりんごの木々が迎えてくれて、「ああ、今年も来たなあ」なんてそれだけで嬉しくなっちゃう。
そこで、まずはたくさんの種類のりんごを食べ比べ。シナノゴールド、シナノホッペ、秋映、シナノスイート、王林、ぐんま名月。その場でカットしていただいたものを、これは甘い、これは酸味が強い、この歯触りが好き、などとみんなで味わって、その時に一番美味しいものをたくさんもいでいくのです。数年前までは三脚の一番上まで怖くて行けなかった次男が悠々と上までいく姿や、長男が重いりんごの籠を持ってくれる様子など、子どもたちの成長が手に取るように感じられて、なんとも愛おしい時間です。
さて、たくさんのりんごを持って帰ると、そこからは私のお仕事。「ママ、あれ食べたい」とリクエストされるのが、アプフェルクーヘン。これは私の母から教わったりんごのケーキ。
商社で働いていた私の父は海外転勤が多く、私も兄もドイツで生まれました。私が2歳の頃には帰国したので、私自身はそこまでドイツの記憶はないのですが、当時からドイツの文化が我が家にはちらほら。おやすみ前には「bis morgen(また明日)」と当たり前のように言っていたし、家の飾り物やお皿、クリスマスオーナメントもドイツのものが多く、私の七五三の衣装までもがディアンドルというレースのブラウスとエプロン姿の民族衣装でした。そして食べ物といえばりんごをふんだんに使ったアプフェルクーヘン。私も子どもの頃からこれが大好きで、今は母からもらったレシピで作っています。生クリームが好きではないうちの子ども達も、これはクリームを使っていないので、喜んで食べてくれるのです。
作り方はとても簡単。バター、卵、小麦粉、お砂糖を混ぜた生地にりんごを乗せて焼くだけ。少々形が崩れても、りんごがカバーしてくれるので大丈夫! もはや私はケーキはこのケーキしか作りません(笑)。パウンドケーキのようで、でもりんごの水分がたっぷりと染み込んでいるから、生地はしっとり。甘さ控えめに作るので、我が家では朝ごはんにも登場します。
なんといってもこれをオーブンで焼いている時が幸せの瞬間。りんごの甘ずっぱい香りとバターの香ばしい香りで満たされて、うっとりしちゃう。私の幼少期の記憶がそのまま子ども達にも伝わっていくって、とても尊いことだな。さて、子どもたちが成長したら、何が母の味になるのか。楽しみ楽しみ。
Profile
内田恭子さん
1976年生まれ。フジテレビのアナウンサーを経て、結婚を機にフリーランスに。現在は幅広いメディアで活躍する一方、上品かつ高感度なファッションも話題に。2児のママ。kikimindfulness主催、マインドフルネストレーナー。
モデル・文/内田恭子 構成/松井美雪 編集/羽城麻子