VERY October 2021
VERY NAVY

VERY

October 2021

2021年9月7日発売

890円(税込)

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コウケンテツさん「ママはおうちご飯のハードルを下げるべき」

まだ思い切り外で遊べない状況が続く今、引き続き「3食ご飯の準備」はママたちの大きな課題。毎日のおうちご飯に追い詰められるママたちのしんどさに寄り添ったエッセイが話題の料理研究家コウケンテツさんのお話は、肩の力が自然と抜けるヒントに溢れていました。

毎日〝あたりまえ〟に
ご飯を作るのは、僕もしんどい!

「毎日ごはんを作るのがしんどい」。講演会やインスタグラムの投稿で、周りのママたちからも、最近そんな声をよく耳にします。そう、毎日家族のためにご飯を作り続けるって実はすごく大変でしんどいこと。料理研究家として働く僕だって作りたくない日があります。「楽しいこと」であったはずの料理が、子どもが生まれて、ご飯作りが毎日のルーティンとなると仕事や趣味の料理とはやっぱり違う。世の中のママたちと一緒で、ご飯を作るのがしんどい日が増えていきました。

コロナ禍で、外で食べる機会もままならない今は特に日々のご飯作りが一層ストレスになりがちですよね。おいしさはもちろん、栄養バランスや彩り、いろんなことに心を配って一生懸命作っても、家のご飯は「あたりまえ」。さっさと食べ終わるとソファでスマホを見ていたり、ゴロゴロしたり、それぞれが自分のしたいことを自由にしている。そして目の前のシンクには溜まった食器の山……。「ただ食べるだけ」の家族からは感謝の気持ちなんてちっとも感じられないというママも多いのでは?

夫婦で家事育児すべてをシェアしている我が家では、僕が料理を作った日はパートナーが食器洗いを担当。それだけで気持ちがぐっとラクになります。でも多くの家では、おもにママが料理から片付けまでをすべて担当。それって大変すぎる……! ご飯にまつわる何もかもを一手に引き受けているママたちが、ご飯作りをしんどいと思うことは、「あたりまえ」なんです。

 

理想の食卓に縛られず、
「ねばならない」からもっと自由に!

以前、テレビの仕事で海外のいろんな国にホームステイをする機会がありました。世界に目を向けたら、いろんな家庭の事情があって、食卓のあり方もそれぞれ。アジアはママも家計を担う国が多く、夫婦で協力態勢を取らないと家庭も地域も回らない。だから、実はパパも家のことをすごくやる。家のことは何もしないと聞いていたギリシャも、実際に行ってみたらDIYから家庭菜園までとにかく積極的にパパがやっていて驚きました。料理ができないパパでも会社から帰ったら速攻エプロンをつけて食器を洗ったりするんです。料理に限らず、食卓に関わることはいっぱいある。後片付けを担当してくれるだけで負担は軽くなりますよね。

僕が料理家になって子育てをする中でふと感じた疑問、それは、そもそも家事って訓練したわけでもないのに〝ママである〟〝女性である〟というだけで家事全般をやらないといけない圧力があること。それも結構な高いレベルでできて当然というのはあまりにも無理な要求なのではないかと思います。

あと、世界を回り、実際にそれぞれの国で一般のご家庭を訪問してみて気づいたのは、日本の家庭料理のレベルの高さ。テーブルには日替わりで和食・洋食・中華の献立が並び、品数も豊富! そんな国なかなかありません。仕事に家事に育児にヘトヘトなのに、ママたちはそれでもスーパーハイスペックな家庭料理を毎日頑張って作っているんです。日本のママたちは本当に真面目、でもそれ故に「理想の食卓」に縛られている人も多いんじゃないでしょうか。

僕自身もそうでした。家族みんなで食卓を囲んで「いただきます!」をし、全員揃ってゆっくり食べる夕飯の時間が一番好きだったし、そうしなきゃいけないと思い込んでいました。でも、子どもの成長によってライフスタイルも変わってきます。長男の塾通いが始まって全員で同じタイミングで「いただきます!」ができなくなり、だんだんとそれがストレスに。ご飯を作りながらイライラしていることが増えてきました。

でも、ある時家族にそれを指摘され、ハッとしました。生活スタイルの変化によって食卓も変化するのは自然なことなのに、「ねばならない」という理想と義務感に自分ががんじがらめになっていたことに気づいたんです。この、「ねばならない」という思い込みが日々のご飯作りをしんどいものにしている元凶だと思う!

手作りでなければならない、インスタントに頼ってはいけない、野菜もしっかり食べさせなければならない、3食バランスよく食べなければならない……、「理想」に縛られると無数の「ねばならない」にどんどん追い詰められてしまう。だから、ご飯作りがしんどい人たちは、まず、「ねばならない」から解放されてほしいと思います。

 

パリの女性の
「家で料理ばかり作っていたら、
私のサンシャインが輝かないじゃない」

という一言は強烈に残っています

ママは戦略的に、おうちご飯の
ハードルを下げるべき

そもそも3食きっちり食べなくても大丈夫。ゆっくり起きた休日は朝昼兼用にしたっていいし、公園でおにぎりを食べるだけでもいい。最近、長男は朝ごはんに大好きなお餅をトースターで焼いて海苔と醤油でおいしそうに食べています。ママがみんなの好みを汲み取って朝ご飯を用意しなくても、それぞれが食べたいものを自分でさっと作って食べるのも◎。日本のママたちは、もっと自分本位に生きていいと思うんです。

以前取材したフランスでは、平日はご飯を作らないと宣言している家も多く、パリの女性の「家で料理ばかり作っていたら、私のサンシャインが輝かないじゃない」という一言は今でも僕の胸に強烈に残っています。私が輝いてこそ家族が輝く、「家族や社会が幸せになるには、まず自分自身が幸せにならないと」という考え方だから、毎日のご飯作りも決して無理しない。ご飯作りや家事が、自己犠牲の上に成り立っている日本のママこそこの言葉を胸に留めてほしい。自分の理想のご飯が作れなくたって、罪悪感なんて感じる必要はないんです。外食したっていいし、レトルトや買ってきたお惣菜に頼ってもいい! それらもテーブルに出したら〝ちゃんとしたご飯〟です。まず自分の気持ちがあって、その次に家族、理想のご飯は余裕のあるときだけでOKだと思います。

今となっては笑い話だけど、昔スープから手作りのラーメンにハマっていた時期がありました。子どもたちは「おいしいー!」と大絶賛。でもものすごく手間暇のかかる渾身のラーメンはそんなに頻繁には振る舞えない。だから、ちょっと手抜きしてある日スーパーで購入した生麺とスープがセットのラーメンを購入して出したんです。そしたら「今までのラーメンで一番おいしいー!」というズッコケる感想(笑)。こちらの手作りラーメンにかける熱い想いや罪悪感とは裏腹に、そんなもんです。自分の理想が家族のベストというわけでもないんですよね。

頑張っているママがしんどさから解放されるために、もういっそ、「市販品も食卓に並ぶと手料理とすべし」「料理しない者は洗いものを担当すべし」みたいな、条文を作ってほしいくらい(笑)! 普段のレベルを高く設定しちゃうとはっきり言って家族は図に乗ります(笑)。デンマークに行った時の話。ホームステイ先のパパが宅配ピザを頼んでくれたんだけど、食卓に運んだら子どもが「パパが作ってくれたピザ!」と嬉しそう。このハードルの低さを見習いたい! 最初の設定をうんと下げておくのって大事だと実感した、まさに目から鱗の体験でした。おうちご飯のレベルはあくまで低めに設定することで、何もせずに毎日3食手料理が出てくることをあたりまえにしない! そんなアプローチの仕方もあるんじゃないかな、と思います。

ママはもっと自分のハードルを下げてあげて自分を労ってほしいし、日々のご飯をラクして楽しんでほしい。そして家族には、料理をママ一人に背負い込ませるのではなく、〝ご飯を取り巻く環境は家族で作るもの〟ということを分かってほしい。そうすることで、家族みんながハッピーなご飯へと繋がっていくと思います。

仕事、趣味、家事と日々料理に向き合ってきたコウケンテツさんが、「おうちご飯」を作る人の〝しんどい〟に寄り添った書き下ろしエッセイ。毎日のご飯作りのストレスやプレッシャーをラクにしてくれるママに優しい1冊。『本当はごはんを作るのが好きなのに、しんどくなった人たちへ』¥1,540(ぴあ)

 

Profile

コウケンテツさん

料理研究家。手軽でおいしい家庭料理を提案、テレビや雑誌、講演会など多方面で活躍中。30カ国以上を旅し、世界の家庭料理を学んだ経験も持つ。3児の父であり、育児にも日々奮闘。親子の食育、男性の家事・育児参加、食を通して人と人とのコミュニケーションを広げる活動に力を入れている。昨年開設したYouTube「Koh Kentetsu Kitchen」も大人気。

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撮影/前 康輔 取材・文/北山えいみ 編集/羽城麻子
*VERY2021年7月号「「僕も、毎日ご飯作るのしんどいよ」って声に出して伝えたい!」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。

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