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育休取得が話題【フジテレビ榎並大二郎アナ】2度目の育休は「『自分はどう生きたいのか』を問い直す時間に」

フジテレビで帯番組を担当する男性アナウンサーとして初めて育児休業を取り、話題になった榎並大二郎さん。1度目は2週間だった育休は、2度目は3カ月半取得。長期で番組の現場を離れてみて自分の働き方も生き方も見つめ直す機会になったそう。そんなパパとしてリアルな変化を語ってくれました。

家族のコトバ

からのコトバ
みんなが育休を取りやすくなるといいね

妻は「これやって」「こうしなよ」と指示するのではなく、「あなたはどう思う?」と問いかけてくれる人。だから初めての家事も育児も自分事にしやすかったのかもしれません。

4年前、待望の妻の第一子妊娠がわかったとき、私のなかで「父親になる」という実感はまだどこか遠いものでした。けれど、出産準備のために訪れた大型ベビー用品店にはこれまで自分が知らなかった“未知の世界”が目の前に広がっており、「自分もいよいよこの世界に足を踏み入れるのだ」と初めて実感しました。ただ「育休」という言葉を自分事として意識したのは、もう少し後のこと。ニュースで男性育休の話題を扱うことはありましたが、「自分が取る」という発想にはつながっていませんでした。当初は育休と銘打つつもりもなく、通常の夏休み1週間に、有給休暇を足してもう1週間。まずはその2週間で、赤ちゃんがいる生活に慣れようという感覚でした。ところが、上司に妻の妊娠を報告したとき、間髪を容れずに「育休はどうする?」と聞かれてハッとし、そこで初めて「育休」という制度を自分事として意識したのです。弊社のアナウンス局では、当時、帯番組を担当する男性アナウンサーが育休を取った前例はありませんでした。しかし次に迷ったのが、たった2週間で本当に育休と言ってしまっていいのかな?ということ。形だけに見えてしまうのではないか、どう受け取られるのだろう、という不安が正直ありました。それでも周囲とも相談し、最終的には育休として取ることを視聴者にもきちんとお伝えすることに決めました。妻の実樹が「いいんじゃない? 後輩たちも取りやすくなると思うよ」と背中を押してくれたことも大きかったです。私個人の選択であると同時に、次に続く人の空気を少し変えられるかもしれない、そう思えました。

小さな洗濯物。
夜間授乳は、寝ぼけて粉ミルクを何さじ入れたかわからなくなることも。
離乳食。初めてトマトを食べた時の表情が忘れられません。

(有村さん)ワンピース¥25,300(エミ/エミ ニュウマン新宿店)バッグ¥71,500(アンテプリマ/ワイヤーバッグ/アンテプリマジャパン)ピアス¥15,180、バングル¥14,520、リング[左手]¥15,400(すべてチビ・ジュエルズ/チビジュエルズ・ジャパン)リング[右手]¥17,600(ピニャッタ/ZUTTOHOLIC)

公表して見えた
“育休を使える空気”の大切さ

実際に公表してみると、有り難いことに好意的に受け止めていただきました。社内でも、すでに育休を取っていた男性社員から「榎並さんの行動のおかげでさらに取りやすくなるね」と声をかけてもらい、公表してよかったと心から思いました。その後、弊社の男性アナウンサーたちも育休を取るようになり、今ではフジテレビアナウンス局の男性育休取得率は100%になりました。制度はあっても“使える空気”がなければ踏み出せない。たまたま僕はアナウンサーという立場で育休をオープンにすることになりましたが、誰かひとりの実例が、次の人の背中を押すことがあるのだと実感する出来事でした。

たった2週間の育休でも、感じたことはたくさんありました。まず、社会から切り離されるような感覚。家にいてテレビをつけると、自分が出ていたはずの番組が普通に回っている。仲間たちが守ってくれている感謝と頼もしさと同時に、少しの寂しさもありました。2週間でこれだけ感じるなら、もっと長く育休を取る人たちは、どれだけの覚悟と勇気で復職しているんだろう。復職する社員たちへの思いも新たになりました。

幸せだったこともたくさんあります。長男の小さな変化に気づけたこと。それと同じくらい大きな気づきだったのが、家事でした。料理は、献立を考え食材を用意し作って皿を洗って、最後にしまうところまでが料理。洗濯も、回して干すだけでなく、取り込んで畳んでしまうところまでが一連の流れ。家事って点ではなく線なんだと実感しました。毎日されている方には呆れられてしまいそうですが、恥ずかしながら実家暮らしから結婚したので、家事スキルはほぼゼロ。妻に一から指南を受けました。その衝撃は僕自身の中で大きく、消耗品の在庫、ベビーカーで通れる動線、おむつ替えスペース。今まで見えていなかったものが自然と見えるようになり、脳みその中に新しい部屋がひとつできたような感覚でした。

第二子誕生に向けて、長男と作戦会議中。
誕生後、早くも読み聞かせをしてくれました。
お台場は子連れに優しい街。休みもお台場にいることが多いです。

長男の生活を守るため
選んだ3カ月半の育休

第二子のときは、3カ月半の育休を取りました。理由は明確で、長男の生活をできるだけ変えたくなかったから。妻の里帰りも選択肢にはありましたが、僕が休めるなら、今の生活のなかで家族を迎えようと考えました。そのとき母からよく言われていたのが「長男を優先してあげて」ということ。母は長文のLINEを突然送ってくるタイプなんですが(笑)、内容は一貫していました。「上の子を一番にしてあげて」「変わらず大事にされていると感じることが大切」。三人きょうだいを育てた母の言葉には、経験からくる強さがありました。

実際、第二子が生まれてから、長男には登園しぶりが出ました。自転車を降りる前に「今日はやめようかな」と言い出し、最後には泣いて「行かない」と暴れるように。僕も強い言葉で叱ってしまうこともありました。あの時期は本当に苦しかった。でも、育休中だったからこそ毎日真剣に向き合えました。幼稚園の先生の「ここまで連れてきてくれれば大丈夫です」「入ったらケロッとしていますよ」という励ましにも救われました。また妻も、帰ったら小さなお菓子を食べようねと約束する方法を見つけてくれ、少しずつスムーズに登園できる日が増えていきました。そしてある日、長男が自ら園舎のほうへスタスタ歩いて行ったんです。途中でくるっと振り返って、「パパ、もう僕大丈夫だから」。あのドラマのような光景は忘れられません。今のところ、私の子育てのハイライトはここ(笑)。彼なりに闘っていたんだと思うと、胸がいっぱいになりました。第二子の成長をずっと見られたことも大きな喜びでしたが、育休は新生児のお世話だけでなく、家族全体の節目に向き合う時間なのだと感じました。

からのコトバ
2人目が生まれた今は
お兄ちゃんを優先してあげて

母がよく口にしていた「足るを知る」というコトバは、親になってからより深く刺さるようになりました。育児も完璧を目指すと苦しくなる。足りているものに目を向ける。大切な子育ての知恵です。

手放すことで気づいた
チームが強くなる理由

仕事への向き合い方も変わりました。以前の僕は、任された仕事は全部受けたいタイプで、それが美徳だと思っていました。手放すことは怖かった。でも、入社以来初めて3カ月半も職場を離れたことで、俯瞰して見られるようになりました。椅子が誰かに取られるのではなく、代行を務めてくれた後輩が経験を積んで頼もしく見えた。誰かが休むことは、現場が強くなるきっかけにもなるのだと考えられるようになりました。

現在は、夕方のニュース番組「Live News イット!」のメインキャスターを、遠藤玲子アナウンサー、山﨑夕貴アナウンサーとともに担当しています。これまでより番組をチームとして捉えている今、後輩である山﨑さんから「榎並さんがチームにいると安心感がすごい」と言ってもらえることは素直に嬉しいです。仲間たちとは、真面目な話からたわいもない話まで、とにかく「会話」をするように。番組内でのアドリブって、勢いではなく、その人たちの“日々”が出るものなんだなと感じているからです。きれいにまとめたコメントではなく、生活者として出てくる思いを伝えたい。「これを言っておけば間違いない」という言葉を選びたくなる瞬間は今でもある。ただ、それを積み重ねると言葉がどこか薄くなっていく。そのとき頼りになるのが「壁打ち相手」の存在です。遠藤さん、山﨑さん、安宅晃樹さん、先輩・後輩関係なく「このニュアンスで言うのってどう思う?」「こう言ったらどう捉えられるかな?」と聞ける仲間。もちろん、何でもかんでも言えばいいわけじゃない。けれど、本音をゼロにしない。生活者としての温度を残す。そのバランスをみんなで探している最中で、隣で一緒に作っているからこそのコミュニケーションを大切にしています。

育休は、結果的に「自分はどう生きたいのか」を問い直す時間でもありました。仕事も家庭も大事、という気持ちは変わりません。でも以前なら、休日出勤になってもできる限り引き受けたいと思っていたけれど、今は、休日は家族との時間を優先する。どちらも大切にできるバランス感覚が、自分のなかにできてきた気がします。仕事はやろうと思えばどこまでもできてしまうけれど、子どもの成長や家族の“今”は、後から取り戻せるものではないと感じます。仕事で行き詰まっても、自分には守りたい家庭がある。そんな軸のようなものができてからはひとりで抱え込まず以前より気持ちが楽になった気もします。夫婦の時間は減りましたが、寝かしつけ後の何気ない会話が今はとても贅沢に思えるし、育休中に一度だけ二人で映画を観に行けた時間も良い思い出。当たり前ではない時間を大切にしたい。育休は、僕にそのことを教えてくれました。

同僚からのコトバ
榎並さんがチームにいる安心感がすごい

山﨑さんもママ。大変だったことや失敗したことを、「やっちゃいました!」みたいに少し笑いに変えながら話してくれる。ニュース番組の現場でも、その軽やかさや前向きさ、生活者としての実感が、チームの空気をやわらげてくれています。

榎並さんのHistory

カナヅチだった自分を変えようと、高校・大学と遠泳に打ち込みました。
2016年、モデルの有村実樹さんと出会いから10年の節目に結婚しました。出会いは、妻の撮影現場に、当時大学生だった私がアルバイトで参加したこと。
2021年、長男が誕生。育休取得はフジテレビの帯番組を担当する男性アナでは初。
2025年、長女誕生。長男にはいきなりママが赤ちゃんを抱っこしている姿を見せるのではなく、まず長男とママの時間を作りました。
第一子のときはインスタグラムに日々を記録する余裕があったのに、第二子ではそれも追いつかないほど。育児にフルコミットすると、逃げ場がないという感覚も。
この春から、ニュース番組「Live News イット!」(月〜金 15:42〜19:00)のメインキャスターに就任。

Profile

フジテレビアナウンサー
榎並大二郎(えなみ だいじろう)さん
1985年生まれ。2008年フジテレビ入社。アナウンサーとして報道・バラエティー番組などを幅広く担当し、現在は「Live News イット!」(月〜金曜 15:42〜19:00)のメインキャスターを務める。2016年に交際期間10年を経てモデルの有村実樹さんと結婚。現在は、4歳男の子と0歳女の子のパパ。インスタグラムでも育休や家族との日々を発信し、男性の積極的な子育て参加を身近に感じさせる存在。趣味はトライアスロンと手芸という意外な一面も。

撮影/須藤敬一 ヘア・メイク/MAKI(有村さん、榎並さんお母様) スタイリスト/楠 玲子(有村さん) 取材・文/嶺村真由子 編集/中台麻理恵
*VERY2026年9月号「家族のコトバ」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。

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