弁護士からお笑い芸人に転身し、今年で10年目。実際の事件や社会問題を題材にしたスタンダップコメディ『弁論』が話題の、こたけ正義感さん。私生活では6歳の男の子と2歳の女の子のパパでもあります。そんな暮らしのなかでも意識する弁護士感覚とは…?平和的な家族との向き合い方を語ってもらいました。
「大人は権力側なんだよな」
「冤罪で叱らないと決めている」
こたけ正義感の子育てにも顔出す
“弁護士脳”
弁護の場ではお互いの妥協点を探り合って“次の争いのタネ”を残さないのが、目指すゴールなんです。
――弁護士としての目線で実際の事件や社会問題を題材にしたスタンダップコメディライブ『弁論』が、お笑いファンのみならず幅広い層に届き、2026年の1月の回はYouTubeの無料配信期間中の再生回数が160万回超え。正しさや優しさ、そしておもしろさのバランスが絶妙で聴き入ってしまいます。そんな視点やバランスはパパとしても意識していますか?
「常に楽しく面白くはもちろん難しいですよね。こっちのコンディションや時間に余裕があるかどうかにも影響してきますし。ただ、できるだけわかりやすく伝えようとはしています。特に上の息子はもう6歳なので、言葉できちんと説明すれば理解できますし。『このルートで行くと近いからこの交通手段を使うよ』とか、理由を話すようにしたり、わからないことは一緒に調べたり。怒るのは僕自身も好きじゃないので、極力怒ることはせず、『〇〇をしないとあなたにとってこういう不利益があるけどいい?』っていう話をします。『レゴをやり続けると、パジャマのまま学校に行くことになるけどいいんか?』って。基本は本人の選択に任せています。そんなことを言いつつ、なかなか言うことを聞いてくれないときは、最終手段として『鬼が来るよ』みたいなことを言っちゃう場合もあります。あんまり良くないとはわかりつつ。2歳の娘には効いても、6歳の息子にはもう通じないですけどね。『夜に来るんじゃなかったの?』って。大人の都合や一貫性がないことはやっぱりバレますね(笑)」
――不規則に見える芸人さんの仕事をしながら、子育てはどんなふうに両立しているんですか?
「家族で一緒に過ごす時間を意識的に作る、下の子の保育園の送り迎えは夫婦でその都度できるほうが行く、とかですね。夜にお笑いライブがあるときも、子どもを迎えに行って家に送り届けてから会場へ向かうことも。極力仕事以外の時間は家族と過ごしたいと思うのは、日本とアメリカで離れて生活した2年間があったからというのもありますね。上の息子が2歳から4歳まで、妻の仕事の関係でふたりがアメリカへ行っていて、僕だけ日本に残ったんです。それが結構辛くて。あとは、息子が今年小学校に入ったのも大きいです。家族より友だちとの時間が増えるかもしれない、一緒に遊んでくれる時間はそんなに長くないかもしれないってドキッとしてしまって。それでふたり旅に出かけたりします。1回目の河口湖は大雪、先日行った箱根は雨でしたね(笑)。それも含めて思い出に残る旅でした。息子は駅からホテルに続く長い階段が印象的だったようで、帰ってきてからもよく話してくれます。子どもって意外なことを覚えていて面白いですよね。2歳の娘は一度だけ行ったことのある近所のケーキ屋さんで家族みんなが何を買ったかを覚えていて笑いました」
妻からすると僕は「今、投資すべき部署」だそうで。
――夫婦での役割分担はどのように?
「妻はこたけ正義感という『部署』に今は『投資』しようと、基本は日本で仕事をしています。『投資』というと冷たく聞こえるかもしれないですけど、僕たちは大真面目。家族を『会社』として捉えていて、誰か一人が我慢し続けるのではなく、各々のやりたいことを実現するために、今どの『部署』に『投資』したらいいかをその都度話し合って決めています。妻も今後また海外で働きたいタイミングも来るでしょうし。『会社』なら『チーム』より俯瞰で見られるし、家族全員の利益を最大化しよう、みたいな感覚かなと。妻はお笑いがもともと大好きなので、ネタのことや人間関係など、いろいろ相談できるパートナーでもあります」
――子育てにおいても、ふたりとも冷静ですか?
「もちろん、感情的になることもあるので、妻とはお互いに、子どもを叱るとき『それ怒って言う必要はなくないか?』と声を掛け合うようにしています。子どもって冤罪をかけられやすい立場だったりもする。明確な証拠がない場合は疑わしくても『またどうせ〇〇したんでしょ』みたいな怒り方はしない。冤罪って本当に傷つくし、親子間の信用問題に繫がる。とにかく目の前のことだけに注目するのは、弁護士としての人権感覚が体の中にあるのかもしれないです。大人は権力側だからこそ、その権力は子どもに対して理屈が通っていなくても通せちゃうことがある。それはしないようにしています」
――なるほど。弁護士ではなくても大切にしたい感覚ですね。他に大切にしていることはありますか?
「弁護士の仕事って相手を打ち負かす仕事だと思われがちですけど、実はそうじゃなくて。研修のとき『勝ちすぎてもダメ』って教わったんです。一方が圧倒的に勝ってしまうと、また次の紛争のタネを作ることになる。お互いを納得させて、あくまで目の前の問題を解決することが大事。家庭内でケンカがあっても、今後も関係を継続することが目的だからこそ、意識しているかもしれませんね」
――最後に、日々お子さんと向き合っていて、ドキッとすることはありますか?
「息子は自分が何か説明するとき『なんでかって言うと〜』って話し始めるんですよ。僕や妻の弁護士っぽい口癖が知らないうちにうつっているのかも?と驚いています(笑)」
お話してくれたのは…
こたけ正義感さん
1986年京都府生まれ。ワタナベエンターテインメント所属の現役弁護士芸人。YouTube『こたけ正義感のギルティーチャンネル』は登録者47万人と話題。
〈左〉ABCラジオ『こたけ正義感の聞けば無罪』は、毎週日曜22時〜。ゲストとのお笑いトーク、法律をまじえた相談コーナーなど。〈右〉息子との河口湖ふたり旅。帰りに大雪がやんで、富士山の麓から3合目まで見えて大喜び。
撮影/須藤敬一 取材・文/小林 文 編集/鈴木貴子
*VERY2026年7月号「こたけ正義感の子育てにも顔出す弁護士脳」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。









