数々のメディアでのスタイリングをはじめ、幅広いシーンで活躍を続ける人気スタイリスト・小山田早織さん。近著『稼働率100%クローゼットの作り方』が話題になっています。
「いちばん好きと思う服だけが並んだクローゼットにする」というこのメソッドを完成させるため、潔く手放した服は、なんと段ボール100箱分ほど。
そんな小山田さんがふるいにかけて選び抜き、手元に残した、名品中の名品とは! 審美眼を培うための、モノ選びのコツも伺いました。
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小山田さん的「買ってはいけない服」とは?
前回までの記事、そして書籍でご紹介している「稼働率100%クローゼット」。実はモノの選び方のメソッドでもあるんです。
いちばん「買ってはダメ!」と言いたくて、でも自分も含めてやってしまいがちなのが、“いちばん好きな物に似た、手頃なモノ”を手に入れること。たとえば一番欲しいニットがあるとして、でもそれはすごく高い。だから、もっと手頃な価格でそれに似た物を探して買う…という、よくあるパターン(笑)です。
なぜダメなのかというと、もうすでに自分のなかで明確な理想型があると、どこかでより理想に近い物が見つかったら、次はそっちに買い替えたくなってしまうから。結果、謎に似たようなニットが増えていく……。総額を計算したら理想のニットが買える額だった!なんて私もショックを受けたことが。
いちばん満たされる、いちばん好きなものを買うことが、結局いちばんコスパがいい
もう「理想の1着」が見つかっているのなら、できたらそれを手に入れてしまうのがベスト。そうするとその1着でしっかり満たされて、似たようなものが気にならなくなるし、そうやって手に入れたものは自ずと大切に大切に永く着れる。結果的に、いちばんコスパが良い方法だと思います。
【小山田さんが手元に残した名品】5選
似たアイテムは世の中に多くあれど、「これがいちばん!」という気持ちがゆるがない名品たち。どれもベーシックなデザインだけれど、隅々のディティールにまで惚れ込んだものばかり。書籍から一部抜粋してご紹介します。
① JOHN SMEDLEYのタートルニット
3年ほど前から愛用しているこのニット。身体のラインを拾いすぎないところ、そして何とも言えないチャコールグレー、すべてが絶妙なんです!
② STELLA McCARTNEYのニット
どんなボトムスとも相性が良く、着た時のシルエットも秀逸で。キレイめカジュアルに仕上げたい日には欠かせない存在となっています。いちばん欲しいデザインを手に入れたことで、似たようなものに目がいかなくなりました!
③ ATONのコート
「稼働率100%クローゼットが完成した!」と実感してから迎え入れた、思い入れのあるコート。帰ってきたらせっせとブラシをかけて、実際すごく大事に着ていますね。
④ Uniqlo Uのスカート
ファストブランドでも、唸るような名品はみつかります。ユニクロ ユーは一流ブランドのデザインがお手頃価格で楽しめるので、毎シーズン必ずチェックしています。
⑤ JILL SANDERのパックT
3枚セットになったパックTなので、それぞれがなかなかへたらないのも嬉しいポイント。インナーとして主役として、1年中大活躍してくれています。
1年中活躍する定番アイテムこそ、しっかり投資して!
ジルサンダーのTシャツは、ニットに重ねたり1枚で着たりと、2年前に買ってから今だに春夏秋冬で大活躍してくれています。Tシャツのようなスタンダードなものこそ、形とか素材感とかにこだわるべきだと思っていて。
雑に着倒すことを前提に安いTシャツを何枚も買うよりも、「大事に着たい」と思う1着の方が、いつでも美しい状態で着られますよね。そしてやっぱり、それがあれば他のものに目が向かない。もちろん、ハイブランドでしか名品がみつからないわけではありません! ユニクロユーのスカートは迷わず残した名品です。
名品アイテムでつくる、お手本コーデ
>>Coordinate 1
コート ATON/ニット STELLA McCARTNEY/Tシャツ JIL SANDER
裾からのぞかせたTシャツをアクセントにして、ニットの表情を変えています。エイトンのコートは絶妙な細身シルエットで、カジュアル寄りなアイテムたちも上品に仕上げてくれるんです。
>>Coordinate2
ニット JOHN SMEDLEY /スカート Uniqlo U
ニットとスカート、それぞれシルエットの美しさだけでもスタイリングの完成度をあげてくれる名品たち。アクセントにハットを投入しています。
大人に「稼働率100%クローゼット」が必要な理由
稼働率100%クローゼットとは、出番のないアイテムがない、精鋭アイテムだけが置かれているクローゼット。ずーっと変わらず居続けるアイテムもあれば、その時の気持ちや好みにあわせて更新するアイテムもあります。ふるいの基準は「今、“いちばん”大好き」であることです。
クローゼットに限らず、そうやって「今の私はこれが好き、大事」という気持ちをきちんと意識するようにしています。いちばん大事なものを手にしていれば、必要以上にあれこれ欲しいと思わなくなるんです。そう気づいてから、とても心地よく過ごせるようになりました。
クローゼットやおうちの中など物理的にモノがあふれているときだけでなく、頭の中が整理できず行き詰まっているときにも、ぜひ実践していただけたら嬉しいです。
PLOFILE
小山田早織さん
VERYをはじめ数々のメディアや広告、ショーのスタイリングを手掛ける人気スタイリスト。さらにはブランドディレクションやTV出演など、多岐にわたるシーンで活躍中。プライベートでは二児の母。
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小山田早織さんの新刊をチェック!
『“着ない服”がゼロになる! 稼働率100%クローゼットの作り方』講談社刊・小山田早織(著)
出番のない洋服がひとつもない”稼働率100パーセントのクローゼット”。そんな夢のようなクローゼットに小山田さんがたどり着いたのは、産後の落ち込みがきっかけでした。職業柄、大量の衣装持ちだった小山田さんが、出産を機に段ボール100箱分の服を処分。潔く取捨選択することで、最高に効率的なワードローブと幸福度の高い生活環境、自己肯定感まで手に入れられる、本書では、そのハウツーを丁寧に紹介しています。
取材・文/磯部薫