エルメスのバッグは“母から娘に受け継ぐ”ロマン【RIEさんの愛用ケリー】
長く付き合うほどに味わいが増す、レザーの風合いとシンプルな佇まい。思い出や時間を刻み込むように、変化し、なじみ、愛着へと変わるのが「エルメス」のバッグの魅力。眺めるより、使い込むことに意味があると改めて思える9人の人へのインタビュー。今回は、SEAのディレクター・RIEさんに思いを語っていただきました。
※エルメスのアイテムはすべて本人の私物のためブティックへのお問合せはご遠慮ください。
毎日寄り添う小さな
ケリーはもはや自分の一部です
SEA ディレクター RIEさん
2007年にメイドインジャパンにこだわったブランド「SEA」を立ち上げる。ブランドやショップのディレクションも多数手がけ、衣食住のセレクトショップ「S-STORE」も主宰。
❝経年変化と肌なじみ。大好きな
デニム同様、育てるように楽しみたい❞
私にとってエルメスのレザーアイテムは、古き良きヴィンテージデニムに近い印象。ノンウォッシュのデニムが、使う人の個性や生活によって徐々に色落ちしていくように、エルメスのバッグも使うほどにその人らしい表情になっていくから、「育てていく」という感覚です。一緒に人生を刻んでいくからこそ、できたシワや擦れも愛せるんです。
私のファッションには、幼い頃から感じていた父のアメカジと母のトラッドという2つの背景がいつもベースにあります。カジュアルな服に上質なエルメスを持つスタイルも、きっとそこからきているのだと思います。私にとってのファースト・バーキンは、ブランド「SEA」を立ち上げた25歳のとき。新しいことにチャレンジする当時の自分を鼓舞するため、ゴールドを手に入れました。価値が変わることのないエルメスの職人技やブランドの真摯な姿勢に、大きく影響を受けました。
年を重ねるごとに選ぶレザーの好みも変わってきています。20代は型押しの風合いが好きで、トーゴや廃盤になってしまったアルデンヌなど、表情がある革に惹かれました。35歳を過ぎてからは、ボックスカーフやバレニア、スイフトなど、革本来の美しさを併せ持ったもののほうが、大人になった毎日の自分にスッとなじむような気がしています。もともと服や家具はヴィンテージが好きだったこともあり、エルメスのヴィンテージに興味を持ち始めたのも、同じ頃。パリの蚤の市で手に入れた’80年代のバーキンも、母から譲り受けた’70年代のボックスカーフのケリーも、特別な宝物です。
荷物は最小限というタイプなので、ポシェットケリーとの出合いは感動的でした。小さいのに必要なものはちゃんと入るし、深い藍色がデニムやスウェットなどのカジュアルな服にもすっとなじみます。重要なものや高価な買物をするときはだいたいネイビーを選んでしまいます。
エルメスはそのままの佇まいが美しいので装飾はしないのですが、唯一デコレーションされているのは、5歳の娘が「Rie」と私の名前を書いてポストイットを貼ったブラウンの「ケリー」。あまりにも愛らしくて、今もそのままにして使っています(笑)。エルメスは、百年経っても残っていくバッグ。コレクションしていくのではなく、私の思い出や経験を革に刻んで娘へ──。そう思える存在すべてが、もうロマンでしかないですよね。
〝海が大好き〟というRIEさんの小麦色の肌が映える、SEAのオーバーサイズジャケット×ショートパンツのセットアップにポシェットケリーを合わせたヘルシーなネイビールック。同トーンで合わせたエルメスのスエードアンクルブーツも春に真似したい新アイデア。
*バッグ、衣装はすべて私物です。ブティックへのお問い合わせはご遠慮ください。
撮影/金 玖美 ヘア・メーク/鈴木京子 取材・文/須賀美季 編集/澤辺麻衣子
VERY NaVY5月号『[大特集]NaVY的「麗しのBAG & SHOES」Part2 憧れが止まらない!「エルメス愛」&「シャネル愛」』より。詳しくは2022年4/7発売VERY NaVY5月号に掲載しています。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。