共働きで夫婦別々のお財布ゆえに、夫婦でお金の話をするのが億劫…というママのお悩み相談。お金から派生して、キャリアや子どもの受験など、実は夫婦で話しておきたいことが次々と出てくる展開に。お金のプロ・田内学さんのアドバイスとは?
元GS、社会的金融教育家・田内 学さんが回答!
ママのための
「お金の教育」悩み相談室
\今月のお悩み/
夫婦でお金の話をするのが億劫。
どうマインドセット
すればいいでしょうか?
【相談者】
Mさん(30代共働き、4歳女の子ママ)
総合職で14年目、現在は時短勤務なものの、ほぼフルタイムと同じくらいの勤務時間。そもそも夫婦でお金の話をするのが億劫で…。
田内さん(以下、田内) 今は4歳のお子さんを育てながら共働きなんですね。
Mさん(以下、M) はい、そうです。ちょうど3年前に夫婦でペアローンを組んで都心部にマンションを購入しました。
田内 政策金利が1%に利上げされたというニュースも出ていますよね。金利に対する心配はありますか?
M 夫も私もお互い働いていて、家族3人で暮らす程度の収入はあると思っています。それに、たった3年ですが購入当時よりも周辺のマンション価格が上がっているので、ローンに関する心配はありません。娘が小学校を卒業し中学受験が終わったら、進学先の近くに住み替えるつもりで。
田内 ちょっと聞きにくいのですが、ペアローンを組む際に、離婚した場合を懸念点として挙げる人も多いですよね。
M はい、それはペアローンを検討した際、頭をよぎりました(笑)。我が家は大丈夫と思いつつ、どこかでうっすら不安はあるかもしれません。
田内 夫婦別々の財布、とのことですが、支払いはどう分けていますか?
M まずローンはそれぞれが払い、光熱費は夫、食費も基本的には夫です。私は毎月10万円を夫に生活費として渡しています。旅行に行く際の費用は折半。あとは子どもの習い事が2つあるので、片方は私、片方は夫という形で、それぞれが負担しています。ただ、これから習い事を増やしたいと思っていて、その都度「今回はどっちが払う?」と話し合わなければいけないのがストレスで。
田内 生活費として負担が決まっている部分以外は、すべてお互いの自由になるということですよね。お互いに使い道には口を出さない感じでしょうか。
M うちは完全にそれですね。夫の年収も貯蓄額も把握していません。このままでいいのか?とはずっと考えていますが…。
田内 明文化しない限り都度都度「どっちが払う?」という調整になりますよね。そのとき「今は余裕がない」と言われても、心の中では「えっ、そっちはこの前、新しいゴルフクラブを買っていたよね?」的なことが出てきてしまうこともあるわけで。
M ありますね。夫は最近トレカにハマっています。レアカードを狙ってたくさん買って、いいカードが出たら売っているようです。ただ、つい最近、数十万円単位購入していることが発覚。口を出さないつもりでしたが、それでも「そんなに無駄遣いしてたのか」と思い、少し詰めました。ただ私も買物が好きですし、「この前ジュエリーを買ってたじゃん」と言われたら、なかなか言い返せないところもあって。
アドバイス1
パートナーとは、どこまで一緒に
責任を引き受けるか?を考えて
田内 今後、お子さんの受験のサポートが始まると「どちらの“時間”を使うのか」という話にもなりそうですね。
M それも気になっています。私自身、仕事にやりがいもあり、今は管理職を目指しています。そのために去年はかなり働き、ようやく管理職になれるグレードまで上がりました。次は本当に管理職になるため、今後さらに頑張らないといけない状況です。ただ、正直なところ夫は私に管理職になってほしくないようで。「今でも時間がないのに、さらに忙しくなったら家庭が回らない」と思っているようで…。
田内 なるほど。お互いの仕事観をシェアする時間はありますか?
M 娘が寝た後軽く話をすることはありますが、わざわざ時間はとっていないかも。夫は話をちゃんと聞いてくれる人ですが、とにかく忙しくて夜中まで仕事することも。そんな状況でわざわざ時間を作って重い話をする必要があるのかなと思ってしまって。
田内 今まさに困っているというわけではなくて、生活も回っているので、ついつい不安を先送りしているんですね。それは話せる関係性のうちに話しておいたほうがいいかもしれません。また、お悩みは、一見お金に関する不安のようでいて、実は時間と責任の話だと感じました。Mさんは管理職を目指し、もっと仕事を頑張りたい。一方で、中学受験を考えるなら子どもに向き合う時間も必要になる。そのときに「夫婦どちらが負担するのか」ではなく、「どこまで夫婦で一緒に責任を引き受けるのか」という話。そう考えると、まず確認したいのは、Mさん自身が中学受験にどんな価値を感じているのか。夫婦で話し合うにしても、そこが見えていないと、「誰が払うか」「誰が動くか」の話になってしまいますから。改めて、Mさんはなぜ中学受験をさせたいと思っているのでしょうか?
M 私自身、中学受験を経験しているのが大きいかも。大学に入って、安定した企業に就職できればという思いもあります。ただ、夫は今の段階で習い事を増やすのは娘にとって負担になるのでは?と言っているので、もし追加するのであれば、私が費用を持つ必要がありそうで。
アドバイス2
「お金で選択肢を増やそう」と
誘導されていないか、
一旦立ち止まって
田内 なるほど。最近は世の中全体が、「お金を使うことで選択肢を増やしましょう」という方向に行きすぎている気が、個人的にはするんです。そういう風潮が多いことは把握しておいたほうがいい。住宅でいえば、ペアローンや50年ローンもそう。本来なら高すぎて手が届かないものでも、買えるようにする仕組みが出てくる。教育も同じで、子どもの将来の選択肢を増やすためにと、小さいうちから高額な塾や習い事に通わせるケースなど。これも、親の経済力勝負になります。もちろん大学に行く意味がなくなるわけではありません。というよりも、大学に入れば安泰という時代でもないし、会社に入ったからといって一生安心できるわけでもない。だから中学受験も、「大学に入りやすくなるから」だけではなく、その過程で何を学べるのかを考えてあげる必要があります。
M 本当ですね。それでいうと、私は中学受験の経験がその後の人生で強みになりました。小学生のうちに、自分で目標を立てて実行できた体験が大きくて。
田内 Mさんの中には、一つの指針があるのですね。今はSNSや周囲の空気の中で、なんとなく「こうしたほうがいい」と思わされることが多い時代です。だからこそなおさら、Mさんが持つ「なぜ中学受験をさせたいのか」を、夫さんにも共有しておくことが大事ですね。Mさんにとっては、「目標を立てて頑張る経験」に価値がある。一方で、夫さんは別のことを気にしている可能性もありそう。管理職になることについて、夫さんが前向きではない、という話もありましたが、その裏には、Mさんと娘さんが接する時間が減ることへの心配もあるのかも、と。
M それは言われたことがあります! 「あなたも娘と接する時間が少なくなるけれど、それでいいの?」って。田内さんとお話ししていて、お金以前のこと、生活に関する価値観についてもまったく話し合えていないことに気づきました。
田内 膝を突き合わせて話すのが難しいのなら、二人で外食しながら気楽に話すのもよさそうです。
M そもそも、お互いに二人きりで話す時間が全然ないんです。夫の両親も高齢なので頼りづらくて。記念日ですら二人きりにはなれなくて。
田内 その時間をつくるために、シッターさんにお願いすることは考えられますか?
M まだお願いしたことがないんです。娘が心細くなるのではないかと気になってしまって。
田内 いきなり子どもを預けて外に出ると考えるとハードルが高いですが、最初は同じ空間にいて、慣れてきたら1時間だけ夫婦でランチに行くという使い方もありますよね。親以外の大人と接することは、子どもにとってもいい経験になりますし、同じ人にお願いしていくうちに、子どもとシッターさんの間に関係性ができていくこともあります。
M 確かに、それなら少しハードルが下がる気がしますね。
田内 本当に解消したいのは、お金のことそのものより、Mさんが今抱えている不安や焦り。仕事をもっと頑張りたい気持ちがある一方で、思うようにできていない悔しさもある。まずはそういう気持ちを、夫さんと共有してみるといいのではないでしょうか。お金は、やりたいことや大事にしたいことを叶えるためのツール。だからこそ家族の中では、「いくら必要か」の前に、「何が不安なのか」「何を大事にしたいのか」を話すことが大切なのだと思います。

田内 学さん
2001年、東京大学工学部卒業。2003年、同大学院情報理工学系研究科修士課程修了後、ゴールドマン・サックス証券入社。日本国債、円金利デリバティブ、長期為替などのトレーダーに。2019年に退職後は、子育てのかたわら、金融教育家として講演や執筆活動を行っている。@tauchimnbで経済やお金の情報を発信中。

「読者が選ぶビジネス書グランプリ2026」
リベラルアーツ部門第1位受賞
『お金の不安という幻想』
田内 学著 ¥1,650/朝日新聞出版
お金の不安から抜け出すための生存戦略。老後の不安に怯える学生、年収で価値を測る子どもたち。膨らむお金の不安の背景には何があるのか? 労働と投資、どちらが報われる?など1万人の声から導き出した不安を希望に変える一冊。
撮影/吉澤健太 イラスト/犬ん子 取材・文/樋口可奈子 編集/中台麻理恵
*VERY2026年8月号『ママのための「お金教育」悩み相談室』より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。











