母になり生活リズムや優先順位が変わっても、ずっと大切にしたい好きなこと。2人のお子さんを育てる俳優・菊地凛子さんは、香りの力で〝フラットでいる〟ことを大切にしているそう。心と体の声に耳を傾けること、私たちも忘れないでいたいです。
※掲載中の情報はVERY2023年10月号掲載時のものです。
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俳優・菊地凛子さんは……
香りが好き!
❝香りは、体と気分を整え、
セーフティゾーンをつくる
お守りのようなものです❞
心と体の声を聞き、
なるべくフラットに保てるように
私の香りのルーツは、プリンセスセットに入っていたピンク色の香り玉。イチゴみたいな甘い香りが、子どもの頃の私に安心感をもたらしてくれました。以来ずっと、香りは私の〝お守り〟です。どこへ行くにも、お気に入りのアロマオイルやルームスプレーを詰め込んだポーチは必需品。撮影で海外を訪れると、慣れない土地に居場所をつくるように、ホテルの部屋に、洋服に、シーツに……気分で選んだ香りを真っ先に纏わせています。セーフティゾーンをつくる感覚ですね。もう一つ、香りには体調を整える役割もあります。
リラックスしたいときや筋肉の疲労があるとき、偏頭痛に困ったときなど、心身の声を聞いてアロマオイルをさっと塗る。すると解けるように落ち着いていくのがわかります。役者という仕事は、この楽器(=自分の体)を鳴らすしかない。心身に負荷がかかっているときに、めちゃくちゃハッピーな人を演じることもある。そのために、できるだけフラットでいたいんです。子育てをしていると、自分が急に不調になったとき、すぐにどこかへ駆け込むのが難しいこともあります。だから日常の中で、〝自然なかたちで〟自分をプラマイゼロにできる術を持っておきたかった。私にとっては、やっぱりそれは香りだったんです。
辛い経験が人生を変えることの方が
多いかもしれない
『658㎞、陽子の旅』という作品で演じた陽子は、過去に囚われ孤独に生きる42歳の女性。父親の死をきっかけに、少しずつ再生の道を歩んでいきます。陽子を通して感じたのは、ハッピーなことだけが人生を変えるのではなく、割と辛い経験によって変えられていくということです。もちろん自分の子どもたちには、しなくてもいい辛い経験はしてほしくないけれども、悔しくて恥ずかしい思いをしたときにむしろ、〝これも経験〟〝自分はこんな人間だ〟と受け止めることで、新しい自分に変わっていけることも伝えたいと思いました。
上海国際映画祭では、インドや東南アジアなど各国の審査員が握手を求めてくださった。それは辛い経験をしながらも再生していこうとする陽子の姿に共感していただいたからかも。誰かだけがハッピーなわけではないし、自分だけが大変なわけでもない。これからも、この作品から元気をもらうんだろうなと思います。
子どもが一番。だからこそ
仕事をもっと好きになれた
プライオリティの一番は子どもたち。それがはっきりしているから、以前よりも仕事への集中力が増したし、仕事をもっと愛せるようになりました。いつでも覚える時間があった台本も、今はたった1時間に気合いを入れて臨みます。働くことによって子どもの成長の瞬間を見逃してしまうことがずっと不安でしたが、今はちょっとだけうまく仕事に集中する習慣が身につき、子育てと仕事に向き合えるようになりました。
とはいえ毎日疲労困憊で、この夏もUSJは諦めてしまいましたけど(笑)。ときどき夫やマネージャーさんと協力して、息抜きをする時間を意識的につくっているんです。家族の前では機嫌よく、心も体も健やかでいたいから。ヒーヒー言いながらですが、そうやってバランスをとって毎日を乗り越えています。逆に仕事が辛くてうなだれて帰った日は、子どもたちの姿を見るだけで全部吹き飛んで元気になれる。家族の存在が明日に向かう原動力です。
※私物につき店舗へのお問い合わせはご遠慮ください。
PROFILE
●菊地凛子さん
きくちりんこ・俳優。映画『バベル』(2006)で第79回アカデミー賞助演女優賞にノミネートされて以降、様々な海外作品に出演。『658㎞、陽子の旅』では主役の陽子を演じ、上海国際映画祭で最優秀女優賞に輝いた。現在放送中の連続テレビ小説『ブギウギ』では、淡谷のり子がモデルとなった歌手を演じる。2児の母。
撮影/佐藤航嗣〈UM〉 ヘア/北田大貴 メーク/中村了太〈3rd〉 スタイリング/小嶋智子 取材・文/藤井そのこ 編集/城田繭子
*VERY2023年10月号「オトナになっても好きなこと」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。