20代からモデル、結婚、出産、育児、起業、と「生き急いでる」とまで言われた東原亜希さん。40代を迎え、半ば子育てもふくめてすべて軌道に乗せた感さえします。読者からの相談にアドバイスをもらいつつ、いまの心境を語ってもらいました。
(過去の好評インタビュー「ドンマイ人生」はこちらのリンクから読めます!)
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\亜希ちゃんに相談/
私たちは30代をどう生きるか!
生き急いだ20,30代を経て、40代は自分を大切にできたら!
◎2024年40歳になりました
29歳から30歳は誤差みたいなものでしたが、さすがに40というのは、「おばさん」というワードも頭をよぎり、誤差ではなく、落差を実感しています。実際、心身ともに疲れやすくなったような気さえします。亜希さんはどうでしたか? どのように乗り越えましたか? それとも全然気になりませんでしたか?(40歳)
私は30になるときのほうがいろいろ感じた気がします。そのときは、今までの20代とは圧倒的にステージが変わって、大人になったと感じたのですが、40代は30代の延長みたいに感じて。ネガティブな気持ちはなくて、「すごい、やっと40代になれる」という感じでした。
20代のときって、テレビのお仕事も若さで乗り切っていたところがあったのですが、私としては自分の中身と外側のギャップをどこかに感じていて、やっとその2つが同じになれる気がして、30代を楽しみにしていたところがあったんです。仕事でも若いだけで、まだ任せるには早い、経験が足りないとか思われることってありますよね。それも一方で事実なんですが、葛藤もありました。だから、結婚をして、家族ができて、親になったら自分自身で責任を取れる。そんな40代を心から楽しみたいなという気持ちです。
社会的な発信などは、30代になってから?
子どもを産んで、起業をして、より納税意識も高くなり、初めて興味が出てきました。30歳で会社を始めた頃は、自分の発言によって「おたくの商品、もう買いません」といったクレームが怖い、という気持ちがあったのですが、世の中批判があるのも当たり前、自分がやりたいこと、したいことに信念があればいい、と強くなりました。単に批判と受け取らず、意見を交わすことも大事だなと。そういう経験や考え方が持てたことも、私にとって自分の会社を作ったことは大きかったなと思います。
コロナ禍の子どものマスクを着ける着けない問題でも、それぞれが意見をもって、お互いの意見を尊重し合えればいい、と思っていました。SNSに「マスクを外そう」という動画を載せたとき、批判をいただくことは覚悟していたのですが、何百件のうちの2、3件くらいで、「世の中の空気で子どもに『着けなくていいよ』と言えなくて」という、むしろ共感の声のほうが多くて。思っていることを伝えること、それを受け止めて意見を交わすことを、私も上手になりたいですし、その姿を子どもたちにも見せていけたらなと思っています。
❝ますます強くなる予感(笑)
でも40代は
もうちょっと自分を大切にできたら❞
親の背中を見せないと、ということですね。40代はさらに楽しみですか?
ますます強くなる予感はしています(笑)。強くなるばかりだと周りに引かれてしまうので、ほどほどに。20代、30代はわりと生き急いで駆け抜けてきたので、40代はもうちょっと自分を大切にできたらというのが、目標です。上の子2人の子育ては後半戦に突入なのかなと思うので、むしろますます一緒に行動できるところは行動したい。試合を見に行くとかもそうなんですが、家族の時間を大事にできたらな、と。結婚25歳、出産26歳、起業が30歳と早かったので、「生き急いでる」とみんなに言われるんです。子育てで一番忙しいときに、仕事が忙しかったり。やっぱり30代ってそういう頑張りどころの時期なのかもしれませんね。
せっかちなんですね?
エレベーターやエスカレーターが待てないので階段で行っちゃうし、自動ドアも待てないからバッグとかを前に出して先に開ける。トイレに向かいながらほぼファスナーは下げているし、戻ってくるのも早いから「ほんとうにしたの?」「手、洗った?」と聞かれます(笑)。
あ、それ、うちの編集長もよくトイレの速さを自慢しています。「同じタイミングで男性トイレに入った社員より、ちゃんと手を洗っているのに先に出てこれる」と。
Aki runs around!
Tokyo
息子のアトピーがひどくてなんとかしたい一心で開発したボディクリームの撮影。今でもみなさんに愛される商品になっていて嬉しい限りです。撮影の手配を自分でやるのも楽しい。
子どもは英語を使いこなせるように。その理由とは?
◎不安な未来に子どもを残すべきか
30代前半、3人目を産もうかどうか迷っています。夫は「どちらでも」というかんじなのですが、不景気だし、増税だし、いつ地震が起こるかもわからないし……。どんどん少子高齢化が進んで若者が少なくなっていくこれからの日本に、私たちの一存で子どもたちを送り込むのはどうなのか、と思ってしまいます。(34歳)
以前、関西では子どもをインターに通わせているママが多い、という取材に行ったのですが、子どもを海外で通用するようにしたい、なぜならこれからの日本が不安だから、と。
非常に不安です、私も。特に子どもたちが成人する頃の日本がどうなっているのか、競争力を保てているのか……と、考えちゃったり。
少子化対策、もっと本気でやってほしいと心から思います。保育士の免許を持っているのに復帰されない方も多いから、それを掘り起こすために2万円給料を上げる、というニュースを目にしたとき、保育士さんの尊くて、大変なお仕事に思いを馳せましたよね……。明らかに人口が減っていく中で、信じたいと思わせてくれる改革に出会いたい。
❝正解はわかりません。
せめて英語を使いこなせるようにと❞
お子さんとはどんな会話を?
子どもに「勉強しなさい」と言いながらも、AIに仕事が奪われるといわれるこれからの時代に、この職業に就けば安心みたいな絶対的なものはないし、どう導いてあげるのが正解なのか、もちろん私にもわかりません。だから、子育て世代の親たちが、せめて子どもたちには英語を使いこなせるようになってほしいと願い、それで何倍にも世界が広がったほうが武器になるのでは、と思うのも必然というか。私も、子どもたちには英語を身につけてほしいと思っています。ただ、それには早期がいいのか、自分で本気で学びたいとスイッチが入るときまで待ってあげればいいのか。時期についてはそれぞれの家族や子どもの環境や状況にもよりますし、選択肢がみんなにあることが大事だと思います。
一方で、英語がしゃべれるだけでもしかたないのはわかっていて。自分なりの意見やアイデンティティ、思考を言語化することがしっかりできないと、英語も日本語もないですよね。日本人って世界から見たらすごい謎じゃないですか。誰も指示してないのにみんなルールを守る、真面目で、勤勉で、きれい好きで、丁寧で、そういう日本人の気質みたいなものがあった上で、英語でコミュニケーションがしっかり取れる、というのが重宝されるのかな。
ベースが日本人という希少性。井上さんご夫婦は、結婚後すぐにスコットランドに留学されました。
イギリスに2年間行っていたときは、出産や妊娠もあって英語の勉強全然できないまま終わっていて。結局、日本人ってどこにでもいるので、つい日本人同士で集まってしまうと英語が必要なくなって。トラベル英会話レベルですよ。今すぐにでも英語圏で、子どもと一緒に私も英語が勉強できる環境に身を置きたいのですが、子どもがいろんな学年にいるので、どのタイミングがいいのか難しくて。
康生さんも?
夫も行きたいと言っていて。夫も海外の柔道教室から声がかかってくるし、オリンピック関連の仕事をして、自分が直接、英語でコミュニケーションを取ることの必要性をますます身に沁みて感じたんだと思います。家族で海外に住むなんて、実現するかわからないけれど、そんな夢をもっているのも、悪くないと思っています。
Aki runs around!
Spain
息子妊娠中、スペインのビーチで長女と。夫の柔道の仕事にも家族ごと一緒に呼んでくださり、いろいろな国へ連れて行ってもらいました。
お子さんの柔道や進路のこと、どう考えてますか?
◎息子の夢はプロのバスケ選手
中2の息子がバスケットに夢中です。もともと夫がバスケット好きで、週末にはふたりで泊まりがけで関西のチームの応援に行くほど。中3の県大会で卒業?と思っていたのですが、息子にはやめるつもりはないらしく。ちなみに夫は大学の同好会レベルです。プロになれる見込みは薄いので、できればもうちょっと勉強に時間を割いてほしい。夢がかなわなかったときの息子の気持ちを考えると複雑……。トップアスリートのお子さんをお持ちの亜希ちゃんとはレベチの話かもしれませんが、お子さんと進路の話など、どのようにされてますか?(36歳)
❝挫折感がいちばん怖い。最低限の
勉強はしておきなさい、と言ってますが❞
上のお子さんふたりは柔道をされていて。
親は子どもに保険をかけたいじゃないですか。長男にも、勉強しなさいと言ってるんですけど、今はまだスイッチがさほど入っていません……(笑)。長女は、言わなくても黙々と自分でやるんですよ。
2世って難しいところもあって、いつもその課題を考えているんですけど。世に出たアスリートって、その親御さんも、エネルギッシュで個性的な考えの持ち主だったりすることが多いですよね。
そこまではできない?
うちの子どもたちが夫に練習をみてもらったのは、周りに思われている以上に少なくて、柔道教室で他の子に教えていることの方が多いです。
逆に、環境は恵まれすぎていると思います。見回せばメダルクラスの憧れの選手が身近にいっぱいいるし、お父さんにアドバイスをもらおうとしたらいつでもできるわけだし、それはプラスでもあるけど、マイナスでもある。2世でなく、地方から飛行機や電車を乗り継いで、初めて東京に来ました、「井上先生、サインください」「この技どうやってやるんですか?」という子と比べたら、「何が何でも」というハングリー精神が足りない、という点はあると思います。
長女が今年、全国大会まであと1勝というところでいけなくて、悔しかったみたいで、本気で「お父さん、教えてほしい」って本人が言ったんです。この時期になって、そういう親子の時間が増えてきたかなと思います。
いずれにしても、大変なのはこれから。「やめたくなったらいつでもやめていいよ」とは言ってるんですが、そのときに子どもが自分には何もないかも、と思ったときの挫折感がいちばん怖いなと思っていて。最低限の勉強はしなさい、と言っています。でも保険をかけちゃうのもまたダメなのかな、とも思うし……。
悩ましいですね。
柔道にはプロはなくて、ずっとアマチュアなんです。大学を卒業したら、その後は就職した企業でやらせてもらうということが多い。なので、夫も子どもたちに「勉強はしなさい」ってやっぱり言いますね。夫が金メダル獲ったのはもう25年前。その後も、こうして柔道に関わる仕事をさせていただけているのは、とてもありがたいことだと感じています。
柔道に限りませんが、選手生命って長い人生のほんの一瞬。早い人は20代で現役が終わるわけで、人生の中でスタート地点に戻るような時期がある。そのときにもバイタリティをもって、自分の人生を開拓できる人になってほしいなって思います。
夫婦は「形だけ一緒にいる」という選択肢はありません
◎夫への執着心はないけど、
離婚するつもりもない
夫と結婚して10年以上、子ども一人。気は合うのだと思います。ただ夫に対して嫉妬や執着心がまったくありません。もしも夫に恋人がいたら、むしろよかったね、と思うかもしれない。でも、夫が嫌いになったわけではありません。私自身、アプリなどに手を出してはいませんが、そういう展開を想像することはあります。でも、離婚するつもりはまったくありません。(35歳)
❝形だけでも一緒にいるという
選択肢は私にはありません❞
どこの夫婦も、多かれ少なかれ、そんなところはあるのでは。私の場合は経済的に自立できているというのがあるから、形だけでも一緒にいるということは、選ばないと思います。子どものために続けないと……という発想もしないかも。でも、なかなかそうはいかないのが現実なのもわかります。
子どもがいると、離婚できない?
イギリスにいたとき、仲良くしてくださった現地のご家族が4家族くらいいらしたんですが、4家族とも再婚カップルだったんですよ。みんなめっちゃ仲良くて、子どもたちも週末になると、前のパパのところに「行ってくるね」「チュッ」みたいな感じで、みんなハッピー。日本でも、そんな光景が当たり前になったら素敵なのに。経済的理由で我慢するしかないという状況を克服できる制度が整って、嫌いならもちろん、愛がないなら離婚できる選択肢が、女性にも男性にもあればと思います。
離婚もできる。
そう、一緒にいたいから一緒にいるだけ。将来、子どもたちにも、そうできる経済力を身につけてほしいなって思います。
Aki runs around!
Hawaii
今見返すと、夫なしでよく4人も連れて行ったなぁと自分でも思います。ハワイは小さな子連れで行きやすいし、パスポートをなくしたこともありますが、楽しい思い出ばかり。
いじめや受験失敗、怒涛の30代までを乗り越えた自分に感謝!
30代に感謝!
私は小学校でずっといじめられていたし、絶対合格と言われていた高校受験を失敗したし、一人暮らしをしていた頃、部屋に戻ったら外国人の強盗がいて死を意識したり、いろいろあったけれど、その壮絶ないじめの話を子どもたちにすると、最初彼らは絶句するのですが、それに比べたらたいていのことはたいしたことない、という話にできるし、受験を失敗してしぶしぶ入った高校の先輩に誘われたライブでスカウトされてこの世界にも入れたのだし、強盗にあっていつ死ぬかわからないし、起きてないことに不安になるよりも楽しんだほうがいいな、って思えるようになったし……。
自分のことを守れるのは自分しかいない、と私は感じているから、人にも社会にも期待しない。でも、自分さえしっかりしてれば、何が起きても大丈夫。そう思えるようになった、私の30代までに感謝しかありません!
❝人にも他人にも期待しない!
自分さえしっかりしていれば大丈夫!❞
Aki runs around!
profile
東原亜希さん
1982年、神奈川県生まれ。2003年、アサヒビールのキャンペーンガールに。2008年に柔道家 井上康生氏と結婚。翌年に夫とともにスコットランドのエディンバラに留学、現地で長女を出産。2010年に長男を出産、2015年7月に二女・三女となる双子を出産。4人の子育てをしながら、30歳で設立した「家族みんなで楽しめるライフスタイルを提案する」(株)Motherを回し、東京五輪で柔道史上最多のメダル獲得を男子監督として成し遂げた夫を裏から支えた。
イラスト/フクハラミワ
*VERY2024年2月号「東原亜希のドンマイ人生相談!」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。