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久保田智子さん(47)養子縁組した娘への「真実告知」を映画にした理由は?

元TBSアナウンサーで、現在は同局の報道記者として活躍する久保田智子さん。2019年に特別養子縁組制度で女の子を迎え、一児の母となりました。お子さんとの出会いから、自らの家族との関わりまでを描いたドキュメンタリー映画『私の家族』(3月15日公開)の公開を前に、ご家族に対する思いをお聞きしました。

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娘と過ごす笑顔の久保田智子さん

映画ではじめて明かした「家族への思い」とは

──今回の映画では、久保田さんの夫やお子さんとのお話のほか、ご両親などの家族についても隠すことなく公開していたことが印象的でした。

この映画ではじめて話したことはたくさんあります。映画を制作して、現在の私は親をはじめこれまで出会った人たちの存在が大きく影響しているんだということを改めて感じました。

子ども時代は、自分の置かれた環境に閉塞感を覚えることも多かったのですが、その後、英語を好きになり、高校時代にカリフォルニア州にホームステイをしたことが一つの転機になりました。ホームステイ先では、「トモはとってもGreatだよ!」と褒められることがたくさんありました。実家では私の挑戦を「そんなの無理よ」と否定されることが多かったのに。海外に行ってはじめて「あ、こういう価値観もあるんだ」と気づいたんです。自分の生まれ育った環境とは全く異なる文化に触れて得たものは多く、そういった機会に恵まれたことは運が良かったとも思います。

 

オーラルヒストリーで見えた、家族の本当の思いとは

──当時の経験は、現在の久保田さんのライフワークである「オーラルヒストリー」にもつながっているのでしょうか。

私がコロンビア大学で学んだ「オーラルヒストリー」は、丁寧に人の話を聞くことに重きを置く手法です。私は、これが家族のコミュニケーションにも有効だと思っています。

家族とのコミュニケーションは「忙しいから」「親しい仲なのに恥ずかしいから」と知らず知らずの間に後回しになってしまっていて、お互いの本心が伝わらないことも多いと思うんです。私自身も、家族ときちんと向き合えていなかったという後悔がありました。子どもに厳しく接していた父や何事にも慎重派の母とはなかなか本音で話す機会がないまま大人になってしまいました。
オーラルヒストリーでは、個人の経験、感情を相手に寄り添って聞きます。それはその人の今の考えや行動の背景につながっていきます。「オーラルヒストリー」の手法で聞くことによって、昔はわからなかった親の言葉の背景が見えてくるようになりました。「もっと前からこんなふうに話ができていたなら……」とも思いましたが、家族の思いを今さらながら知ることができてよかったと実感しています。

実家で母と。はじめて母の本音に触れた気がしました。(映画『私の家族』より)

 

──映画の中にも家族とのやりとりが収められていました。

聞かれる家族はかなり大変だったのではないかなと思います。事実を確認する質問は問うほうも答えるほうも簡単なのですが、「オーラルヒストリー」では相手の回答に対して、さらに「どうして?」「なぜそう思ったの?」と深掘りして聞くんです。聞かれた人がかなり深く考えないと答えられないので、少し面倒だと思われることもたくさんあったと思います。

しかし、そうやって聞くことで少しずつ相手の思いや考えを知ることができるんです。自分が相手に対して勝手に誤解していることも見えてきます。相手にとっても自分の気持ちと向き合う機会であり、なんとか言語化された思いは、表面的ではない「その人そのもの」に近づけると思うので、大変でも、一緒に深掘りすることは大事だと思っています。

 

──娘の「はなちゃん」とのコミュニケーションにおいても、そうしたことを意識されているのですか。

私自身がそうであったように、母である私が娘に与える影響は大きいと思います。だからこそ日常の中でお互いに誤解がないように、丁寧なやりとりを大事にしたいです。例えば特別養子縁組のことについて話すときも、子どもだからと勝手にこちらで判断しないで、娘の気持ちに寄り添いながら、できる限り言葉を尽くして、こちらの思いを、娘に伝えたいと思っています。

■PROFILE
久保田智子(くぼたともこ)さん
1977年広島県生まれ。大学卒業後、2000年にTBSに入社。アナウンサーとして活躍後、2017年TBSを退社、夫とともにNYへ。コロンビア大学にて修士号を取得。2020年に帰国し復職後は報道局デジタル編集部に所属。3月15日に監督を務めた初のドキュメンタリー映画『私の家族』公開。

 

 

■映画『私の家族』
2024年3月15日より東京、大阪、名古屋、京都、福岡、札幌の全国6都市で順次開催される「TBSドキュメンタリー映画祭2024」にて公開!

STORY
久保田智子は、子どもを授かることができず、2019年に特別養子縁組で新生児を家族に迎えた。
「ママとパパが大好き」。そう笑う2歳になった娘に、久保田は「もう一人、生みの母もいるんだよ」と話しかける。“真実告知”という、子どもに出自を伝える時期に入ったのだった。娘にちゃんと話したい。久保田はある後悔から、強くそう思っていた。家族の過去と向き合い、産んでも育てられなかった女性との交流を重ね、たどり着いた“真実”と伝え方とは……。

予告映像はこちらから→ TBSドキュメンタリー映画祭2024 映画『私の家族』

取材・文/正伯遥子 撮影/秋山博紀

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