専門家に聞く、「共働き」目線の塾選び
そろそろ中学受験対策をと思っても、選択肢の多い今、どこに通わせればいいのか迷うママも多いはず。単純に合格実績だけを見て入れるのはご法度 そう話すのは「塾ソムリエ」の西村さん。共働き前提で「我が家に合った」塾を選ぶため、大手塾の基本のキを整理します。
これからの中学受験は共働きがメリットになりえます!
働きで手をかけられないということが、逆にこれからの受験では、メリットとなりうる時代です。受験の失敗で一番多いパターンは「コントロールしようと手をかけすぎたこと」によるもの。自由裁量権を与え、自分で自由に遊んで考える力を養えた子は受験にも強い。共働きだと結果的に自由裁量権を与えていかなければまわらない部分もあり、功を奏しやすいとも言えます。また、試験問題も大量演習繰り返し学習型でこれまではなんとか対応できましたが、去年から傾向が変わってきて、今年から確実に変化しました。特に上位校ほど、何を学んだかより、どのように学んだかを試しています。その場でちゃんと読んで、考え、表現できるかが問われます。子どもの自立を促せる共働きの環境をぜひ前向きに捉えてほしいと思います。共働きの塾選びでは、現状の学力がどうか、志望校がどの程度かによって変わってきます。個人的には、残業ありのハードな共働き家庭で御三家を狙いたいのであれば、家事・家庭教師含めアウトソーシングするのもおすすめ。ただ、合格を摑み取るには、塾に入るまでも重要。低学年期の読み書き計算と、毎日コツコツやる習慣を身につけたかどうか。そして「お皿並べてね」と言われたとき、完成形を思い描いて、どんなお皿が必要か自分で考えられるような生活上の工夫が自分なりにできているか。個人的には小学校4年から、もしくは3年2月からの通塾で十分と考えます。それまではこのような下地を作ることをどの家庭も大切にしてほしいと思います。
\ 塾ソムリエ西村さんに聞きました! /
実際に通わせているママの口コミ付き
5つの大手塾の特色をチェック
【 SAPIX 】
プリント整理は大変だがこのなかで唯一塾弁なし!自立している子向き
Q1. 通っている子の志望校レベルは?
御三家、難関志望クラスの層が厚く、逆ピラミッド型の人数構成
Q2. 塾の雰囲気は?
成績別でクラス分けされ、クラス数も多く、先生も淡々としていてさっぱりとした距離感。
Q3. 宿題の多さ、カリキュラム進度や難易度は?
宿題は多い。テキストも御三家・難関用に用意されているため、こなせないことへの劣等感を植え付けてしまうことも。進度も他の塾よりも速く、5年でほぼ6年間のカリキュラムを終わらせる。かなりの量のプリントが渡されるが、すべて解くことは御三家クラスでも困難で取捨選択が必要だが、子ども自身にはその選択が難しく家庭教師や個別指導を利用する率も高い。宿題チェックは大規模校舎では行っていないが、行っている校舎も。
Q4. どんな子、家庭に向いている?
親のフォローがかなりいるので手をかけられる家庭。プリント整理だけでも子どもでは難しい。宿題のチェックなどの面倒見がいいわけではないので自立した子や負けず嫌いな子向き。
【 日能研 】
復習重視でじっくり解かせるスタイルで子どもの後伸びに期待できる
Q1. 通っている子の志望校レベルは?
最難関から中堅まで間口は広め。中堅の裾野は広い
Q2. 塾の雰囲気は?
校舎によって雰囲気が違う。ドライでも熱血指導でもなく中間。ただクラスの席順が成績で決まるのはこの中では日能研だけ。それがモチベーションになるかはその子次第。
Q3. 宿題の多さ、カリキュラム進度や難易度は?
宿題は少し多め。カリキュラム進度はSAPIXなどと比べてやや遅いが、それでも小6の1学期には終わる。ただズレがあるため進度の速い塾への転塾は厳しいケースも。復習重視型。上位層をある程度抱えており、レベルの高い問題まで幅広くカバーしている。小5までのカリキュラム進度がゆっくりしているため、小6で急に早くレベルが上がることに注意が必要。
Q4. どんな子、家庭に向いている?
じっくり型の子に向いている。受験を意識するのが遅れた家庭も入りやすい。上位層もある程度いるため、上を狙えるかは入ってからの伸び次第。
【 四谷大塚 】
テキスト「予習シリーズ」は整理された内容で子ども自身での管理がしやすい
Q1. 通っている子の志望校レベルは?
中堅中心だが、最近は入塾率50%と入塾テストのレベルを上げるなどして御三家合格率も復活させようとしている
Q2. 塾の雰囲気は?
日能研同様、校舎や講師によって雰囲気が変わる。同じテキストを早稲田アカデミーも使っているため早稲田アカデミーから転塾してくる場合も。逆もしかり。
Q3. 宿題の多さ、カリキュラム進度や難易度は?
予習は強制ではないが講師による。宿題は多い。テキストが整理整頓されており教材の扱いは子どもに任せられる。基本から超難問まで揃えているが類題が少なく、知識の定着が曖昧になりやすいが、地頭の良い子には向いている。テキスト「予習シリーズ」の内容には定評がある。タブレット学習にも力を入れている。
Q4. どんな子、家庭に向いている?
面倒見はよいと言われる。テキストなども体系立ててあり、混乱せずに子どもが自分で扱えるので共働きでも管理はしやすい。
【 早稲田アカデミー 】
宿題は多めだが、体育会系の雰囲気で子どももやる気に。日曜特訓にも定評が
Q1. 通っている子の志望校レベルは?
最上位から中堅まで。最上位層の厚みが増してきている
Q2. 塾の雰囲気は?
体育会系の雰囲気。授業中も叱咤激励する声が響き、合う合わないは分かれるが、スポーツをしている子はなじみやすい傾向。
Q3. 宿題の多さ、カリキュラム進度や難易度は?
宿題についてはかつては一番多いことで有名だったが近頃はほかの塾と同じくらいの多さに落ち着いている。ただ宿題チェックは厳しいことが多い。日曜特訓(N・N志望校別)が効果を上げており、ほかの塾から日曜のみ早稲アカを受講する生徒も一定層いる。カリキュラムについては、ほぼ四谷大塚の「予習シリーズ」通りに進む。
Q4. どんな子、家庭に向いている?
しっかり勉強をさせる雰囲気で、面倒見はよい。塾の雰囲気に合うと伸びる。真ん中以上の成績で、さらに上を目指したい家庭におすすめ。
【 栄光ゼミナール 】
ほぼすべての教室に自習室があり、面倒見もいいので、アウトソーシング派も安心
Q1. 通っている子の志望校レベルは?
難関志望者は比較的少なめ、中堅から下位が多い
Q2. 塾の雰囲気は?
栄光のみ10人以下の少人数制ということもあり(ほかは平均15人程度)、アットホームで穏やかな雰囲気。おっとりした子が多い印象。
Q3. 宿題の多さ、カリキュラム進度や難易度は?
ほかの塾と比較すると宿題は少なめで、カリキュラム進度もゆっくりめ。そこまで難易度の高い問題は用意していない印象だが、御三家・難関志望者などは選抜クラスを設けることで特別に対応している。個別ブースや自習室が多く用意されているため、生徒がフォローを受けやすい環境作りがされている。
Q4. どんな子、家庭に向いている?
偏差値ではなく校風が良い学校を選ぶ場合など、受験で負荷をかけすぎたくない家庭に向く。面倒見がよく質問もしやすい雰囲気。
お話を伺ったのは…
塾ソムリエ 西村則康さん
40年以上中高受験指導一筋に、日本初の塾ソムリエとして活躍。『中学受験 入塾テストで上位クラスに入るスタートダッシュ[算数]』¥1,800(青春出版社)など著書多数。
イラスト/Jody Asano 取材・文/有馬美穂 編集/羽城麻子
VERY NAVY 6月号『お弁当は?自習室は?拘束時間は?「共働き」目線の塾選び』から
詳しくは2020年5/7発売VERY NAVY 6月号に掲載しています。
※コメントは在籍時のもので、現在は異なる場合もあります。現在の詳しい情報につきましては恐れ入りますが各塾にご確認をお願いします。