VERY July 2024

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July 2024

2024年6月7日発売

930円(税込)

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坂本美雨さん「親子はわかり合えなくていい」と思えた理由

音楽一家に生まれ、自らもミュージシャンとして活動する坂本美雨さん。小学一年生になった愛娘・なまこちゃん(愛称)とのセンチメンタルな日々や自らの生い立ちについても綴ったエッセイ『ただ、一緒に生きている』が共感を呼んでいます。なかでも印象的だった「親子はわかり合えなくても良い時間を過ごせたらいい」という部分。そう考えるに至った背景についてお話を聞きました。

「いろんな大人に触れさせる」
それが唯一の子育てモットー

――なまこちゃんは坂本さんの仕事現場にもよく一緒に行かれているかと思いますが、最近ではすっかり成長して現場での様子も違うとか。

小学生になって一緒に現場に行く機会も減ってきていたのですが、久しぶりに私のコンサート現場に来た時には物販コーナーで在庫管理をしたり、まるで販売のバイトさんのようにがんばってくれました(笑)。周囲の人がどんな動きをしているか観察して、彼女なりに場を作ろうとしてくれたみたい。小さい頃は連れ回すことに葛藤もあったけど、今では「いろんな価値観の大人と触れ合わせる」ことだけが、子育てのモットーといえるかもしれません。

 

――どうしてそのモットーに行き着いたんですか?

自分の価値観や育児に自信があるわけではなかったから、「みんなで育ててもらおう!」と思っていたんです。私自身も、小さい頃から親のおかげでいろんな大人と触れ合ってきました。今の時代では考えられないような社会に適応できない大人もいて(笑)、子どもながら仕方ないなあと思ったり、一方でそれを補うすごい魅力も見せつけられたり。

 

――最近なまこちゃんの周りに現れたおもしろい大人はいますか?

親子3人でジェイコブ・コリアーのライブに行ったら、近くにいたお姉さんがイケイケですごく楽しくて。娘に「大丈夫?見えてる?」とか、私たちにも「パパママ、お酒足りてる?」と、私たちにまでドリンクを買ってきてくれたり(笑)。しっかりと向き合うコミュニケーションではなくても、こうした通りすがりの人とのやりとりからも場の楽しみ方やコミュニケーションの取り方を吸収すると思うんですよね。「知らない人にも声をかけていいんだ」とか。

 

――楽しいライブでしたね(笑)。子どもって、大人が思うより観察していますよね。

本当に。私も子ども時代、家に来るたくさんの大人を見て「この人はつい他人を利用するけど、悪意はなさそうだ」とか、「こういう行動するのには訳があるんだろうな」とか、想像力はたくさん使っていた気がしています。想像力があるからこそ、人に寛容になれると思いますし。たくさんの価値観と触れ合っていくなかで、「人は(自分の思うようには)変えられないんだ」ということを実感していきました。

 

親でも子どもでも、別の人間だから
わかり合えなくて当たり前なんだ

――娘さんに対しても「どんな人なのか、もっともっと知りたい」と、「別々の人間」という実感があると語られていますよね。

はい、生まれた時から欲求も味の好みも全然違うし、似ている部分はあっても自分の分身という感覚はありませんでした。育児については、まったく知らない人間と知り合っていく過程のように感じていて、それは自分の親に対しても同じだったんだな、と。薄々感じていたけれど、親とも別の人間だから、完璧にわかり合えなくても当たり前なんだ、しょうがないんだといい意味で諦めがつきました。

 

――本の中の「親と子がわかり合えずにいても、穏やかな時間が流れているならいいではないかと思い始めた」という何気ない一文に、とてもハッとさせられました。

わかり合えるならそれに越したことはないから、20代のころはわかり合おうともがいたこともありました。悩みを打ち明けてみたり、母親の納得いかないところをワーッととケンカするみたいにぶつけたこともあります。当時はまだ、情熱で説き伏せればなんとかなるかもと躍起になっていたんですよね。でも母には母の正義があって、人の善悪の価値観、好き嫌いって変えられないんだなって(笑)。親子関係だけでなく、いくつかの恋愛や友人関係の中で、どれだけ望んだり画策したり体当たりしても他人は変えられないんだということが、30代になってわかったという感じです。“あ、無理だ”って。それからはいい意味で諦め、その人なりの愛情をちゃんと受け取れるようになりました。うちも親のやり方で十分愛してくれていたんだなって。

 

――親子が「穏やかな時間」を過ごすためには、どうしたらいいと思いますか?

価値観が相容れない場合、無理やり動かそうとすることが幸せにつながるわけではないと思います。受け入れて、いいところだけを見る。これに尽きると思います。それに物理的な距離も必要ですよね。うちは1年に1~2回会うくらいなので、人生でもうドロドロする瞬間は訪れないと思っていて。母なりの愛し方を尊重して、尊敬して、受け取っていきたいと思うんです。一方で娘に対しては、まだまだ関わって導かないといけない部分もあると感じています。わかち合う前提で進むけれど、彼女の生き方が定まった時点で、もう動かせないんだなと覚悟すると思います。

 

>>第2回に続く

『ただ、一緒に生きている』
著:坂本美雨 ¥1,760(光文社)
東京新聞で連載のエッセイ「子育て日記」に、自らの生い立ちについてなど大幅な書き下ろしを加えた珠玉の一冊。

坂本美雨/1980年5月1日生まれ。1997年Ryuichi Sakamoto featuring Sister Mとして『The Other Side of Love』でデビュー。2015年第一子を出産。2022年デビュー25周年を迎え、現在音楽に留まらず、作詞、翻訳、俳優、文筆、ナレーションなどさまざまな分野で活躍中。大の猫好きとしても有名。Instagram:@miu_sakamoto

取材・文/有馬美穂

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