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進路相談

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2022.07.06 UP

小4で発達障害と診断された娘の中学受験。どうサポートすれば

【今月の質問】

小4で発達障害と診断。
やる気にムラがある娘の受験が心配です

[受験進路相談室]

Nさんの場合

【家族構成】
夫、長女(小5)、長男(小2)

【今回相談する子どもの状況】
小学校1年から公文に通いFまでやり、新小4のタイミングから地元密着型の老舗塾に通塾。サッカーチームを掛け持ちで週4日。

勉強以外の色々な気になることもでてくるなか発達検査を受けることにし、不注意優勢のADHDであることが去年の11月にわかり、今は薬を飲んでいる間は劇的に落ち着いています。特性なのか性格なのか、やる気にムラがあります。「頑張るよ!」と言ってたくさん課題をやる日もあれば、「もうやめる!どうせ頭悪いから!」と何もしたがらない日もある。なので塾の宿題終わらせるだけで精一杯です。5年生になって明らかに宿題も増えたので、この小康状態をどこまでキープできるか先が不安です。

発達の段階において、特に今の時期に適切なサポートを受けて、こういうふうにすればやっていけるんだっていう自分なりのスタイルを見つけることができたらいいですよね

N(相談者):小1の終わりから公文に行き始めて、中学受験は元々念頭にあったので3年生の2月までにF(小6相当)まで終わらせるという目標で行かせて、それは割とさっさと終わらせちゃいました。勉強に関してはそれほど心配はしてなかったんです。3年生の終わりに塾に入りました。最初は真ん中くらいでしたが、偏差値60くらいとったと思ったら30くらいになったりして安定もしなくて、そのうち全体的に下がってきて、いつの間にか一番下くらいのクラスをうろうろする感じに。そうこうするうちに、本人も勉強が嫌だと泣き喚くことが増えてきて、嫌だとしてもこんなに泣き喚くのって小4としてはちょっと普通じゃないんじゃないかなって夫と話して、1回病院で診てもらおうかって。それで児童精神科に連れて行ったのが去年の秋だったんですけど、それでADHD(注意欠如多動性障害)だとわかったんですね。注意力が足りないタイプで、作業スピードは早くて、耳からの情報に弱いと。

オ(おおたさん):WISCの結果で言うと、左から右に数値が出るの中の、右が高くて真ん中が低いっていうことですね。

N:そんな感じです。薬を飲み始めたら一気に普通の子になった感じがあって、12月から薬は今も続けていて。病院の先生にも飲むと授業に集中できるようになるから成績は上がると思うよって言われましたが、実際に成績もかなり上がって。それで本人も自信がついたみたいで。薬を飲んでるから安定している時間も長いんですけど、最近は薬も万全じゃないなと感じています。2週間に一度クラス替えのテストがあるんですけど、テスト前になると明らかに情緒不安定になるんです。テストの当日に家を出る時間にベッドに大の字になって、絶対にクラス下がるから行きたくないって言ったりして、なんとかなだめすかして連れて行くんですけど、終わったらケロッとしています。それを繰り返していて。やる気がある時とない時の差が凄くて、こんなに荒れたサイクルで勉強を続けていて大丈夫かなって……。日々の具体的な悩みとしては一人で勉強しないのが悩みです。親がいないと勉強しない。5年生になって明らかに宿題も増えてきて、それだともう回らなくなってきたなって。

オ:一緒にいると勉強するっていうのは励ましてあげるとようやくやるみたいな感じ?

N:ダイニングで勉強してるんですけど、私が隣の席に座っていれば「勉強するね」って。要はかなり子どもっぽいんですよね。一問ずつ丸つけしてもらおうみたいな感じ。一人でこれやっておいてねって言っても、やるよって言って全くやらないですね。

オ:公文の時はどうしてたんですか?

N:公文は学童でやっていました。パターンを覚えるとバーッとやるんですけど、数カ月後に同じことやらせると綺麗に忘れてるんですよ。公文みたいに同じことを繰り返しやるのは得意なんですけど、新しいことが出てきたり、今の塾が予習型っていうこともあって、一人で読んで予習するのが嫌みたいですね。

オ:状況はなんとなくわかりました。親が一緒にいないと勉強してくれませんっていうのが、そういう特性のお子さんなんですよね。それを変えることってできないですよね。

N:今の宿題量だと、親がいる時間に終わらせるのはかなり厳しくて。

オ:僕は発達障害の専門家じゃないから確かなことは言えないけど、不安が強く出るから、勉強を始める前も一人だと不安で不安で仕方ない、それが僕ら大人の想像を絶する辛さなんだと思う。サボってるとか怠けてるとかじゃなくて本当に怖いんだと思うんですね。本当に難しいですよね、そういう子の中学受験をどうサポートするか。お母さんじゃなくても誰かがそばにいてあげられるような、たとえば家庭教師も視野に入れて体制を整えるのは一つだろうし、あとは両親が近くにいる中で頑張れるところでとれる成績でよしとしようっていうのも一つかなと。それは塾の先生ともちゃんと話をして、この状況の中で頑張れることを応援したいと塾の先生と握っていくのも悪いことじゃないと思います。ネームブランドのある女子の伝統校は中堅の偏差値のところにたくさんあるので、そういう中学受験も決して悪いことじゃないなと思っていて。

N:本人はサッカーを夢中でやっているので、女子サッカー部のある中学がいいと言っています。

オ:それはいいですね。発達の段階において、特に今の時期に適切なサポートを受けて、こういうふうにすればやっていけるんだっていう自分なりのスタイルを見つけることができたらいいですよね。あまりトラウマを残さないように、自己肯定感を保てる中学受験をするということになるのかな。あまりリスクは侵さなくていいんじゃないの?って。でも、中学受験をしないこともある種リスクだと思うので。お嬢さんの特性を理解してあげて、家庭でできるだけの範囲で頑張れたら十分立派なんじゃないかな。塾の先生にはお薬を飲んでることは伝えてらっしゃるんですか?

N:まだ伝えてないんです。言った方がいいのかなっていうのも考えてはいて。授業中手を挙げめちゃくちゃ発表するタイプなんですよ、学校でもそうなんですけど。だから、そうは見えないっていうと変な言い方ですけど、すごく意欲的に見えるんですね。面談の時もそんなにいいクラスじゃなかったですけど、あんなに手を挙げる子が授業を聞いてないわけないですよ、クラスもちゃんと上がりますよっておっしゃってくれていて。

オ:いま、不登校の本を書いていて、そこでは発達障害を持っている子たちと接している学校の先生からも話をたくさん聞いています。グレーゾーンと言われる子たちっていうのは、困っている感じが外からもわからないし、自覚することもできないから、世間一般の基準に当てはめられちゃって、自分でも気づかないうちに辛い思いをしているとおっしゃっていて。そういう意味で言うと、塾の先生も発達障害のプロでもないと思うので、この子は元気な普通の子っていう感覚で接していると、なんでこれ頑張れないの?とかがズレちゃって、ちょっと喝入れてみようかなっていった時にすごい傷ついちゃうみたいなのが怖いかなと思うので。こういう特性があるってことは事前にお知らせしておいた方がいいような……。

N:学校の先生にはお話ししたことがあって、薄々気づいていたのかなっていう感じだったんですけど、塾の先生ってどこまで理解してくれるのかなって。

オ:こういう時にはこう対応してほしいとか、割と具体的にお嬢さんの状況を説明してあげないと、発達障害なんですっていう一言では理解できないかもしれませんよね。今の塾に相談してみてリアクションに不安を感じるようなら、発達障害のお子さんへの支援をうたっている塾に話を聞いてみるとかも柔軟に考えてもいいかもしれないですね。

N:今のところ塾でもやれてるから、今はこれでいいかなって思ってるんですけど、見極めるポイントってあるのでしょうか。また成績が下がってきたとか。

オ:うーん……やってみて、ダメならその時考えればいいっていうのも一つの手だけど、こういうタイプのお子さんだと、事が起こってからだと傷が深くなってしまう可能性もありますよね。そうすると、そこから立ち直るのにすごく時間がかかってしまうと思うので、診断名がついていて傾向がはっきりわかっているのであれば、それをわかった上で指導してくれるプロに頼んだ方がいいのかなっていうのが素人としての私の意見。発達障害って専門家の間でも意見が分かれていて何とも言えないところです。

テストの時期に備えて親が余裕を持てるように仕事を調整するとか、大人がさりげなく水面化でサポートしてあげられるといいですね。

N:志望校選びに関しても、率直に学校見学の時にこういう特性があるんですけどって聞いてみてもいいんでしょうか。

オ:基本的には聞いてみちゃう方がいいんだろうなって。それによって嫌な顔をされるならこちらからお断りした方がいいわけで。大丈夫ですよ、そういう子たくさんいますよって言ってくれる学校の方がいいですよね。サッカー部っていう軸があるのはわかりやすくていいかなと思います。サッカーの存在はすごく娘さんお力になっているはずなので、ここは大事にしてあげた方が。あとは特に試験前に情緒不安定になるっていうので、こういう関わり方をしてあげると持ち直すんだっていう試行錯誤をやっていく時期なのかしらね。

N:大暴れを受け止められる時と、こっちに余裕がなくて「いい加減にしなさい!」ってなっちゃう時があって、反省もあるんですけど。

オ:テストの時期に備えて親が余裕を持てるように仕事を調整するとか、大人がさりげなく水面化でサポートしてあげられるといいですね。発達障害の子を受け入れてる学校の先生たちは、生徒たちの気づかないところで支援をしています。一般的な学校と比べたらめちゃくちゃ細かいところで支援してるけど、生徒たちにはそれが当たり前だから、自分たちは普通だと思ってる。いわゆる合理的配慮っていうものだけど、そういうものがあれば、彼らはちゃんと自分の特性を活かして成長することができます。自分の得意なことや生きる道がはっきりしてくると、自分の特性を理解しながら生きていくことができる。でも凸凹があるものを普通の枠組みに押し込めようとすると傷ついて、社会から距離をとってしまう。それは不幸なケースだと思います。方針はちょっと見えてきました?

N:心のどこかで、やれてるから大丈夫って思ってたのはあるので、子どもの様子をもっとしっかり見てやっていかなきゃいけないなっていうのはわかりました。

オ:調子がいい時の前向きさっていうのが彼女の本質であって、一方でうまくいかない時の不安の強さだったりとか、ネガティブに入っちゃった時がものすごく辛いんだと思うので、そこへの手当てですよね。

N:女子サッカー部がある女子校はそんなに高偏差値じゃないところにもいくつかあったので、そういうところでよしとして勉強させるのがいいのかなって。

オ:それはすごくいいことですよ。偏差値とは関係ないところで頑張れるのはすごく理想的な中学受験になると思うので。

【 おおたさんからひとこと 】

実はうちの子には発達障害があって……というのは、まったく珍しいことではありません。私が取材する範囲で言えることは、その子がもっているさまざまな特性を理解して、それを矯正しようとするんじゃなくて、その特性に合わせた環境設定ができると、子どもが安定して、持ち味を発揮しやすくなるようだということです。

Profile

おおたとしまさ

教育ジャーナリスト。1973年東京都生まれ。東京外国語大学中退、上智大学英語学科卒。リクルートから独立後、育児・教育分野で活躍。執筆・講演活動を行う。著書は『なぜ中学受験するのか?』(光文社新書)など70冊以上。
http://toshimasaota.jp/

イラスト/Jody Asano コーディネート/宇野安紀子 編集/羽城麻子 

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