推薦者・山川 咲さん
『おなかの中から始める子育て』池川 明 / 『スウィート・ヒアアフター』よしもとばなな
“自分の身に起きたことや目の前にあるものすべてを尊いと思うことができた”
会社のメンバーがくれた『おなかの中から始める子育て』を読んだ時、あまりに衝撃を受け、著者の池川明先生を訪ねて広島へ行きました。2度の流産を経験し3度目の子どもを授かっていた私は、自分に言い聞かせるように「今、赤ちゃんはお腹の中で喜んでいる。赤ちゃんは確かに私のことを好きな気がする」と伝えたら、「都合よく捉えていい」と力強く言ってくれ、とても救われました。それに通ずるこの本にも後押しされ、どんなに短い期間でも自分のお腹にいてくれたことが、子どもにとって幸せだったのだと思い直せたのです。子どもを産むまでのコミュニケーションや心配ごととのお付き合いを10カ月間じっくりできたことで、穏やかな気持ちで育児に入れたように思います。とはいえ、いざ始まると夢みたいに激しく、娘が泣きやまなければ胸が張り裂けそうな時もあります。
よしもとばななさんの小説『スウィート・ヒアアフター』は、〝私〞で生きてきた日々に戻れると同時に、目の前一瞬一瞬の甘さも苦しさも、今しかない尊い時間なのだと思わせてくれます。事故で恋人を亡くした主人公が、幸せな時間や消えない辛さを携えながら、その後の人生を生き続ける物語の中で新たな視点をくれました。〝娘が泣きやまない。でも、これだけ泣いているからこそ、一瞬笑ってくれることが愛おしい〞。日常の小さな粒を逃さずにすくえるような感覚をくれた、ばななさんの言葉に、私は力をもらいました。
山川 咲
クレイジーウェディング創業者。2012年、夫とともに㈱CRAZYを創業。現在は、CRAZY WEDDINGのブランドマネージャーとしてブランド全体を統括。今春「I WAI OMOTESANDO」をオープン。長女は2歳。
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私の「子育て本」 本好きママモデル・識者・経営者の選んだ一冊は?【後編】
撮影/西原秀岳〈TENT〉 取材・原文/藤井そのこ 編集/湯本紘子
*VERY2019年9月号「検索では見つからない答えがあるから 「母になる」私を助けてくれた一冊。」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。