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東尾理子さん「不妊治療で休みますとは言いづらい」休暇の取りやすい社会を目指す理由

「結婚したら子どもを産むのが普通」「生理痛をがまんして仕事に行く」……。誰かに言われたわけではなくても、いつのまにか「それが当たり前」だと思って行動していることは多いもの。今、「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」という言葉が、じわじわと広まりつつあります。プロゴルファーでタレントの東尾理子さんは、この権利への理解を深める活動を行うひとり。理子さんがこの活動に関心を持ったきっかけや、ご自身の不妊治療経験について聞きました。

※性と生殖に関する健康と権利のこと

4人に1人が「不妊治療」が理由で退職している!?

──理子さんご自身は、生理や妊娠に関して「知らなかった」「気づいていなかった」ということはありましたか

私は不妊治療を経て、3人の子を授かりました。第一子を妊娠した際は、2回転院し、3軒目の病院での体外受精で第一子を妊娠しました。治療を開始したころは知らないことがあまりに多く、最初の病院では体外受精を実施していないことに気づいたのは治療を始めて一年以上経ってからです。今思えば、タイミング法や人工授精で思うような結果が出なければ、早い段階で体外受精など別の方法を考える必要があったと思います。私と同じように「知らなかった」ことでつらい思いをする人を減らしたくて、不妊治療のサポートを始めました。私を反面教師にしてもらいたかったんです。不妊治療当事者の方と直接交流する機会をたびたび設けていますが、そこでも「まさか自分が不妊治療をするとは思わなかった」という声をよく聞きます。

 

──不妊治療は肉体的にも精神的にも負担がかかると言われています。取り組み始めて、その大変さに気づく人も多いのではないでしょうか。

最新のデータでは、不妊治療をしている方の4人に1人が離職をしているか、働き方を変えています。しかし、退職時に不妊治療が原因だと伝えない人も多く、企業側が社員の悩みに最後まで気づかないケースも多いようです。交流会では「不妊治療をしていることを上司に理解してもらえないので、理由を言わずに休むしかない」という話も聞きます。仕事と治療の両立は女性たちにとって大きなストレスになっていると思います。とはいえ、会社が現状を理解して不妊治療休暇をつくったとしても、すべての職場で休みが取りやすくなるとは思えません。治療の詳しいスケジュールや結果を職場で共有することにためらいを覚えるという人は多いでしょうし、上司側が聞きづらいということもあるでしょう。

 

──休暇制度があればそれだけで問題が解決するとは限らないですね。

さらに、男性や子どもを産まない選択をした人にとっては、その休暇を得る権利も与えられません。これでは不公平です。有給休暇とは別に、誰でもどんな理由でも休めるユーティリティな休暇があればこの問題も解決するかもしれない。そうした思いから、企業への働きかけも行っています。

 

「自分の体のこと」は自分で決めていい

──恥ずかしながら、「リプロダクティブ・ヘルス」という言葉は今回初めて聞きました。

現在提唱されているのは「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」、日本語では「性と生殖に関する健康と権利」と訳されています。自分の性に関することは、セックスや妊娠・出産をはじめすべて自分に決定権があるということ。どんな選択をしてもその人が心身ともに満たされた状態でいること。それが社会的にも認められていることを指します。まだまだ日本における認知度は低いので、リプロダクティブ・ヘルスに対する社会全体の理解を深めることを目指しています。この考え方が普及することで、自分を大事にして、まわりも尊重できる社会になってほしいと考えています。

 

生理痛は「がまんする」のが当たり前?

──社会全体の理解を深めるというのは、具体的にどんなことでしょうか。

「自分の性に関する決定権」がその人自身にあるのは当たり前です。でも、自分事として考える機会は少ないですよね。まずは自分で、「性について話し、理解する」ことが大切です。生理痛をがまんして仕事に支障をきたすという話もよく聞きますが、産婦人科に相談して痛みや経血量をコントロールする方法もあります。でも「これくらいの痛みはがまんしなきゃ」と思い込んでいると、どの程度の痛みなら病院に行くべきかすら判断しづらいもの。アメリカはピルを服用する人も多いので、妊娠・出産時期以外にも産婦人科に行く機会が多いですが、そもそも日本は初診のハードルが高いと思います。まずは生理について知ることが、自分の体について考えるきっかけになればいいと考えています。

 

若い世代のためにも、今、自分が声を上げたい

──「自分に産む権利も産まない権利もある」という話は、少なくとも義務教育で教えてもらった記憶はありません。社会に出て出産適齢期になったとき、はじめて考える人は少なくないかと思います。

私が子どものころは、性の話はベールに包まれていて、「いやらしいもの」という扱いをされていました。かろうじて保健体育の授業で避妊についての話は聞きましたが、それは「妊娠するのが当たり前」という前提があってこそ。日本の性教育は各国に比べ後れをとっているのが現状です。知人の教育関係者や医師から「伝えられないことがあって、もどかしい」と言われることも多いです。それならば、私のような一般人が声を上げていくことで、世の中を少しずつでも変えていけるかもしれない。そう思って、若年層向けの「包括的性教育」にも手を広げました。

専門家の監修のもと、「SEXOLOGY(セクソロジー)」というサイトを立ち上げ、月経や妊娠、ジェンダーなど、性に関する幅広い情報を提供しています。また、サイト上からはセックスについてパートナーと話し合うためのサポートツール「SEX NOTE」にもアクセスできます。これはセックスに関する自分の今の気持ちを簡単な質問に答えてパートナーと共有するというもの。最近、若い世代と話す機会があったのですが、「実際に使ったことがある」という方に出会えてうれしかったです。

 

──若い世代が積極的に性について考えていると聞いて、明るい兆しを感じます。

リプロダクティブ・ヘルスという言葉はまだまだピンとこない人が多いと思いますが、緊急避妊薬や生理用品の話題の延長線上にあるのか、高校生、大学生くらいの世代から「聞いたことがある」という声も聞くようになりました。「これからの世代に課題を残したくない」というのが私の活動における目標です。ただ、理念を啓発する活動ばかりではなかなか世の中に浸透しません。それで、リプロダクティブ・ヘルスに関わる課題解決を考える人を表彰する、アワードを立ち上げることにしました。

理子さんが立ち上げた「リプロダクティブヘルスアワード」やご自身のお子さんへの性教育について、こちらの記事でさらに詳しくお話しいただきます。

PROFILE

東尾理子(ひがしおりこ)さん
1975年生まれ。福岡県出身。元プロ野球選手の東尾修氏の長女。8歳からゴルフを始め、99年にプロテストに合格、プロゴルファーとなる。2009年に俳優・石田純一氏と結婚。現在三児の母。試合の解説やテレビ出演など、多方面で活躍中。

構成・文/樋口可奈子

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