漫画『東京最低最悪最高!』が話題の鳥トマトさんとテレビ東京で働きながら漫画家としても活躍中の真船佳奈さん。「育児をしながら漫画を描く」ことが共通点のお二人の対談が東京・下北沢の「本屋B&B」で開催されました。『VERY』にもご登場いただいたお二人の対談の一部を、今回特別にお届けします。
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子どもの体調不良で詰んだ…そんな日は?
司会:お二人は年齢も近く、子育てをしながらの漫画家活動など、共通点が多いように思うのですが、今日が初対面なんですよね?
鳥トマトさん(以下、敬称略):そうなんです。漫画家デビュー前の会社員時代から、真船さんがテレビ局AD時代を描いた漫画『オンエアできない!』を読んで勇気づけられていましたし、最近の育児漫画も読ませていただいているので、今日はお会いできてうれしいです。
真船さん(以下、敬称略):ありがとうございます。私から鳥トマトさんへの愛は、おいおい語らせていただきますね。
司会:本日は、お二人の共通項でもある「ワーママ」をテーマにした質問に答えていただきたいと思っています。さっそくですが、家事や育児、漫画の執筆と多忙なお二人にとっては、家族の体調が一大事。ということで、質問は、「子どもの風邪などですべてが終わった日のリカバリー方法を教えてください」というものです。
鳥トマト:僕は、子どもが1日でも体調を崩すと連載漫画の作業予定が吹き飛んでしまうので、その次の週末に「旦那くん」に子どもと一緒に実家に行ってもらって挽回したりしています。そうもいかないときには、一人でスーパー銭湯に行き、風呂には10分くらいだけ入って、あとはずっと休憩室で描いたりもしています。みんなが風呂上がりに漫画を読んでいる横で、僕は漫画を描く……みたいな。
真船:うちは、基本的に祈っていました! 息子が1~2歳のときは、本当に次から次にウイルスをもらってくる状態だったので、毎夜「ウイルスさん、こないでください」と必死に祈っていましたね。祈りが通じたのか、3歳以降はあまり風邪をひかなくなって。ただ、我が家もどうしてものときは、鳥さんと一緒で、平日に仕事を休んで子どもの看病をしていたほうが週末に一人時間を作って家の外で仕事をする、など夫婦で協力してなんとか乗り切っています。
イラスト/真船佳奈 テレビ局AD経験のある真船さん。会場では、カンペのようにその場でイラストを描いてくれました!
結局「筋肉」と「睡眠」に勝るものなし?
司会者:次の質問は「育児をしながらの創作活動でもっとも大変なポイントはなんですか?」ということですが、いかがでしょう?
鳥トマト:先ほどの話ではないのですが、家族の誰かが体調を崩すと本当に大変なので、親子共々健康が第一。いろいろ考えた結果「健康のためには、最終的には筋肉だ」という結論に至りました。現在5歳の息子は空手と水泳を習っていて、自分も2週間に一度は筋トレに通っています。近所で利用料最安値のパーソナルトレーニングを探して、「予約しちゃったから行くしかない」と自分を追い込みなんとか続けているのですが、ほかに健康をキープするよい策があったらぜひ教えてほしいです。
真船:ごめんなさい。「寝る」しか思いつきません! 新生児の頃って、授乳や寝かしつけで母は細切れ睡眠になりがちじゃないですか。それが辛すぎて「たくさん寝る子に育ってくれ~」と、またまた祈り続けていたら、本当によく寝る子に育ってくれたんです。だから、親子でできるだけ早く寝るようにしています。でも鳥さんのお話を聞き「たしかに筋トレは必要だな」と思いました。最近、肩こりもヤバいので。
鳥トマト:そうそう、筋トレは肩こりにも効くんですよ。我々は基本座りっぱなしになりがちな仕事なので、やっぱり筋トレはおすすめです。
夫との馴れ初めは「犬なのかい?」
司会:健康を維持するために大事なポイントは「筋トレ」というところで、次の質問です。「夫のことを描くときに気を付けていること」はありますか?
鳥トマト:そもそも、「旦那くん」は僕の作品を一切読みません。もともと『ワンピース』と『ドラゴンボール』の区別もつかないくらい漫画に興味がない人なのに加え、「なんだか邪悪なことが書いてありそうだから、見ない」と言われたことがあるのですが、まさに想像通りなので、正しい姿勢だと思います(笑)。ちなみに、真船さんの作品には夫が登場するシーンも多いのですが、漫画の完成後にそれを読まれるのはどんな感情なのでしょう?
真船:前提として少しお話をさせていただきますと、私と夫は出会って1週間後にお付き合いを開始して、半年後には結婚しました。初対面の日、私はバーで泥酔して「バウワウ!!」とセントバーナードの真似をしていたそう。周りの人が私のことを避けるなか、夫だけは「犬なのかい?」と話し掛けてくれて……。
鳥トマト:馴れ初めとして、面白すぎますね。
真船:そんな出会いだったので、お付き合いが始まってすぐに「私はこの人と結婚するに違いない!」と思いました。結婚後は、「あなたのことを漫画に描きますが、いいですか?」と、同意も取り付けていたのです。子どもを描く際には気を付けていることもありますが、夫に関しては最初から本人の同意を得ていたので、好き放題に描いています。
鳥トマト:今も、夫は何も言ってきませんか?
真船:いや、しょっちゅう「肖像権の侵害です。使用料を払ってください」と言われますよ(笑)。でも鳥さんの旦那さんと一緒で、うちの夫も基本的には私の作品を読まないんです。一応夫が出てくる話は事前に共有はしてますが、誤字脱字以外の修正が来ません。でも、それくらいがちょうどいいですよね。熱心に読まれて「あの場面は実際は……」なんて口を出されたら、きっとすごくイヤなので。
子どもに将来の夢を聞いたら「年長になるんじゃない?」と……
司会:次の質問は「家族がどうなってほしいなど、将来のビジョンはありますか?」とのことです。
真船:実は私、息子がもっと小さな頃、事あるごとに『この子、才能がすごいのでは?』と、すぐにギフテッドの特徴を調べるような親バカだった時期がありまして。でも「親が過度に期待して、勝手にのめり込んでもいいことがない」と、途中で気付いたんです。だから今は「子どもが好きだと言ったことをやらせてみる」くらいのスタンスで見守っています。とは言え、「息子が将来、ミュージシャンや芸人さん・俳優など夢を叶える難易度が高い職業になりたいと言いだしても、私は心から応援できるだろうか?」と、今から不安になることも……。鳥さんは、もしも息子さんが「漫画家になりたい」と言いだしたら、どうします?
鳥トマト:どうですかね? 「がんばりな~」って言いますかね(笑)。5歳になった息子は、驚くほどもう一人の人間なんですよね。だから「彼が好きなものを私が強要するなんて無理だな」と日々、感じています。息子は今、どういうわけか「B級サメ映画」にハマっているのですが、それを母親好みに矯正するのなんて、今ですら不可能ですからね。
真船:ちなみに、お子さんは将来「何になりたい」とか言いますか?
鳥トマト:たまに聞いても何も言わないんですよ。将来のことをたずねても、「来年は年長になるんじゃない?」とか「もっと先には、小学生になるんでしょ」って言われます(笑)。
保育園で「VERY見ましたよ」と声を掛けられたことも
司会者:次の質問は、「働きながら描くとき、どの部分が一番ハードですか?」とのことですが、いかがでしょう?
鳥トマト:出版社の会社員時代、漫画とは直接関係のない業務をしていたので、副業で漫画を描いていることを総務の人以外には一切話していませんでした。執筆が忙しくなってからも、言い出すタイミングを逃し、身近な人にも話せず……。その後、兼業生活が多忙すぎて体調を崩したときも、本当の理由を話せないので、「なんだかわからないけど、常に体調の悪い人」という印象のまま会社をドロップアウトしたことが心残りだったし、伝え方が難しかったなと思っています。
真船:私は、本名と顔出しをして「テレビ局ADが漫画家デビュー」という触れ込みでスタートしたので、プライベートを全部さらけ出していることが、今になってハードに感じています(笑)。さすがにお店などで声を掛けられはしないのですが、一部のママ友にはバレています。昨年、雑誌『VERY』で取材していただいたときには、「見ましたよ」と保育園で声を掛けてもらったこともありました。ただ、ママたちの声掛けはあくまでそっとさりげないので、その優しさに救われています。
司会者:いろいろお話ししていただきましたが、最後に今日の感想を聞かせてください。
真船:私と鳥さんは、描いている漫画の種類こそ違いますが、今の社会について、また子育て中の思いが似ているようにも感じていました。ただ、育児漫画を描く中で、私はついつい「ハッピーエンドにまとめなきゃ」という強迫観念のようなものを持っていたのですが、鳥さんの作品は、万人に対してハッピーな話ではないこともあります。でも、「うまくいかないままでもいいんだ」って気付かせてくれたありがたい存在でもありました。
それに、育児と仕事との両立のなかで、私自身もあきらめたことがたくさんあったのですが、その感情を漫画として表現している点もすごい。だから今日はこうしてお話しでき、とても光栄でした。
鳥トマト:僕も今日はお会いできてうれしかったです。ギャグ漫画は才能がないと描けません! 真船さんのような、僕からするとまぶしい存在の人に自分の作品を褒めてもらえるだけで救われた気がします。本当にありがとうございました。
Profile

真船 佳奈さん
1989年生まれ。夫と3歳男の子の3人家族。大学卒業後、2012年に株式会社テレビ東京入社。テレビ東京ではバラエティ番組のAD等を経て現在はプロモーション部で働きながら、子育てをテーマにした漫画家として活躍中。(撮影/杉本大希)
『正しいお母さんってなんですか!? 「ちゃんとしなきゃ」が止まらない! 今日も子育て迷走中』(幻冬舎)
真船さんが「正しいお母さん」像に翻弄されながらも自分らしい子育てにたどり着くまでの育児漫画。ちゃんとしなきゃと苦しい思いをしている全お母さんに読んでほしい一冊。
『さよなら!行き当たりばったり人生! お金管理も家事も全部ニガテな主婦の生まれ変わり奮闘記』(KADOKAWA)2026年3月26日発売予定。
お金の管理も苦手、片付けも苦手。豪華な暮らしでも丁寧な暮らしでもなくていいけれど、不安やイライラのない生活を送るための、等身大のノウハウが詰まった1冊です。
Profile

鳥トマトさん
漫画家・小説家。これまで手がけた作品に『俺のリスク』、『アッコちゃんは世界一』、『幻滅カメラ』、『歴史メンタリスト』など。現在「まんがライフオリジナル」にて漫画『私たちには風呂がある!』、「ヤングアニマルWeb」にて漫画『二月に殺して桜に埋める』「週刊SPA!」にて小説『まだおじさんじゃない』を連載中。一人称は「僕」。夫と5歳男の子の3人家族。
『東京最低最悪最高!』(小学館)現在①~③刊発売中
「ビッコミ」にて、驚異の100万PV! 超絶バズ&大論争を巻き起こしたオムニバス漫画。限界ワーママ、非正規雇用のシングルマザー、仕事と家庭の板挟みになる管理職……このなかにきっと自分に近い人がいるはず……。令和の東京残酷物語。
構成・文/小嶋美樹 取材協力/本屋B&B
※記事は、2025年12月に下北沢「本屋B&B」で開催された対談イベント「ワーママ最低最悪最高!」の一部を再構成したものです。









