❝今もまだ、
どちらかを選べると言われたら
彼といる人生を選びたいです❞
彼は今もそばにいると思える瞬間
漫画の中では、旦那さんが天から見守っているようなエピソードもありましたね。
さっきまで土砂降りだったのに、彼の入るお墓の周辺だけ雨が急に上がって虹が出たり、偶然といえばそれまでだけれど、どうにも偶然とは思えない、もしかしたら「彼がそばにいるの?」と思うような不思議なことはたくさんあります。でもやっぱりなんの確証もないし、彼の姿が見えるわけではありません。それでも、彼は死んだけれど、考え方とか人の縁とかたくさんのものを残してくれました。それを私が受け取って、自分の人生を開いていくことがいつもそばにいるってことなんだろうと思います。
復職して、資格を取り、家を買い、ブログは書籍化……せせらぎさんは、旦那さんの死というつらい現実がきっかけとなり今までと全く違う人生を歩みはじめました。
今はまだ、どちらか選べると言われたら彼のいる人生を選びたいです。今持っているもの、考えて培ったもの、まわりにいてくれる人たち……。彼が死ぬことがなかったら得ることができなかったものばかりです。でも、それを全部捨てることになっても、戻れるものならあの頃に戻りたい。でもいくら願っても彼は戻ってこないから、だったら今の自分を、もう戻らなくてもこっちのほうがいいと思えるくらいに大きく成長させて、人生を自分の手で輝かせていくしかないですよね。
彼が死ぬ直前に大きな喧嘩をして、本当に腹が立って、なんなら離婚も頭をかすめたほどでした。でも、一緒にいられる時間がこんなに短いとわかっていたなら、好きという感情だけを大事にすればよかったです。一緒に暮らしているとどうしても、嫌なところや許せないところが見えてくるものだけれど、もったいないことをしたなと今は思います。彼が死んで、当たり前の代わり映えのしない毎日がいちばん大切で、それにかわるものなどないということに気づきました。私も子どもたちも、誰にとっても、今この人生がやり直しも再スタートもない最後の人生なんだと思って今を生きていきたいです。
昨日と同じような今日を繰り返し
当たり前のように年をとり
愛する子ども達を旦那と一緒に育てていく……
そんな日々がずっと続くものだと
何の疑いもなく思っていました
P.4〈大切だったもの〉より
笑って生きていくと決めた どんなに寂しくても
どんなに苦しくても どんなに大変でも
それは残された子ども達のため
死んでしまったまーくんのため
なによりまーくんと出会えた私のために
まーくんと出会えて幸せだったと言うために
P.163〈笑う日々〉より
『旦那が突然死にました。』
エムディエヌコーポレーション(1,540円)
今日、あなたの大切な人が死んだら? だれもが経験する「大切な人の死」と真正面から向き合った、泣けて笑えるコミックエッセイ。結婚4年目、愛する夫(まーくん)が突然死んだ。3歳と1歳の子どもを残して……。夫の突然すぎる死とその後の日々を綴った話題のブログの書籍化。
せせらぎ
33歳、結婚4年目で最愛の夫が突然死。残された子は当時、3歳と1歳の男の子。ほぼ無職の状態で思いがけずのシングルマザーに。気持ちの吐露として始めたブログ「きみといっしょに」は、その飾らなすぎる正直な人柄が支持を集め、人気ブログになる。思い通りにいかない人生と育児に一人向き合い生きている。現在はデザイナーとして勤務しながら、息子の発達障害について綴る続編ブログ「遺された子は発達障害児でした」などで発信中。
撮影/古本麻由未(せせらぎさん分) 取材・文/髙田翔子 編集/フォレスト・ガンプ Jr.
*VERY2021年9月号「『旦那が突然死にました。』著者・せせらぎさんインタビュー」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。