異才発掘プロジェクト
「東大ROCKET」が目指すもの
「学校に行かない」からこそ
できることがたくさんある
不登校の特権を生かした教育をしたいと5年前からROCKETの活動をはじめました。あえて、普段学校に通っている子は参加が難しい平日をメインに活動しています。集まってくるのは学校の枠組みからはみ出したユニークな子どもたち。机にじっと座ってみんなと同じペースで学ぶことが苦手だと、学校では問題児扱いされるでしょう。でもROCKETは人と違う変わったことをしている子どもほど活躍できる場所です。日本財団によれば中学生の不登校は33万人。これは文科省の調査の実に3倍の数字です。10人に1人が不登校ということになる。なぜこういうことが起きるかというと、文科省では30日以上の長期欠席を不登校と定義していて、それよりも短い日数だったり、保健室登校のように教室以外に通う子どもの数をカウントしていないからです。
全国の子どもに
「学校お休み券」を配りたい
私の夢は、日本全国の子どもたちに1週間学校を休めるチケットを配ること。その券を使って堂々と学校を休み、その間は自分の興味のあることをとことん追究できる。そんな世の中を作りたいのです。今年、ROCKETでは「山手線ホームの長さを測れ!」 という課題を出しました。東大生も参戦し、「JRや鉄オタに教えてもらう」「国会図書館で調べる」「現地に行って測る」などチームごとのアイデアで謎を解決しようと挑戦しました。結果はどうなったと思いますか。環状線である山手線のホームはまっすぐではないので正確に計測するのは難しいのですが、優勝は実際に現地に行ったチーム。彼らは公開されていたデータには誤りがあることにも気が付きました。世の中で「正解」だとされていることを鵜呑みにするのではなく、「はたして本当なのだろうか」と疑問に思う心を育てることが真の教育なのではないでしょうか。
褒めるだけではなく
能力を生かすチャンスを作る
私はそのユニークさゆえに学校に馴染めない子どもが無理に学校に通うことで不適応を起こす現状に疑問を感じています。もっと新しい学びの場所と自由な学びのスタイルが必要なはず。今年から、よりたくさんの子どもに参加してもらえるように、プログラムの応募方法を変更しました。これまでも、いろいろな子どもが活躍しています。キノコが大好きで、野生のトリュフを採ってくる子どもがいました。そんな趣味を理解する友だちはほとんどいないんです。でも、「トリュフを10万円で譲ってほしい!」とミシュランに掲載される店のシェフから懇願されていました。価値がわかる人に出会えばすごいと認めてもらえる。ユニークな子どもをただ褒めるだけではなく、その能力を社会に還元していく、仕組みを作りたいのです。
撮影/古本麻由未(東京シューレ分) 取材・文/髙田翔子 編集/フォレスト・ガンプJr.
*VERY2019年7月号「小中学生不登校児童数は14万人越え もし、子どもが『学校に行きたくない』と言ったら……?」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。