推薦者・齋藤美和さん
『ことばの食卓』武田百合子

“めまぐるしい日々にふと立ち止まり、リセットできる本”
私の大切な一冊は『ことばの食卓』です。筆者が作家であり夫の武田泰淳氏と枇杷を食べた日のことやバーゲンついでに入ったオムレツ専門店での情景など、ごく何気ない日常を美しい言葉で綴ったエッセイ。
子どもを授かり親になる。いつの間にか息子が私を〝親〟にしてくれたように思います。目の前のことで心が揺れ、悩んだ時、美しい言葉の世界に入り込みたいと、この本を手に取りました。10年間子育てをしてきて思うのは、毎日が飛び上がるほど楽しいわけではなく、ままならないことのほうが多いということです。その、ままならない日々をどう愛していくかを考えた時に、この本にあるような、小さなしつらえやささやかな日常をいかに大事にできるかだと常々思い出します。立ち止まり、リセットするために、これからもそばに置いておく本です。
齋藤美和
町田 しぜんの国保育園園長。書籍や雑誌の編集、執筆の仕事を経て、2005年より「しぜんの国保育園」で働く。主に子育て支援を担当し、地域の親子のためのプログラムの企画運営などを経て、2018年より現職に。