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「シッター利用は、お金も子どもとの時間も減る?」復職ママの悩みに“お金のプロ”が回答

シッターを頼むべきか悩む母猫のイラスト

共働きでシッターに頼りたいけど、お金や子どもとの時間が減るのではと不安なママへ。働き方と子育てのバランスに悩む今こそ知りたい新しいお金の考え方。今回はお金のプロが、時間の使い方と価値の捉え方をわかりやすく解説します!

元GS、社会的金融教育家・田内 学さんが回答!
ママのための「お金の教育」
悩み相談室

今月のお悩み
夫が育休中、自分はフル復帰中。
夫の復職後はシッターを検討するも、
お金も子どもとの時間も減るのが不安…

相談者
Aさん(40代共働き、子どもは1歳と3歳)
会社員。1人目出産後は1年半育休を取得、2人目を出産した昨年は産後6週間で仕事復帰、夫が育休を取得し、家事はすべて担当してくれている。

シッター=ラクしている、では
ないですよね?

田内 学さん(以下、田内) 今のご家庭の状況ですが、下のお子さんが1歳で、パートナーの方が育休を取っていらっしゃるんですね。
Aさん(以下、A) 昨年第2子を出産して、私は産後6週間で復職しました。夫は今年の4月まで育休を取得中です。家事と上の子の保育園送迎、平日日中の下の子のお世話は、基本的にすべて夫が担当しています。2人目が生まれる直前にどうしてもやりたい仕事が舞い込んできたので、育休を早く切り上げると決めました。ただ、正直なところ今はそれでも回っていません。春以降、夫が復職したらどうなるのだろうと今から不安です。両親も遠方で、頼ることができないので…。
田内 回っていないというのは仕事ですか? ご家庭ですか?
A 仕事です。夫婦2人で家事育児に取り組んでいても結構てんてこ舞いで。夫が育休を取ってくれているとはいえ、残業が一切できなくなりました。とにかく時間がない。「残業したいなら、保育園後にシッターさんをお願いしたら?」とアドバイスをもらうも、人に託すことへの抵抗感もあって…単純にお金がかかるという点でも踏ん切りがつきません。忙しさをお金で解決する選択肢があることは分かっていても、シッターを使えば子どもと過ごす時間が減り、お金も減っていくことに強い抵抗があります。
田内 お話を聞いていて、家庭をどう回すかというよりも、仕事をどう回すかという点に不安を感じられているように思いました。
A そうなんです。家庭よりも、むしろ仕事のほうが問題が山積みです。
田内 具体的に、仕事のどんなところに不安があるのでしょう?
A 仕事では「いろんな人に迷惑をかけている」という気持ちが拭えなく、常に後ろめたいです。本来、とても大切にしなければいけない取引先の方々に対して誠実ではないなと感じてしまいます。メールが来てもすぐに返信できないことも増えてしまって、しのびないです。
田内 なるほど。周囲の人を頼ることはできないのでしょうか。
A 会社員ではありますが仕事内容的に、チームで協力して仕事をすることは少なく、「個人商店」に近いんです。社内の人間関係は良好ですが、助け合うというよりは、息抜きのための雑談相手。それに周りも自分の仕事でいっぱいいっぱいだと思うと、人の時間を奪うことにどうしても勇気がいります。そんな職業柄だからか、プライベートでも人を頼るよりも自分でやったほうが早いし、ラクだなと思ってしまうんです。
田内 「人の時間を奪うのに勇気がいる」。これってAさんにとって、とても大きなキーワードだと思います。時間は誰にとっても平等で、大きな資源ですよね。お金というのも、突き詰めると時間を買うための道具。お米だって、自分で作ろうと思えば作れるけれど、実際にはものすごく時間がかかる。だから私たちは、お金を使って、その時間を誰かに引き受けてもらっている。そう考えると、「お金を払って代わりにやってもらう」というのは、ラクをしているとか手を抜いているというより、時間の使い方を選んでいるといえます。誰かの時間をもらう代わりに自分の時間を確保し、その使い道を決める。その選択肢を増やすために、お金というものがあるのだと思います。
A 実は、そこが一番のネックで…。仕事で外部の方に業務を依頼することも多いのですが、「対価以上の時間を取ってしまっていいんだろうか」とか、「自分の言動で、相手の気分を害していないだろうか」とかそういうことを強く気にしてしまいます。シッターさんを呼ぶことに対しても、お金だけではなく、「こんなに散らかっている家に呼ぶなんて申し訳ない」と思ってしまったりして…。
田内 周囲にそこまで気を遣っているんですね。では、いっぽうであまり気を遣わずに接することができる相手はいますか?
A ……いないですね。育休中の夫に対しても、実は気にしているかも。家事や育児の負担が偏ってると感じると、申し訳ない気持ちになりますし。上の子が生まれたばかりの頃、夫婦とも在宅勤務だったんですが、家に小さな子どもがいると正直、夫も私も仕事にならなくて。その頃は夫婦間でもピリピリしていました。夫が復職したら、夫がのびのびと仕事ができるような環境も整えてあげたいですし…。

シッターを頼むべきか悩む母猫のイラスト

「お金が減る」いっぽうで、別の何かが
増えていることに目を向けて

田内 それであれば、パートナーの方の「時間を作る」ことも考えていく必要がありますよね。ちなみに、もしご両親が近くに住んでいたら、お子さんを預けることができたと思いますか。
A うーん、自分の親なら、唯一気を遣わずに託せることができるかもしれません。
田内 そう考えると、外注そのものへの抵抗より、「誰に預けるか」という点が、Aさんの中では大きいのかもしれないですね。親なら大丈夫だけど、シッターさんだと抵抗がある。それは、そこが愛情空間か貨幣空間かという違いなのかもしれません。さきほどお話に出ていた「仕事相手の時間を取るのが申し訳ない」という感覚も、実は貨幣空間の中で相当気を遣っている状態。でも実際は仕事相手との関係は、お金だけで完結しているわけではないはず。最初はビジネスとして始まった関係でも、そこから信頼や愛着など、別の感情が生まれていくこともあります。きっとシッターさんとの関係でも、同じことが起こり得るのではないでしょうか。
A 貨幣空間の中に愛情が…すごくしっくりきます。保育園の先生に対しては、信頼関係がすでにありますし。ただ、長女は私との関わりが減ると目に見えて不安定になるので、保育園の時間に加えて、さらにシッターさんに預けていいのかな、と思ってしまうんです。保育園から帰ってきた後に私が仕事でメールや電話をしていたりすると、あからさまに甘えてくるので、その姿を見ると罪悪感でいっぱいになります。
田内 もしかしたら、「ママがいない」ことよりも、「ママがいるのに、私のことを見てくれない」ほうが、つらい場合もあるのかもしれませんね。仕事をしているときのAさんもママとしてのAさんも、どちらも同じAさん。ただ、まだ小さい子どもにとっては、目の前で自分と向き合ってくれているママが、そのまま「ママ」なんだと思います。だから、家にいるのに仕事をしている姿を見ると不安になってしまうこともある。いっそ人に預けて外に出て、仕事を終わらせてしまう。そのほうが、お子さんにとって安心につながる場合もあるのかも。家庭それぞれのバランスがありますし、素人考えですが…。
A いえいえ、その視点はなかったです。あえてメリハリをつけたほうがいいということですよね。
田内 お金に関しても、視点を変えると見えてくるものがあるはず。おそらく、Aさんのお仕事を取り巻く状況は、あと数年は変わらないですよね? そうした中で、「お金が減る」ということだけに目を向けると、どうしても苦しくなってしまう。だからこそ、お金が減るいっぽうで、何が増えているのかということにも目を向けてみてほしいです。昨日の自分と、今日の自分を比べたときに、何かが積み上がっていることが、目に見えて分かるだけで、今の不安はかなり小さくなる気がします。
A 私の仕事で言うと「手がけたモノがどれだけ売れたか」というようなことでしょうか?
田内 それもある。でも必ずしも売り上げや数字だけで見なくてもいいと思います。成功の形を決めてしまうと、達成できなかったときに苦しくなります。それだったら、「ずっと作りたかったモノを世に出せた」、もっと言うと「子どもとのシール交換がこんなに溜まってきた」「育てている植物の花が咲いた」「好物のカレー屋の新作が食べられた」など、些細な、自分だけが確認できる指標があればいいと思います。
A そう言ってもらえて、なんだかものすごくラクになりました。お金も減って、娘との時間も減るなんて…と思っていたけれど、メリハリをつけてしっかり向き合って過ごせば、お互いに幸せを感じられるのかもしれません。

金融教育家の田内学さん
田内 学さん
2001年、東京大学工学部卒業。2003年、同大学院情報理工学系研究科修士課程修了後、ゴールドマン・サックス証券入社。日本国債、円金利デリバティブ、長期為替などのトレーダーに。2019年に退職後は、子育てのかたわら、金融教育家として講演や執筆活動を行っている。@tauchimnbで経済やお金の情報を発信中。

 


『お金の不安という幻想』
田内 学著 ¥1,650/朝日新聞出版

お金の不安から抜け出すための生存戦略。老後の不安に怯える学生、年収で価値を測る子どもたち。膨らむお金の不安の背景には何があるのか?労働と投資、どちらが報われる?など1万人の声から導き出した不安を希望に変える一冊。

撮影/吉澤健太 イラスト/犬ん子 取材・文/樋口可奈子 編集/中台麻理恵
*VERY2026年3月号『ママのための「お金の教育」悩み相談室』より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のもので、変更になっている場合や商品は販売終了している場合がございます。

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