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【パラリンピック出場】全盲の陸上選手・高田千明さんを奮い立たせた家族の言葉

■ 息子のコトバ

「ママ、東京で絶対金メダル取って」

外でママとベッタリはちょっぴり恥ずかしい年頃に。でも私に腕を貸してくれることは彼にとって当たり前のこと。

走り幅跳びに転向後、
念願のリオ・パラに初出場

大森さんの下で厳しいトレーニングを積み、陸上100、200m走で、北京、ロンドンのパラリンピックを目指しましたが、国内トップクラスでも世界のレベルは高く、手が届きませんでした。

息子ももう4歳。両親に預けることも多く、「ママ、行かないでー」と泣かれることもしばしば。子育てしながらパラリンピックを目指すのは正直辛く、引退も考えました。でも夫は「自分がやり切ったと思えるかじゃないの?」と。さらに「確かにまた4年間苦しい思いをしてもパラに出られる保証はない。やっぱりやめておけばよかったと思うかもしれない。でも挑戦しないで、自分もここにいたかもしれないと後悔しても、アスリートとしての年齢、体力はもう戻ってこないんだよ。僕はやって後悔する方がいいと思う」と。競技者同士らしいコトバでした。 子どもを理由にやめるのはちょっと違う。私もそう思いました。

海外に行ける!くらいの気軽なノリで目指し始めたパラリンピックが、その頃には、私にとってもの凄く大きな存在となり、何がなんでも出場したい。その可能性をかけたのが、短距離走から、トップ選手の記録が拮抗する走り幅跳びへの種目変更でした。

しかし、私、視力を失う前に走り幅跳び自体を見たことがなく、元短距離選手の大森さんも、やったことも教えたこともない。無謀だと反対されて当然ですが、何度も説得して、ようやく本気が認められ、二人三脚の練習が始まりました。大森さんも相当研究してくれました。伴走者なし、一人でトップスピードで走るのも未知。踏み切りエリアもどこにあるかわからない。暗闇のなかに飛び出すのも恐怖。ひたすら、走って跳ぶことを確立した死に物狂いの4年間でした。その成果が出て、2016年リオへの切符を摑みました。決まったときは両親は電話で泣いていました。リオでは決勝に進出、日本新記録で8位入賞。

初めて出場したパラリンピック。満足よりも、湧き出てきたのは、もっとできる。あと50cm伸びれば金メダルだって夢じゃないんだ、という自信。

そこで、走り幅跳びの日本記録保持者、井村久美子さんにも指導を仰ぐことに。井村さんが私に最初に指示したのは、踏み切りで棒になり、空中で大きく手をかいて〝折り畳み携帯〞の姿勢になって、そのまま着地。目で見ればすぐわかるであろう体の使い方も、まるでパラパラ漫画の1コマ1コマを井村コーチの体を触らせてもらって、覚え込んで1つずつクリアしていくような地道な作業でした。ようやく一連のフォームができたら、またそれをより高度で緻密にブラッシュアップするような作業を、1年ごとに繰り返しました。そして昨秋のドバイ世界選手権。日本新記録で4位。いよいよ世界のメダルが見えてきました。

見たことがなかった走り幅跳び。“折り畳み携帯”の形と教えてもらいました。

■ 妹たちのコトバ

「お姉ちゃんは、有言実行の人」

 

京2020延期も
既に前を向いて再始動

出場内定をいただいていた東京パラの延期が決定。「仕方ない」という気持ちと、2020にすべての照準を合わせてきた分、心が砕け散る想いでしたが、内定も維持されることが決まり、11歳になった息子の「ママ、東京で絶対金メダル取って。ずっと応援しているから」というコトバに救われながら、今は、来年を目指せるようになってきました。

それぞれママになり、ますます仲の良さが増している2人の妹たちは、なかなか私を褒めてくれないのですが、「言ったこと叶えちゃうって、実はすごい人だ」と姉妹らしいコトバをくれ、私の競技生活を見守ってくれています。

夫も2021ブラジルデフリンピックでメダル獲得を目指していますが(※パラリンピックにろう者の競技はなく、デフリンピックという世界大会が4年に一度開催される)、奇しくも東京パラが同年開催の可能性が。息子に金メダルを先にかけてあげるのは私だ! いや俺だ! ライバルとして刺激し合っています(笑)。

[右]次女 晴美[左]三女 正代 それぞれ4人、3人の子どもがいるママ。

高田さんのHistory

1. 東京で3姉妹の長女として誕生。三女にも同じ目の障害があります。
2. コーチ大森盛一さんとの出会いが私の競技人生を変えました。大森さんはバルセロナ、アトランタ五輪に出場した元日本代表。
3. 夫・裕士とは約2年の交際を経て2008年結婚。
4. 長男を出産。両家の親たちに大反対されるものの、初孫を抱いた途端に皆メロメロ。
5. リオのパラリンピックに初出場。夫と息子も現地応援に駆け付けてくれる予定が、悪天候と機材トラブルのダブルアクシデントで、なんと私の競技に間に合わず……。
6. 最近は講演に呼んでいただく機会も。これは三重県の小中学校を訪れたときに、生徒さんからいただいた千羽鶴。

 

撮影/吉澤健太  ヘア・メーク/サユリ〈nude.〉  取材・文/嶺村真由子  編集/磯野文子

※掲載中の情報は2020年VERY6・7月合併号「連載・家族のコトバ」誌面掲載時点のものです。

 

■高田千明選手の出場種目スケジュール■

「陸上 女子走幅跳 T11」
2021年8月27日(金) 9:30 – 12:50

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