【留学体験】きっかけはLGBTQ。アメリカでの成功体験が大学進学に繋がった
きっかけはLGBTQの友人のカミングアウトから。ジェンダーフリートイレ研究をテーマに高1で10カ月のアメリカ留学。決して順調とは言えなかった環境にも負けず、さらなる目標とともに帰国した逞しいお子さんのお話をご紹介します。
Vol.25 高校1年で10カ月留学
【Hさんの場合】

Vol.25 高校1年で10カ月留学
【Hさんの場合】
【留学したときの学年】
高校1年生8月~
【留学した国】
アメリカ
【留学した学校】
Celera High School,Curry High School
【方法】
AYUSAを通じて
【ステイ先】
ホームステイ
【費用】
年間約160万円(学費、手数料込み)
※うち約150万円は「トビタテ!留学JAPAN」
奨学金が負担。生活費などは別途。
きっかけはLGBTQ。
アメリカでの厳しい経験で
問題意識がさらに深まりました
行くまで
本人の意思で、国際色豊かな中高一貫校を受験し、中学から寮生活していた娘。中3の夏休みに帰宅した際、語学のスキルアップを兼ねて1年間アメリカに留学をしたいと言われました。エージェント探しをする途中で、文科省が行っている留学支援「トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム」の存在を知り、エントリーすることに。「トビタテ!」はエントリー時に、留学先で自分が学びたいことをプレゼンするのですが、娘が選んだテーマはジェンダーフリーのトイレの研究。幼少期、お友達からLGBTQだというカミングアウトがあり、男女の区別があるトイレに行くことが辛いと打ち明けられたことがきっかけで、国内外のトイレを通してジェンダーフリーのトイレ研究に辿りついたようです。エージェントを通して行き先とホストの手配を決め、ちょうど中学卒業式の頃に「トビタテ!」の2次面接に合格! 競争率約10倍というアカデミックロング5期生としての奨学金を得て、高1の8月から渡米することに。それまでの半年間は、アメリカの文化や成績の取り方、危機管理に対する心得などを学ぶエージェント主催の研修合宿に参加したり、英検を受けるなど語学のスキルアップに励みました。留学に積極的な校風でしたので、学校を1年間休学することについては、学年を落とすことなく戻ることができる反面、帰国後すぐに始まる大学受験を見据えなければならず(親としては日本の大学を受けてほしいと話していました)、その準備を含めると慌ただしい期間でしたが、新たな挑戦に本人はルンルン♪で準備していたようです。
行ってから
ホームステイ形式でアラバマ州の公立高校へ留学。引き受けてもらえたホストファミリーによって学校が決まるシステムでした。ホストファミリーは基本ボランティアが多くこちらからリクエストしにくい事情もあり、当たり外れが多いとは聞いていましたが、最初のホストには夜に電気をつけての勉強を禁じられスマホの灯りで勉強したり、食事も満足に出してもらえず、空腹を満たすために「ママ、スーパーの食品売場の画像を送って」と娘から連絡が来た時には、涙が出ました。事を荒立てては娘をさらに大変な状況にさせることになると頭では理解しつつも、何もしてあげられない状況がもどかしくてたまらなかった時もありました。
様々な方に助けていただきホストチェンジは叶い、生活環境はぐっと良くなりましたが、今度は学校が少々荒れていて…親としては帰国もありかなと思いましたが「期間が終わるまで頑張る!」と娘は前向き。結局コロナ禍で帰国するまで10カ月頑張りました。もちろん悪い話ばかりではなく、得意な数学でアラバマ州の数学オリンピックで優勝できたり、2件目のホストの協力もありジェンダーフリートイレの研究もできるなど、成功体験を持って帰国できたおかげでしょうか、その後は東京大学に進学。現在は学生ながらSDGsに取り組む団体を主催し勢力的に活動している姿を見るにつけ、逆境にも負けなかった娘の意志の強さを頼もしく思います。
撮影/相澤琢磨 取材・文/鍋嶋まどか 編集/羽城麻子
*VERY NaVY5月号『実例・我が家の留学体験記』より。詳しくは2023年4/7発売VERY NaVY5月号に掲載しています。*取材内容は、留学当時の情報になります。