金曜ナイトドラマ『リエゾン−こどものこころ診療所−』で主演を務める山崎育三郎さん。発達障害などさまざまな生きづらさを抱える子どもたちとその親に寄り添う児童精神科医・佐山卓を演じています。第1話から涙を誘うとの声も聞くドラマの裏話や、山崎さん自身について伺った後編をお届けします。
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今日1日をどう生きるか、常に考えて戦っている
--山崎さんはミュージカルをスタートに、ドラマなどの映像作品や、歌手、MCなどでも活躍しとても器用なイメージです。
ミュージカルの世界に12歳からいましたが、歌、お芝居、ダンスの要素があって。20代前半からはディナーショーをして、1時間半歌いながらMCもしていたんです。だから普通の俳優さんより話す機会が多かったんです。しかもミュージカルのお客さまは大人の方が多いので、何を言ってもOKなわけじゃない。「何をお話しするの?」と冷静に聞いているんです。そんなお客さまに育てられました。ドラマや映画、MCにしてもミュージカルの世界とつながっていて、まったく違うことをしている感覚はありません。習い事なら、ミュージカルはとてもおすすめですよ。話す、ダンス、歌う、全部トレーニングしてくれるから、可能性が広がる気がするんですよね。
--前に立つのが苦手な子も殻を破れそうですね。山崎さんはシャイだったとおっしゃいましたが、殻を破れたきっかけはあったんですか?
アメリカに留学する前までは内向的な部分もあったのですが、それでいる意味がない、自分で踏み出さない限り何も変わらないということを16~17歳で知りました。シャイだから話せないでいると、何を考えているかわからないといじめられたんです。でもちゃんと話したり表現すれば、受け止めてもらえた。そこが転換点ですね。それまでは日本で「みんなと同じようにしなさい」「きちんとしなさい」「人と違うことをするのはダメなこと」となんとなく刷り込まれて違和感を持ってはいたけれど……。空気を読んでいても何も変わらないし、大きなことは起こらないと実感しました。みんなと同じでよかったね、で終わってしまうと。僕の仕事は、常に自分を解放しないといけない仕事です。精神が強くないと、自分から出てくる何かを信じて突き進むことはできないですね。
--それがその後の活躍につながっていくんですね。よく考えれば、みんなと同じではダメな仕事もたくさんあります。
自分は“空気を読まない”でいることが大事だと思っています。アメリカの生活で、「行っちゃえ!」というスイッチを持てるようになったというか。僕は、もしかしたら、明日が来ないかもしれないみたいな感覚が常にあるんですよだから今日1日をどう生きるか、何をビビってるんだ、自分!やれよ!っていう気持ちです。常に戦っている感覚はあります。先を見てもしょうがないって。
「違う」ことを認められる社会になればいい
--今回のドラマは、発達障害をテーマに扱っています。佐山先生も発達障害の役ですが、どうやって演じているんですか?
発達障害の当事者の方が毎日現場に、カメラの横で見てくれるので、彼とシーンごとに話をして丁寧に作っています。ちょっとした目線の動きとか、しゃべる時に近づきすぎてしまうとか、誰もいない時にメロディが流れているから体が動いてしまうとか……。自分では想像できないことがたくさんあるので、彼にレクチャーしてもらいながら、その特性を表現しています。作る上で難しさや繊細さもありますし、特性もさまざまで、本当に丁寧に作らなければいけないな、と。僕はそもそも、発達障害という言葉にも違和感を持っていて。
--ドラマでも凸凹(でこぼこ)と表現されています。
はい。できること、できないことの差が激しくてもそれは個性で、一つ突き抜けていればそれが才能として育てられるかもしれません。そしてその子が変わらなければいけないのではなく、変わるべきなのは社会や大人なのではないかなと。今この時代にやる意味を感じていますし、これまで感じたこととつながって、思いを込めて挑んでいます。
山崎育三郎
1986年1月18日生まれ、東京都出身。19歳の時ミュージカル『レ・ミゼラブル』のマリウス役に抜擢される。以後、ミュージカルや映画、MCなど多岐にわたり活躍を続ける。映画『イチケイのカラス』が全国公開中。主演ドラマ『リエゾン−こどものこころ診療所−』(毎週金曜23:15〜全国テレビ朝日系にて放送中*一部地域で放送時間が異なる)は現在放送中。
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撮影/相澤琢磨 取材・文/有馬美穂