ママの慌ただしさがさらに加速する新生活、まっさきに削減されるのは自分の支度時間。悠長にオシャレする時間はないけど、やっぱり自分の姿に「こんなはずじゃ…」と凹みたくないですよね。ワーママ、専業ママ、乳幼児ママ、どんなママだって多かれ少なかれ抱えている「時間がない！」という心の叫び。今回は、そんなママたちから共感の声が寄せられた夏生さえりさんのエッセイをご紹介します。

走れ、光れ、私。
　　文・夏生さえり

私の朝は、忙しい。

子の起きる気配で目を開けて、寝ぼけ眼で時間確認。

「え？もうこんな時間？」

『天国と地獄』が脳内で流れ出し、タイムリミットに向けて「ヨーイドン！」。

やかましすぎる朝が、幕を開ける。

子がダラダラと食べる朝ごはんを横目に自分の食事はかきこんで、

洗面所から顔を出してリビングの様子を見つつ、千手観音ばりの手さばきでメイク。

保育園グッズをカバンに詰め、オムツ姿で走る子を捕まえて、お着替え。

また逃げ出した子を捕まえて、次は歯磨き。

小走りでクローゼットと洗面所を行き来して、私の身支度もなんとか完了！

よかった間に合いそう……と自転車置き場に着くも

「イヤ！イヤ！ブーブーがいい！」と暴れ出して、5分のロスタイム。

「やばい、時間がない！」

活きのいい魚みたいに動き回る11キロの息子を抱えあげて座らせ、

電動自転車を漕ぎ出して、風の中を爆速で突っ切って、保育園に送り届けて……。

保育園の門を出るころには、嵐が去ったように疲弊。

それで通勤電車にすべりこんで、職場のトイレで自分を見て、青ざめる。

「今日の眉毛、濃すぎ！！！！」

子どものお世話が優先で、目線はずっと下のほう。

だから四方八方に飛び出るアホ毛も、一部塗り忘れたティントの口紅も、

靴のミスマッチも、どれも出かけてしばらく経ってから気づいて、白目になる。

遊園地の写真。夏の旅行の写真。子どもの姿はとびきりかわいいのに、

その横にいる私はひどい姿で、笑っちゃう。

育児も、仕事も、暮らしも、趣味も、オシャレも、ぜんぜん時間が足りなくて、

何をしていても「もうこんな時間!?」って悲鳴をあげて、

あっというまに季節が移る。

むかし、誰かが言った。

「子どもが生まれたら我慢が多くなるよ」

それを信じて怯えたときもあったっけ。

でも、いまはわかる。我慢？ まさか、とんでもない。

諦めたくない大事にしたいもので溢れて、むしろ毎日、最高に発光している。

大事なものを、生きる時間にぎゅうぎゅうに詰め込んで、

たまに悩みながらも胸張って、欲張って、頑張って。

子どもが生まれてから、私、加速している。

生きる時間は足りないね。

両手をいっぱい広げて、できる限りを抱きしめて、

ボサボサのまま、とびきり幸福に。走れ、光れ、私。

〝スキルアップを推奨されるほど一見時間があるように思われる育休中だけど、実際は毎分毎秒乳児のお世話に追われてさらに上の子は短縮保育になったりで驚くほど何もできないまま、また今日もお迎えタイム。散らかったリビング、14時を過ぎてもまだテーブルに残った朝食の残りをつまんで、いざ、抱っこ紐で出発〟

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