単行本デビューだけでなく
企業PRや自治体からの発注も!
野原広子さん※5はコミックエッセイ編集部が主催する「コミックエッセイプチ大賞」に応募してくださったのがご縁になり、『娘が学校に行きません 親子で迷った198日間』でデビュー。その後、『離婚してもいいですか? 翔子の場合』や『消えたママ友』といった話題作を次々と発表されています。野原さんの作品は「セミフィクション」というジャンルで、日常をベースにしながら、ご自身で取材やヒアリングをし、さらに肉付けしていく独自のスタイル。「これって実話?」と思わせるストーリーは、やはりご自身の身近にある題材を描いているからだと思います。
発達障害に関する対応や回答が自治体によって異なることで、親が混乱したり孤立しやすい状況を当事者目線で描いたのが、モンズースーさん※6。個人的な体験を漫画としてまとめることで、発達障害に悩む方々の指標のひとつになったように思います。
あとは我々のような出版社が単行本を出版するだけでなく、企業からの依頼でPR漫画を描いている方や、自治体から仕事がくる方もいますので、今は漫画だけに限らない、幅広い活躍も期待できます。ツルリンゴスターさんや野原さんのように独自の世界観を持つことや、コミックエッセイ以外でも活躍の場を広げていくことは、将来的にもとてもいいことだと思いますね。
──「将来的に」というのは、お母さん漫画家としてどうやってキャリアを積んでいくか、ということでしょうか?
因田 ご自身の子育てを漫画にして発表するということは、自分の私生活を公開し続けることでもあります。赤ちゃんのうちはまだいいかもしれませんが、お子さんが成長するにつれて、プライバシーの部分で悩むことが増えるようです。そういったこともあり、お子さんの小学校入学を節目に、次の目標を見つけているお母さんが多いですね。今までは自分や子どもの人生を描いてきたけど、今度は誰かの人生を描けるようになりたいとか、創作漫画に挑戦したり、企業のPR専門でいくとか、皆さんそれぞれです。
SNSへの投稿が
自分が変わるきっかけに
子育ての時代は本当に一瞬で、刻一刻と状況が変わっていきます。その息抜きだったり、どこにもぶつけられない不安だったり、ひとまず何でも描いてみて、アップしてみてほしいなと思います。投稿したイラストがきっかけで仲間ができて、それが仕事につながったりして、自分が変わるきっかけになるのではないでしょうか。
それにオンラインが主流の今は、住んでいる場所も国内外、まったく問いません。実際我々も、お母さん漫画家の方との打ち合わせはオンラインが主流。育児の合間の30分ほどでさっと打ち合わせをさせてもらったり、となりで乳幼児が寝ているすきに……なんてことも(笑)。手書きのメモ書きからはじめて単行本デビューできる時代なので、「私なんて……」と思うことなく、ぜひ気軽に投稿からはじめてみてください。我々も日々チェックしておりますので!(笑)
KADOKAWA 文芸・映像事業局
コミックエッセイ編集部 コミックエッセイ編集者
因田亜希子(いんでん·あきこ)
編集プロダクションを経て2000年、KADOKAWAに入社。ʼ18年からコミックエッセイに携わる。これまでに『松本ぷりっつの夫婦漫才旅 ときどき3姉妹』(松本ぷりっつ)、『おかあさんライフ。』(たかぎなおこ)などを手掛け、ʼ19年に担当した実用コミックエッセイ『おうち性教育はじめます』(フクチマミ、村瀬幸浩)は20万部超の大ヒットを記録した。プライベートでは7歳児の母。
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*版元表記のないコミックはすべてKADOKAWAから発売
取材・文/小泉なつみ 編集/フォレスト・ガンプJr. 題字・イラスト/こしいみほ、まる
*VERY2022年1月号「「お母さん」は漫画家への近道!?」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。